2017年の日本株市場は、半導体やFA(工場自動化)、ロボットなどが注目され、関連銘柄の株価が上昇しました。
こうした中、2018年1月9日からアメリカで開かれた世界最大の家電見本市「CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」では、トヨタが自動運転技術を活用した新たな電気自動車を発表したり、米国の半導体メーカー大手であるNVIDIAが新しい自動運転技術をUberやフォルクスワーゲンへ提供すると発表するなど、自動運転社会が当たり前になる世界を予感させるものとなりました。
また、今年はアウディからシステム主導の運転技術を搭載した自動運転車「A8」が発売される予定となっています。2018年はいよいよ本格的な自動運転が実現する年と言えそうですね。
そこでFROGGY編集部では、自動運転のキーテクノロジーである「人工知能(AI)」「位置情報」「センサー技術」に着目しました。今回はこうした自動運転に不可欠な技術を持つ会社にクローズアップします!
AIの研究・開発を加速へ【トヨタ自動車】
日本を代表する企業である「 トヨタ自動車 」。毎年、世界中で約125万人が交通事故により命を落としています。究極の願いを「交通死傷者ゼロ」とし、商品開発を進める同社は、1990年代から自動運転技術の研究開発に取り組んでいます。
そんなトヨタが自動運転車を開発する中で、力を入れている分野がAIです。2016年1月に新会社「TOYOTA RESEARCH INSTITUTE, INC.」(TRI)をシリコンバレーに設立し、マサチューセッツ工科大学やスタンフォード大学との連携を進めるなどしてAIの研究・開発を加速させています。
現在ドライバーの姿勢や頭の位置、視線や感情を認識し、ドライバーのニーズなどを予測するシミュレータを開発しています。実現すると、ドライバーが暑そうにしていたらエアコンを調節したり、眠気を感じていれば近くのコーヒーショップへ誘導するといったことが可能になります。
単純に自動運転を実現させるだけでなく、ドライバーの心と気持ちにまで寄り添って、これまでの人と車の関係性さえも刷新しようとしているトヨタ自動車の動きには注目です。
地図の王様【ゼンリン】
国内99.6%の地図を保有し、グーグルやヤフー、マイクロソフトなど多くのデジタル地図サービスにデータを提供しているのが「 ゼンリン 」です。
自動運転では、複雑な交差点や立体交差の道路で正確に走るために、これまでの2次元の地図データに加えて、標識や信号機、ガードレールなどを立体的に把握することが必要となります。つまり、自動運転社会では立体的な地図データのニーズが高まることが予想されます。
そのため同社は360度全方向撮影可能なカメラや各種センサーを搭載した計測車両を用いて、立体的なデータの取得を進めています。2018年度中には三菱電機などと共同で国内の自動車専用道路約3万キロメートル分の高精度な地図データを整備する計画です。このデータをもとにさらに地図会社が加工したり、完成車メーカーなどの実証実験が進むものと考えられ、自動運転社会のインフラ企業として期待されます。
また、同社は足元の業績も好調です。国内カーナビ向けの売上が伸びていることもあり、2018年3月期の業績は増収増益を会社側は予想しているとのこと。今後さらにシステムが主体となる自動運転車が発売されるにつれ、立体的な地図データのニーズが高まり、業績にも貢献することが想定されます。
宇宙からクルマを導く会社【三菱電機】
地図情報と併せて、クルマの位置を正確に把握するために不可欠なものと言えば、衛星の電波を利用した位置情報です。そして、それを可能にしてくれるのが、「 三菱電機 」がJAXAや内閣府と共同で製作した準天頂衛星「みちびき」です。
これまでは米国のGPS衛星を使った位置情報で、数m程度の誤差がありましたが、「みちびき」は位置情報の誤差をなんと数cmに抑えることができます。こうした高精度の位置情報は各種センサーと併せて使うことで、より安全に正確に自動運転を実行することができるのです。
「みちびき」からの位置情報を利用した実証実験は、すでに全国で行われています。たとえば、北海道空知郡における農業用トラクターの自動走行実験。大手農機メーカーが参加し、「みちびき」からの信号を受信してトラクターが指示通り走るかを実験しました。
このような実証実験を経て、2018年4月からいよいよ一般向けにも高精度な位置情報の提供が開始されます。3次元の高精度な地図データと併せて利用できるようになることで、今までにない高度なナビゲーションが可能になるでしょう。
世界シェアNo.1! クルマの「目」を作る会社【日本セラミック】
クルマの周辺状況を瞬時に把握するのに欠かせないのが赤外線センサーや超音波センサーです。センサーは前の車との距離を測り、衝突を防止するための車の「目」となります。そんな自動運転の肝となる製品を作っているのが、「 日本セラミック 」です。同社が手がける赤外線センサーは国内で約9割、世界でも約6割と圧倒的なシェアを誇ります。
日本セラミック製センサーの強みは、他社と比べてより「遠くて細いものを検知できる」こと。同社の超音波センサーはなんと5メートル先にある直径6センチの道路標識のポールなども認識できます。自動運転では人間の目以上に正確な距離をセンサーが瞬時に把握する必要があります。
また、人間が主体となって運転するときにも誤発進などを防ぐため、多くのセンサーが必要となります。そんな自動運転にとって不可欠とも言える部品を圧倒的なシェアで手がける日本セラミック。今後は自動運転社会のキーカンパニーとして世界から注目を浴びる存在になるのではないでしょうか。
注意すべきは車の外だけではない!?【オムロン】
センサーやカメラが必要なのは何も車外だけではありません。実はドライバーの状況を把握し、コンピュータ制御からドライバーにスムーズに運転をバトンタッチできるか、ということも自動運転の課題となっているのです。そんな「ドライバーがいま運転に集中できる状態か」を判別するセンサーを開発しているのが「 オムロン 」です。
同社が開発した「ドライバー見守り車載センサー」は、居眠り、脇見など、さまざまな運転手の状態を判定できます。交通事故の原因の8割がドライバーの不注意など人的要因であると言われており、いまでも非常に重要なパーツと言えますが、自動運転社会ではますます注目度が高まる分野と言えます。
また、同社は1964年に世界初の電子式自動感応式信号機を開発した企業でもあります。交通事故の防止や混雑の緩和といった交通制御に関するニーズに応えたオムロン。いままでもこれからも社会的課題を解決してくれる企業です。
自動運転社会は「遠い未来」の話ではない
これまでは未来のクルマとして語られることが多かった自動運転車。しかし、必要となる技術は着々と実現しつつあり、もはや自動運転社会は「遠い未来」の話ではないことがわかりますね。
2030年にはシステム主導の自動運転車が世界でなんと約2000万台に達するという試算もあります。キーとなる技術を持つ企業をチェックして、今から投資を検討してみてはいかがでしょうか。
今回のテーマで取り上げた上場企業
トヨタ自動車
ゼンリン
三菱電機
日本セラミック
オムロン