「50歳で3億円」のつくり方 とりでみなみさん前編

リアル投資家列伝・ 「50歳で3億円」のつくり方/ とりでみなみ

あくまでも仕事がメインだから、株にかける努力や時間は最小限にとどめる――そんなスタンスながら株式投資で成功を収め、「50歳までに3億円」という目標を達成したのが、とりでみなみさんです。どんな思いで株を始めて、どうやって3億円にたどりついたのかーー前編ではその投資家ヒストリーを伺いました。

投資のきっかけは「現代社会」の授業

「残業に明け暮れていた20代のとき、考えたんです。どうしたら年収3000万円に近づけるだろう――と。年収3000万円というと上場企業だと役員クラスだし、どれだけ残業しても年収1000万円くらいまで。支出の削減や副業をがんばっても限界がある。ふと思い出したのが高校の授業でした」

そういって会社員の兼業投資家・とりでみなみさんが語り出したのは、高校時代・現代社会の授業での思い出だった。

資本主義について教わりながら、生徒全員で模擬的な株式投資をしたんです。確か5月からスタートして年度末に授業で結果を確認したら、クラス全員マイナスでした。40人ほどが買った銘柄のなかで、プラスだったのは2つしかなかった。当時は不動産バブル崩壊後で日経平均も右肩下がりでしたが、そんななかでも上がる株があるんだ、ということが印象として強く残っていました

会社員がどう年収3000万円をめざすか×高校で受けた現代社会の授業=株式投資。これがとりでみなみさんの答えだった。

「50歳までに3億円」をめざして株式投資をスタート

株を始めたのは25、6歳でしたが、29歳の時にどうしたら50歳までに3億円が貯まるか、エクセルでシミュレーションしたんです。すると年300万円ずつ入金し、7%で運用すると51歳で3億円に到達する。『なるほど、7%ならできそうだ』と。このときのシミュレーションはずっと机に貼っています。いわば僕の原点です」

その頃、株式投資の平均リターンは7%程度※と聞いた。市場平均と同じくらいのリターンならば獲得できそうだという目算もあった。

※平均リターンは観測する期間や相場によっても異なります。

「投資先として目安にしたのは『自分の勤務先より潰れなさそうな会社』。具体的には「 トヨタ自動車 」や「 ソニーグループ 」「 オリエンタルランド 」などだったと思います。株式投資では倒産して株券が紙くずになるリスクがありますが、トヨタだったら潰れないだろう、と」

株式投資を始めたとりでさんだったが、早速、市場の洗礼を受けることになる。

「ソニーの決算発表で想定外の減益予想となったことなどをきっかけに『ソニーショック』が起きたんです。そこで痛感したのは分散投資の大切さ。仕事として調査しているアナリストでも予想できないようなことが発表されるなら、僕なんかにはとうてい太刀打ちできない。だったら分散投資でリスクを抑えるしかない、と」

カエル先生の一言

2003年の4月24日、ソニーが発表した2003年度の連結業績の見通しが大幅減益予想だったことなどをきっかけに、2営業日にわたってソニー株が暴落しました。日経平均株価も、バブル崩壊後の最安値を2日連続で更新しました。

会社員の強みは「入金力」

とりでさんのポートフォリオにも大きなダメージを与えたが、机に貼った3億円へのシミュレーションが背中を押してくれた。

長期的にみれば銀行預金よりもいいだろうと思っていましたし、資産が小さいうちの失敗は入金で挽回できる。資産3000万円で30%やられると、損失は900万円。挽回するのは難しいけれど、資産300万円の30%なら90万円。1年もあれば入金して挽回できますよね」

会社員の強みは入金力。とりでさんは入金に力を注いだ。

全力で入金しました。給料は生活費を除いて、ほぼすべて入金しましたし、ボーナスを使ったのは人生でいまだ3回だけです。最初のボーナスで両親に旅行をプレゼントし、昇格試験前のボーナスではスーツを新調しました。3回目は東京五輪のパラリンピックのチケット代です。オリンピックのチケットが全部外れたので、今回もどうせほとんど外れるだろうという目算で52万円分のチケットを申し込んだら全部当たってしまって(笑)。結局、(コロナ禍で)チケット代は全額払い戻されましたけど」

趣味や交際費といった日々のお小遣いはどうしていたのだろう。

配当はすべてお小遣いにしていました。年4%の配当だと300万円で12万円。毎年300万円ずつ株を買えばお小遣いが年12万円増える――それが入金や株式投資をがんばるモチベーションにもなっていました」

「潰れない会社」からバリュー投資へ

ソニーショックは、とりでさんが本格的に株の勉強を始めるきっかけにもなった。

「それまでは『自分の勤務先より潰れなさそうな会社』を買っていましたが、市場が全体的に右肩下がりになってきたので、『下がらなさそうな会社』はどんな会社なんだろう?と」

そこで出会ったのが割安株へ投資するバリュー投資だった。

今の評価は安くとも実際の評価はもっと高いはず、という会社なら、地合いが悪くとも下がりにくい――このようなバリュー投資の考え方は、理論的に正しいと思えたんです

割安な銘柄へとポートフォリオを切り替えたとき、リーマン・ショックが起こった。

「そのおかげでリーマン・ショックを切り抜けられたと思います。当時持っていた21銘柄のうち、7銘柄がTOB(株式公開買付)やMBO(経営陣による企業買収)され、株価の数倍で買い取ってもらうこともできました

「四季報通読」のススメ

バリュー投資で成功体験を重ね、さらに株主優待にも手を伸ばしたとりでさんは、株式投資への知見を深めていく。

「そのころがいちばん勉強した時期です。決算の読み方も学びましたし、今でこそほとんど読みませんが、会社四季報も最初から最後まで読みました」

分厚い会社四季報だが、通読するのはオススメだという。

日本経済の全体像が見えてくるんです。化学メーカーが何社上場しているか、自動車はどうか、と業種ごとの上場企業数を知るだけでも日本経済の構造がわかってきます。それは日本の貿易輸出やGDPの構成比とも関係してきます。1度でいいので全体を通して読んでみてほしい。賢くなっていく自分を感じるはずです」

四季報の通読は、バリュー投資についての理解を深めるのにも役立った。

「キャッシュリッチなバリュー企業であれば、売上や利益の伸びはパッとしないけど『現金等』の項目は多く、BPS(1株当たり純資産)が株価を上回っています。そんな会社がどの業種に多いのか、四季報を通読していると見えてきました。『塾関連に多いな、少子化だから生徒が増えない、でも一定の売上はあるし新規の設備投資も不要だから現金の塊のようになるのか』、などわかってくる」

「バリュートラップ」からグロース投資へ

とりでさんにとって次の転機となったのは、求人支援を主力とする「 KG情報 」への投資だった。

「10年ほど前から持っていたガチガチのバリュー銘柄です。それがある日、増配を発表しストップ高になった。喜んでポートフォリオを確認しましたが、10年前から株価はほとんど変わっていなかった。割安なままいつまでも放置される――これが『バリュートラップ』なんだな、と痛感しました。10年持つような長期投資をするならちゃんと上がる銘柄を買うようにしなければ、と

バリュー株投資からグロース株投資へ。とりでさんはスタイルをガラッと変えた。

「年7%をバリュー投資で達成するのはけっこう難しいですが、伸びている市場で事業を展開する会社なら7%くらいは上がってくれる。PER(株価収益率)80倍の会社なんて、バリュー投資目線では買えません。そんななか思い切って買ってみたのが「 弁護士ドットコム 」です。投資家が1年後も同じくらいに期待するならPERは高いままだし、その間の利益の伸びを株価が反映してくれるなら、PERが高くてもいいんじゃないか、という判断で2017年に1000円前後で3000株買いました。その後、弁護士ドットコムは思ったとおりに成長し、PERも一時600倍※を超えるまでに上昇しました

※QUICK社が算出する連結優先PERベース

弁護士ドットコムでの投資が成功し、とりでさんのグロース投資が固まっていった。

「グロース(成長企業)であれば四季報はPER、営業利益率、ROE、ROAをざっと見て、売上と一緒に利益が伸びているかを確認する。伸びているなら目を止めて、会社の概要や事業内容を確認します。これを繰り返すと、どんな業態が日本経済を引っ張っているのかがわかるようになるし、成長企業の傾向も見えてきます」

予定よりも約3年早く、資産3億円へ

2024年1月、とりでさんの資産は3億円に達した。株式投資を始めたときの試算よりも約3年早い達成だ。

「このままだと55歳で5億円とかに達してしまうのですが、正直そんなにいりません。投資は人生を充実させる手段であって、会いたい人が大阪にいても長崎にいてもいたらすぐ会いにいけるくらいのお金があれば充分です。なので目標を見失い、今は迷走しています(笑)」

ゆったりとしたスタンスで株と付き合いながらも、年7%のペースで目標を達成したとりでさん。そのスタンスは自分が働きながらお金にも働いてもらって資産を築こうとする人の参考になるはず。

そんなとりでさんがどうやって銘柄を選んでいるのか、後編では実践的な話を教えてもらいましょう。

弁護士ドットコム(6027)は記事執筆時点で、証券金融会社の注意喚起に指定されています。
次回は9/25(水)配信予定です。