前回、ウィリアム・オニールの大化け株選びの条件を紹介しましたが、そのポイントは次の6つに集約できます。
②経常利益の成長ペースが過去3年間25%以上で
③直近の四半期では前年比40%以上に加速し
④時価総額が500億円以下の小型株で
⑤株価は市場全体の中で際立って強く
⑥上場来高値近辺(あるいは年初来高値、昨年来高値)にある
今回はこのオニールの条件で日本株をピックアップして紹介したいと思います。
ただし、これらの条件を完璧に満たすのはかなり厳しいので、「これらの条件をほぼ満たす銘柄」、つまり、オニールの条件に準じる株ということで選んでみました。
ウィリアム・オニール編①「急成長大化け株を捉えるための『CAN-SLIM法』」を読む
太陽工機(証券コード:6164)
「 太陽工機 」は立形研削盤のパイオニアでトップ企業。従来の主流は製品を横向きに回して研削する機械ですが、同社が開発した縦向きに回して研削する機械を使えば高い精度と作業効率が実現できるということで、ここにきて急速に普及が進んできています。同製品で同社はパイオニアであり、圧倒的な技術の蓄積を持っています。
業績は2017年12月期までの3年間は平均年率約10%の経常増益ペースであり、オニールの条件からみると少し物足りません。しかし、2018年12月期の第1四半期は、前年同期比158%と一気に加速して、とても強い業績のモメンタム(勢い)を発揮し始めました。
時価総額はまだ100億円程度と小さい上に、株価の動きは際立って強く上場来高値を更新中であり、オニールの条件に照らせば大きく化ける潜在性を秘めているのではないかと考えられます。
手間いらず(証券コード:2477)
宿泊業者向けに業務システム「手間いらず.NET」を提供しているのが「 手間いらず 」。①複数の予約サイトを簡単な操作で一括管理できて、②自動かつスピーディな更新でオーバーブッキングを回避できる。さらに、③インターネット接続さえできれば面倒な設定など行わずどこからでも簡単に操作できる、という点が受けて急成長しています。国内外の有力な予約サイトと連携していて、日本を訪問予定の海外在住者からも予約を受け付けることができるので、インバウンド需要の取り込みも可能になります。同社は契約事業者から出来高払いで報酬を受け取るので、インバウンドなどによる利用者増加が業績拡大につながっています。
業績は2014年6月期までは低迷していましたが、2015年6月期以降急拡大してきています。2017年6月期は15%経常増益でしたが、2018年6月期第3四半期は47%経常増益と成長が加速してきています。時価総額はまだ190億円程度と成長余地の大きさが感じられる水準です。
ブレインパッド(証券コード:3655)
ビッグデータの解析事業を手掛けて成長を続けている「
ブレインパッド
」。70名以上という業界随一の人数のデータサイエンティストと、創業以来14年以上取り組んできたAIの研究蓄積が同社の強みです。
現在データサイエンティストへの需要が急増していて、その人材を豊富に抱え、さらに育成プログラムを持つ同社の価値が高まっているといえます。AI関連についてもすでに多数のクライアントを抱えて業務実績を重ねています。
先行投資を行ってきたことにより経常利益はきれいな増加トレンドを描いていません。その点はオニールの条件から見るとやや不満です。しかし、売上高は12年連続増加と安定成長を続けていますし、2018年6月期は290%増益の見通し(会社予想)となっています。過去最高経常益と比べても2.4倍(連結ベース)と一気に増益ペースが加速してきています。
時価総額は約226億円と成長余地の大きさも感じられますし、オニールの条件を概ね満たしているのではないかと思われます。
ダブルスタンダード(証券コード:3925)
ビックデータ事業で急成長中なのが「
ダブルスタンダード
」です。他のデータ解析業者はSNSや購入履歴など与えられたデータを解析するのが普通ですが、同社の場合はデータを収集して結合するなどの生成を行います。また、収集するデータはデジタルデータだけでなく、紙や写真などアナログデータもデジタルデータに変えて、それらを整理して解析するためのデータとして生成していきます。しかも、これらの主な工程を自動化したことが同社の強みになっています。
データ生成から行うというビジネスモデルはほとんど競合がない状態であり、ビッグデータ分野のニッチトップ企業として成長を続けています。
2018年3月期の経常利益は上方修正を続けて前年比37%増と40%近くまで加速してきました。2019年3月期会社予想は今のところ(5月28日現在)26%増加の予想ですが、最近は業績予想の上方修正を繰り返しており、この増益率も上振れる可能性が考えられます。いずれにしても、直近の業績はオニールの基準に見合うような加速を見せています。時価総額も230億円程度と小さく、成長余地の大きさが感じられる水準です。
ユビコム(証券コード:3937)
病院のレセプト(診療報酬明細書)の点検ソフトのリーディングカンパニーである「 ユビコム 」。この強みを活かして、クラウドコンピューティングを活用したレセプト点検とデータ分析エンジンを構築して「医療ビッグデータ分析のリーディングカンパニー」へと脱皮することを目指しています。医療の効率化という社会の大きな課題を解決するような有望なビジネス分野で期待が持てそうな企業といえそうです。
2018年3月期まで3期連続で20%台の経常増益率を記録し、2019年3月期で約35%と加速する会社予想になっていますので、業績はオニールの基準に準じるような動きになっていると思われます。
今回は以上の5銘柄を紹介しましたが、決算発表や新しい会社四季報の発売はオニール銘柄を探すチャンスですので、ぜひ皆さんご自身でも取り組んでみていただければと思います。
今回のテーマで取り上げた上場企業
太陽工機
手間いらず
ブレインパッド
ダブルスタンダード
ユビコム