どうも。
私、A子。都内でまじめに働くOLです。29歳です。
ちなみに独身です。
恋人いない率は高いが、だからといってがっつきたくない女子が多い。
え、仕事ですか?
仕事は営業事務です。それなりにやりがいも感じています。でもボーナスはもっと欲しいですね。みんなはボーナスどれくらいもらっているのか、ぶっちゃけ気になります。
まあ、そんなこと聞きませんけどね。はしたないので。大人なんで。
ただ、スマホで『29歳 女 ボーナス平均』で調べまくっていますけど。
他人の給与やボーナスが気になる女子が多い。
しかし、人には直接聞けないのでスマホで調べる。調べるのは平均。平均より自分が上か下かが気になる。
ものすごくもらいたいわけじゃない。平均より少し上くらいにいたい。
私は、仕事をしながら、昨夜の母からの電話を思い出していた。
母とは友達のように仲がいい。母との電話はいいリフレッシュになるのだ。
ただ、母がなにげなく言った言葉が衝撃的だった……。
お母さん最近よく神社に行ってるの」
「お母さん……。そんなことしなくていいよ。私、一生独りでもお母さんに心配かけないようにちゃんと節約してるし、同年代の子と比べたら貯蓄だってしてるし(※29歳 女 貯蓄平均 の検索によるA子独自調べ)」
母は、まずいと思ったのか、あからさまに「最近、ドラマなに見てる?」という話題に変えた。
分かっている。
お金やいい人どうこうじゃなくて、母は私にもっと人生を楽しんでほしいのだろう。
貯蓄はある。ちゃんと節約もしてる。父と母にちょっとした旅行をプレゼントするくらいの経済的余裕だってある。
でも私は、母に神社でお祈りさせている。
晩婚化が進み、一生おひとり様でいるという新しい価値観もある。
独りで生きていけるよう必死にお金の心配をしている女子も少なくない。しかしその方法は節約してひたすら貯金! になりがち……。
「センパイ、今日ランチいきません?」
声をかけてきたのは、春から同じ部署に異動してきたB美。25歳。
B美は、かわいい。男女ともに好かれる“程よさ”も良い。
私もB美は嫌いじゃない。というか、そこまでこの子を知らない。
でもこの子を見て思うことは
ということ。
キラキラしてる女子、一歩前を行く女子は憧れ。だけどキラキラがまぶしくて自分より何か劣っている部分があってほしい、というのが本音。
もちろん態度には出さない、だって私、大人だし。
「いいよ、行こう。ランチ」
そう言いながら、私はすばやく頭の中でランチ代の上限額を設定した。
私達は、B美のオススメという老舗っぽい和食屋に来た。
日替わり定食、880円か。
高くもなく安くもない値段設定。
メニューにすばやく目を配らせて、発見。
親子丼、690円。
よし、ランチ代上限額の700円をぎりぎりクリアするメニューが見つかった。
安心する私をよそに、B美は手馴れた様子で店員さんを呼ぶ。
「私、『春らんまん! レディースセット』にします。センパイは?」
「……私は、親子丼をお願いします」
しかも1200円もするじゃん。メニュー名に“!”がついてる意味も分からない。
何が出てくるか分からないメニューに1200円出すB美。
もしやこの子……
しばらくして注文したランチが届いた。
もちろん私は親子丼。ふっつーのやつ。
B美が注文したメニューの正体は、かわいらしい手まり寿司に茶碗蒸し、食べ応えのありそうな天ぷらと茶そば、極めつけは、はまぐりのお吸い物。
それをうれしそうに写真に収める金銭感覚バブリー女……いや、ちがう、B美。
そんなB美を見ていると、謎の使命感が私を襲ってきた。
「そういえば、B美ちゃんっていつもきれいにネイルしてるよね。それ、お店でやってもらってるんでしょ?」
嫌味にならないように伝えなくては。この子のため。
「そうなんです! ほら、私たちって毎日パソコン仕事じゃないですか。だからネイルをキレイにしておくとキーボード叩くときにモチベーションあがりますよ。センパイ、やってないんですか? おすすめですよ!」
「へぇ、そういうものなんだぁ。私はお金かかりそうだから、したことないな。余計なことかもしれないけど、B美ちゃんってけっこう、あの、なんていうか、金銭感覚ゆるめ?」
「そんなことないですよ。ネイルは月1回だけの楽しみなんです」
月イチかよ!!!!! 私なんて美容院も半年に1回だぞ!!
朝ドラが終わりに近づくとそろそろって気付くぞ!
「そっか、そっか。それで仕事ががんばれるなら、いいことだよね。ほかにも趣味あるの?」
「月に2回のお料理教室です〜」
でたよ、キラキラ女子 伝家の宝刀お料理教室。そこで習った料理を頻繁に作ってる人って見たことない。
1回だけ自慢げに披露して終わるやつだろ? ローリエ使うやつだろ?
「お料理教室!? すごっ。でも、月謝ってやっぱり高いんじゃない?」
思わず声がうわずった。だめ、私としたことが。
私は大人。私は大人……。
「月謝は6000円ですよ」
普通に高いって。
「えー、結構するね。その上、月1でネイルもして、今日もランチ豪華だし、お金は大丈夫なの? ちゃんと貯金してる!?」
お姉ちゃんは心配だよっ!!!!! バブルは崩壊しているんだよ!!!
「ええ、人並みにはしてますよ。今日のランチは、少しだけ贅沢をしていいって決めていただけですから。それに普段はお弁当が多いので」
「お弁当!?」
「はい! 月6000円もかけてお料理教室行ってるんだから、活かさないとバカじゃないですか? 私の通ってる教室は冷蔵庫にあるもので作れる料理っていうコンセプトなんですよ。だから気も楽だし、お料理教室にありがちな、変な葉っぱみたいなやつ? あんなの使わないですし。あとここだけの話、男の人って冷蔵庫の中にあるもので作れる料理が好きらしいです。ネットで読みました」
か、か、か、かわいい……。そして意外と堅実。
ちょっとモテたい女の子のズルい部分も隠さない。
正直で信用できるかわいい後輩……。
最近の女子の習い事はテーマが細分化されているものも多い。お料理教室ひとつをとっても、自分の好みでアジアン・イタリアンなどはもちろんのこと、お母さんの普通の食卓をテーマにしたような明日から使える習い事が注目されている。
B美のお母さんは、きっとこの子の幸せを神社でお祈りなんてしていないだろうな。
ちょっと悲しくなってきた。
「センパイ、私思うんですけど、自分で使っていい範囲を決めていたらお金ってもっと自由に楽しめるんですよ! こう見えて私、家計簿アプリつけてるんです。めっちゃいいですよ! あとでLINEで送りますね」
「あ、ありがとう……」
私は同世代の女子よりもお金のことを気にしているつもりだった。
だけど、よくよく考えてみれば毎日のようにコンビニに寄ってしまうし、値引き品とかちょこちょこ買っちゃったりして、めんどくさくなって家計簿もつけないし。
そのくせ、B美のようにこれといった趣味もないや……。
「あ、ちなみにコンビ二にはよほどのことがないかぎり行きませんよ」
「なんとなく貯蓄女子」は、自分がそうだとなかなか気付けないのが難しいところ…。
でも、このチェックリストを見たらさすがに自覚するかも!? 心当たりがあった人は、脱却のチャンス!家計のプロ直伝の「レシート管理法」をチェックするべし。