8兆円マーケットへ 「宇宙開発」関連株が上昇

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株式市場で「宇宙開発」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は2.1%と、東証株価指数(TOPIX、1.0%安)に対して逆行高となりました(9月13日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

宇宙開発に関するニュースが相次ぐ

宇宙開発関連株が買われたきっかけは、関連企業が個別に発表した宇宙開発に関するニュースリリースや、業績見通しなどに関する好材料です。毛利衛さんが、日本人として初めてスペースシャトルに乗って飛び立ったことを記念して定められた9月12日 「宇宙の日」に前後して、関連株が上昇しました。

宇宙開発に関しては、2023年に政府が「宇宙基本計画」を発表しています。計画では、国内の宇宙産業の市場規模を2020年の4兆円から30年代の早期に8兆円へ拡大することを目標に設定。 新興企業はもちろん、重工長大と言われた日本を代表する企業も積極的な事業展開を進めています。

また、9月10日から15日にかけて報道された、米著名起業家イーロン・マスク氏が率いる宇宙開発会社スペースXによる、民間人を乗せた宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げ、宇宙空間における船外活動、地球への帰還のニュースも話題となりました。

ミッション2へ向け期待高まる【ispace】

上昇率首位は、月面輸送サービスを手がけるispaceです。同社は9日、2度目の月面着陸挑戦となるミッション2で使用する月面着陸船「ランダー」を12日に披露すると発表し、期待感から株価は大幅上昇しました。

12日の発表では、これまで2024年冬頃としていた打ち上げ時期を、最速で12月に実施すると公表。月面で初期的な資源探査の取り組みを行なうことも明らかにしました。

同社株は、東証グロース市場に上場して間もない2023年4月に月面着陸ミッション1に失敗して以降低迷状態にありましたが、底入れとの見方も一部で出てきているようです(『ミッション継続で再脚光 「宇宙開発」関連株が上昇)

次世代ロケット「イプシロン」を開発・製造【IHI】

上昇率2位は総合重機大手のIHIです。宇宙開発分野ではロケットエンジンの心臓部「ターボポンプ」や次世代ロケット「イプシロン」の開発・製造を手掛けています。

2024年度の連結業績見通しでは、航空・宇宙・防衛セグメントの売上収益が前期比2倍、営業損益は660億円の黒字(前期は1028億円の赤字)に転換し、全体の業績けん引役となる見込みです。旅客需要の回復などを背景に、民間航空機エンジンが好調との証券会社によるレポートも株価材料となったようです。

宇宙機器、ロケット、デブリ除去など裾野広い分野で展開

総合重機大手の川崎重工業は、H2A、H2B用ロケット・フェアリング(ロケット先端部の衛星を摩擦熱から守るパーツ)などの宇宙機器を手がけています 。航空・防衛分野の利益成長を評価した証券会社のレポートも株価を刺激したようです 。

総合重機大手の三菱重工業は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)からロケット技術の移転を受け、2007年からH2Aロケットによる打ち上げ輸送サービスを開始。2013年からはH2Bも打ち上げ輸送サービスのラインアップに加えています 。

アストロスケールホールディングスはスペースデブリ(宇宙ゴミ)除去サービスを手がけています(『落下物から地球を守れ!「宇宙ごみ」関連株が上昇)11日に、英国の連結子会社が、英国宇宙庁(UKSA)と運用を終えた衛星2機のデブリ除去プロジェクトの継続契約を締結したと発表しました。

宇宙ビジネスは成長市場、関連銘柄への期待も大きい

これまで政府は、宇宙関連企業に新たな担い手を招き入れるため、2018年からの5年間で官民合わせて約1000億円のリスクマネーを宇宙ビジネスに供給しました。

これにより、小型ロケット、スペースデブリ低減、月面輸送などの分野でスタートアップ企業が続々と登場。また、大企業がスタートアップ企業へ出資して共同開発・製造を目指すなどの動きもあります。

今後も宇宙開発に関する技術の進展や、ビジネスへの取り組みを巡るニュースなどにより、関連株への期待は高まりそうです。