家計再生コンサルタントの横山光昭の資産形成のコツは「生きたお金の使い方をする」こと

FROGGY LIVE – あなたのお金をカエル授業 –/ 横山 光昭

家計再生コンサルタント、ファイナンシャルプランナー(FP)の横山光昭です。私のことを著書『貯金生活宣言』『3000円投資生活』などでご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、メインの仕事としては、マイエフピーという会社をやっていて、家計の個別相談やコンサルティングをやっています。その傍らで、書籍や雑誌、新聞などに執筆しています。私はとにかく現場屋なので、家計を見ている現場から皆さまに「こういう人は貯まる。貯まらない」といった点をフィードバックさせていただきたいです。

では、早速中身に入ります。まず、家計の現場で気になることは、2つ。数字を気にしすぎているのではないかと。つまり、知識ばかりが先行しちゃっているんですよね。これは、老後にいくら必要とか、教育費にどれだけかかるなど、私もFPとして責任を感じますが、安全圏でものを言いすぎている。それで、一般の人は大金が必要と感じてしまう。

あと、将来を見すぎて、今を見ることを忘れているように感じます。例えば、教育費にいくらぐらいかかるか……知ってて悪いことではありません。しかし、知識ばかりになりすぎているのが気になります。大切なのは、自分の場合はどれくらい必要なのかなと考えることなのです。

たとえば老後資金に3000万円必要だと、よく言われます。これは総務省のデータが元になっていて、毎月27万円ぐらいの支出があり、それに対して年金含め21万円もらえますよと。だから6万円足りない。で、6万円足りない状態で、25年間生きると1800万円が足りなくなる。そのほかにリフォーム、介護、病気……など考慮して、1000万円ぐらい上乗せして、老後に足りないのは2800万円、いや3000万円だ! というデータは、作ろうと思えば作れるんですね。

ただ大事なのが、ご自身にとって本当にそんなに必要なのかと。自分の収入と支出。老後の収入というと年金が主になると思いますが。年金がどれくらいもらえるかという点も分かっていないと、結局どれくらい老後資金が必要なのか分かりません。

つまり、今の自分のお金まわりを見据えていく。そこが大事なんじゃないかなと。しかし、どうしても、一般的な数字、データが気になりますよね。でも、それはひとつの参考データとして捉えましょう。大切なのは「自分の場合はこれくらいが必要なんだよ」というところを知っていただきたいです。

今の自分のお金のまわりを見据えられるようになることによって、お金の置き場がハッキリしてきます。「使う、貯める、増やす」としていますが、増やすお金をどういうふうに置いていくのか、きちんと考えていただきたいです。

現場を見ていて感じているのが、今の家計を把握することの重要性です。お金を貯められる人は、ちゃんと現在の自分の状況を知っていて、かつ将来の状況も考えながらやっています。しかもバランスがすごいいい。
貯められない人に多いのが、今を見ずに将来だけを見て、希望的観測で「たぶんこれでいけるだろう」としがち。でも、今の先に将来があるのですから、将来の話をする前に立ち戻って、家計に目を向けていただきたいです。

「よし分かった」「じゃあ、家計がんばるわ」と思い立ったときに、節約や、やりくりすればいいのかというと、それでは世知辛かったりネガティブな気持ちになりかねない。

じゃあ、どうしたら今の生活を見据えられて、質も上げられるのか。お金の使い方に、自分なりの価値観を持つことというのが大事だと思うんです。自分なりの価値観を持つこと。だから人と違っていいんです。

聞いたことがあるかもしれませんが、お金の使い方を「金額」ではなく、「使い道」で考えてほしいです。消費なのか浪費なのか投資なのかと。投資といっても、株や投資信託じゃなくてもオッケーです。

説明しますと、消費とは「生活するのに必要なもの」。購入だとか使用料、支払全般のことを言います。たとえば、家賃や食費、通信費、光熱費などです。浪費は、言葉のとおり「無駄遣い」ですね。ただ今を楽しむためのものを言います。たとえば、過度な嗜好品……タバコ、酒などです。もしかすると時間外手数料も含まれるかもしれません。最後の投資は「将来につながる生産性のある使い方」です。先ほど申しあげたように、金融的な投資という意味合いよりも、習い事や書籍代、貯蓄なども入ります。

私は親から、お金的な部分の教育はまったく受けませんでしたが、「お金の生きた使い方をしろ」とだけは母親から言われてきました。でも実はその意味が分かっていませんでした。しかし今考えると、この教えが「金額ではなく価値でお金を見る」につながっている。
私たちの目の前にある商品やサービスには、全部価格が書いていますよね。だから、高い/安いと判断してしまう。その一方で「高くたって、やってみたい」「安くてもすごい価値のあるもの」もある。生き金にするためには、ちゃんと自分の価値で決めろということはよく言われます。貯められる方には「価値でしっかりと見る」意識がすごく強いと思います。

ここで、実際にイメージトレーニングしてみましょう。
「ずっと欲しかったブーツが30%OFFで買える」
どうでしょうか? ずっと欲しかったものが安くなった。ご自身の価値で消費なのか投資なのか決めてください。正解はありません。でも、だいたい「投資」と答える方が多いですね。その人の定義によりますが。ただ、このケースは私からすればいい買い物というか安く買えたというだけであって、投資ではないかなという気もします。

では「買ったけれど、読んでいない本」はいかがでしょうか? これから読めば投資、というのもひとつの考え方ですね、判断は人によります。

続いて「壊れていないけれど、最新家電に買い替える」はいかがでしょうか。壊れていないのに買い替えるなんて浪費だ! と思う方もいるでしょう。でも時間が短縮されたり、節電になったりと、色々メリットがありますよね。ここも価値観が出るところです。

最後に「父の誕生日に行った高級寿司店」はいかがでしょうか。浪費? 投資? 消費?  何が言いたかったかというと、答えは人それぞれ違うということ。私と価値観が合えば正解ということではありません。自分にとってどうなのかを考えるのが大切です。

お金の遣い方って、結局自分で納得しないことには続かないんです。たとえば、口悪いですけど、きれいな洋服とか美容費とか(女性に恨みはないですよ)を「投資です」という相談者に対して、僕が「それは浪費なんじゃないですか?」と言ったとしましょう。
相手はその場では「はい」とおっしゃるかもしれません、でも、全然相手の心には響かないものです。
そう考えると、「これは投資と言ったけれど、実際は投資じゃないかもしれない。消費かもしれない。いや、浪費かもしれない」というふうに、自分で消化していかないかぎりは、変わらないと。自分を変えるのは自分だけなんです。

以上を踏まえて、やっていただきたいものがひとつあります。「needs or wants」と言ったりもしますが、「本当にそれが必要だったのか? それとも欲しかったのか?」と自問しながら消費を考えるということ。あとは好き嫌いだけで分けちゃうというのも、ひとつのやりかたかもしれないですよね。皆さまの消費、使っているお金を違う尺度で、違うモノサシで見ていただきたいという思いがございましたので、このお話をさせていただきました。

ちなみに、この画像は我が家のものです。後ろにマグネットが付いているプラスチックのカゴに「消費、浪費、投資」って書いて貼って、冷蔵庫にセットしています。で、家族が使ったお金のレシートを入れていく。それぞれがレシートごとに、浪費なのかな。投資なのかな。消費なのかなと、考えて分けています。レシートがなかったら、メモ紙を入れます。その上で我が家では、月に1回、恒例でマネー家族会議と称しまして、お金の話をします。

話す内容は、毎月の収入について報告。「収入、これくらいだったよ。支出、これくらいだよ。それによって、貯金、これくらいできるよ。で、あと欲しいものは?」って話をするんですね。妻と6人の子どもたちと、8人で。
金銭教育というほどおこがましいものじゃないですが、子どもとお金を通してコミュニケーションを取ると。自分の得意分野でもありますし。でもお金の話をするけれど、結局お金の話だけではなく、困っていることとか、こういう風に思ったよとか、そういったこととかも出るので、すごくいいコミュニケーションだと思っています。

この冷蔵庫にカゴをセットしてレシートを「消費、浪費、投資」に分けて、毎月の振り返りができていれば、家計簿をつけなくてもいいんですよね。

余談になりますが、我が家では、今の世の中便利すぎるので子どもにあえて不自由させるためにも、お小遣いを米ドルで渡すことにしています。で、ある時、小3の娘が学校帰りにおやつを買いに行こうとしたときに財布に米ドルしか入っていなくて。困っていたら近所の知り合いの方が「日本円に換えてあげるよ」と。娘が「いま1ドルいくら?」と聞くと、おじさんが「103円」と。それを聞いた娘は「じゃあ今日はいいわ」って。周りから見るとちょっと変わってる家族に見えるかもしれませんね。

うちのお客様のデータ1500人ぐらいをデータ化したものなんですけれども、貯められる人には、理想の割合があるんです。年収800万円以下で、消費が70%、浪費は5%。で、投資がなんと25%。具体的に考えると、たとえば1ヵ月に30万円支出がある人の場合、消費ボックスの中が24万円だとします。すると「24万円÷30万円=0.8」で100掛けて80%だとわかります。1ヵ月に1回の集計で、自分のお金の使い方が見えるので、やってみてほしいと思います。

自分なりの価値観が持てると無駄が減ります。「消費、浪費、投資」がきちんとできあがってくると、家計には、まだ無駄が眠っていることに気づけます。

よく「投資をするお金がない」なんていうことも言っちゃうんですけれども、投資ってあまり重く考えなくてもいいと思います。

貯められる人の理想の割合で投資が25%と言いましたが、25%全部金融投資をしましょうという話ではなくて、私は2つに分けて考えてほしいです。25%のうちの10%は、習い事をしたり、本を読む、セミナーに行くなど将来の自分にリターンになるように使っていただくなど、ご自身で考えて自己投資してほしい。残りの15%は、将来に残していくお金。

貯金って、貯蓄ですよね。貯蓄をしていくのか、それとも投資をしていくのかといったときに、基本は貯金ができてから投資をしていただきたい。ただ、並走もいいんじゃないかなと思います。そこそこ貯金はないとダメだと思います。そこそこって、抽象的な言い方をするといけないので、まあ、最低限でも半年分の生活費。毎月30万円必要だったら、180万円を最低でも持っていただく。
それ以降は当然、投資のほうがいいんですが、並走させてもいいんじゃないかなと。なぜかと言うと、早く始めることによって、複利の効果で時間を味方にすることができます。

また余談となりますが、我が家では子どもたちに資産を残さない方針です。でも、調べる力やお金を殖やす力は身に付けさせたい。時間を味方にすることができるということは、子どもたちにとって有利です。複利の神様を味方にして、うまくやってほしいなと。

投資を始める基本的な考えとしては、貯金ができてから投資するという形でもいいんですけど、時間を味方につけて、長期運用で複利効果を得られるように。また投資信託で分散投資し、リスクを軽減させることもできると。まとまったお金がなくても少額で積立投資信託をやってみてはどうでしょうかと。ちょっと乱暴な言い方かもしれませんが、やってみないことには分からないです。

『3000円投資生活』ではありませんが、3000円でも侮ってはいけません。実際に投資をやってみることによって家計が変わっていきます。男性に多いのですが、投資となると家計にまで目を向けて話をしはじめることもありますが、まずは「やってみる」というところをスタートしていただきたい。

分かるところからだけやっていただいて、学んで、分かってお金の価値が見えて、無駄な支出が減ると。で、強い投資ができるということにもなりますので。理解できないことはやる必要ありません。自分が分かっているところだけ、理解しているところだけ、そこだけで始めてみると。

最後に、「投資」としてやっていても、じつは消費や浪費になってしまう部分があると思うんです。投資する理由が「なんとなくいいと言われてるから」ではダメです。それでは消費、浪費ではないでしょうか。投資は、自分の将来のためのもの。自分はこうやってみたいだとか、応援していきたいとか、自分の思いがやっぱり入っているんですね。それが入った上で、本当の投資なのではないかと思います。

ぜひ皆さま方、少額からでもまずは始めてみてください。原則さえ分かれば、投資の方法はいろいろあります。確定拠出年金、今度NISAでも積立型が出てきますし、今もお話しした投資信託の積み立て、あとは上場投資信託のETFなどいろいろありますので、やっていただきたいなと思っています。