1000銘柄以上の大化け株を研究して開発された成長株投資法
ウィリアム・オニールはバフェットとほぼ同世代で、アメリカを代表する投資家の一人です。オニールの投資戦略は「数ヵ月から2年程度で、数倍~数十倍となる成長株を狙う」というものであり、その独自の投資法は「CAN-SLIM(キャンスリム)」と名付けられています。この手法は実際に何十倍にも大化けした株1000銘柄以上を詳細に分析して開発したものであり、これによってオニール自身のみならず多くの億万長者を生み出してきました。
以下ではこの手法について日本の株式市場の実情に合わせて少し数値的な条件などをアレンジした形で紹介していきます。
「利益成長と株価上昇の強さが際立っている小型株」を狙う
その手法の核となるのは、
②経常利益の成長ペースが過去3年間、年率25%以上で
③直近の四半期では前年比40%以上に加速し
④時価総額が500億円以下の小型株で
⑤株価は市場全体の中で際立って強く
⑥上場来高値近辺(あるいは年初来高値、昨年来高値)にある
という6条件そろった銘柄を選ぶことです。
②③の業績については、たとえば、四半期の経常利益が10億円→12億円→15億円→20億円→28億円という感じで順調に拡大して直近で加速している、というイメージです。
業績がここから本格的に変貌するような成長シナリオが描ける小型株で、業績がすでに拡大軌道に乗ってきている株を狙う、ということです。
順張りか逆張りか
オニールの投資法で特にユニークな点は、株価の値動きに関して「市場全体の中で際立って強く、上場来高値近辺にある」株を狙う、という点です。これは、大きく売り込まれたところを買うことが多いバフェットなどとは対照的なところです。
上昇している株を買ってさらに上昇していくことを狙う投資法を「順張り」、大きく下落した株を買う投資法を「逆張り」といいますが、バフェットが典型的な逆張り投資家であるのに対して、オニールは典型的な順張り投資家といえます。
バフェットとオニールの例を見てもわかるように、どちらの手法にも成功者がいますので、自分に合ったやり方を探していくのがいいと思われます。
上場来高値でなく昨年来高値や年初来高値などでも可ですが、オニールが理想とするのはなんといっても上場来高値銘柄です。
小さい会社が大きく化けていく時にはいつでも業績面や株価面で従来の枠を突破していく局面があります。株価面ではそれが新高値という現象として現れるというわけです。オニールが狙うのは2~3割という普通の値動きではなくて、会社が変貌して何十倍というダイナミックな値動きとなっていく局面であり、「上場来高値更新はスタートに過ぎない」と言えるような銘柄なのです。
オニールの投資法は、例えていえば、将来超一流になる選手を小学生や中学生のころから青田買いするようなイメージです。そういう選手の多くは小中学生のころから際立っていることが多いので、そういう選手を狙う、というイメージです。
PERではなく時価総額で割安さを考える
オニールが重視するのは業績と株価の動きの強さであり、PERについては重要視していません。実際にオニールはPER20~50倍くらいで株を購入することが多いようですが、オニールにとって大切なのはあくまでも業績の強さ、株価の値動きの強さ、時価総額の小ささであり、それらの条件が満たされればPER100倍以上で買うこともあるようです。
オニールにとって割安さの指標というのはPERよりも時価総額です。同じ業界で成功した企業の時価総額と比較して、業績が変貌した時にどのくらいの時価総額になる可能性があるのかを考えてみます。たとえば、IT株ならIT業界で成功した企業、外食株なら外食業界で成功した企業の時価総額を参考にして、大きく上昇する余地が残されているなら割安と考えます。
大化け株で短期トレード法を繰り返すか、じっくり保有するか
オニールは大化けしそうな株を見つけた後は、その株を対象に短期トレードを繰り返す手法をとっているようです。
買いのタイミングは、下図のように、株価が一度高値を付けた後に一時的に下落して、再び高値近辺まで戻してきて、そこで横ばいの動きになったところを買う、という考え方です。
オニールによると成長株にはこのようなチャートパターンが頻出し、高値近辺まで戻して横ばいの動きになることが「まだ上昇が続いている」ことのサインとなると同時に、「新たな上昇局面の開始」を示唆するサインになるということです。
買った後は、
②通常は20~25%で一度利食いをする
③1〜3週間で20%も上昇する株は最低8週間持ち続ける
という方針です。
1~3週間という短期間で20%上昇した場合には大きな上昇エネルギーが確認できたと考えて、その値上がりを十分に享受する戦略に切り替えます。オニールの研究では8週程度保有を続けることでその上昇エネルギーの果実の多くを得やすいということです。
8週以上所有した場合には、すぐに売却するか、売りサインが出るまで保有し続けるかという選択になります。
この場合の売りサインは、
・チャートの売りサイン
のどちらかであり、両方が合わされば強い売りサインとなります。
業績鈍化とは、「業績予想の下方修正」「新年度予想の増益率が大幅縮小」などです。増益率についてオニールは3分の1以下になったら警戒といっています。たとえば、40%程度の増益ペースだったものが、新年度予想が10%増益と鈍化するようなケースです
チャート的な売りサインとしてオニールが主に指摘しているのは、
・200日移動平均線が下向き
などです。
もちろん、株価が何十倍にも化ける可能性がある株を見つけたら、細かく売り買いせずにどっしり保有して大幅な上昇を狙うのが理想です。その場合には、細かい数値的条件よりもその会社の成長性をよく理解する必要があります。そうした成長性の見極め方は、すでに紹介したバフェットやフィッシャーのノウハウや考え方が役立ちます。
個人投資家が長期的に成功していくためには、様々な成功者のノウハウや考え方を自分なりに組み合わせて、自分にとって一番良い投資手法を確立していくべきでしょう。
次回はオニールの投資法をよりよく理解するために、現在の日本株を具体的な事例として挙げていきたいと思います。
1933年生まれ。証券会社に入社後に独自の投資ノウハウを研究。30歳の時に株式投資で得た利益でニューヨーク証券取引所の会員権を取得し、さらに、機関投資家向けのリサーチ専門の投資情報会社を設立。『ウォール・ストリート・ジャーナル』に対抗し『インベスターズ・ビジネス・デイリー』を創刊。代表的な著書は『オニールの成長株発掘法』。