不正アクセス続発 「サイバーセキュリティ」関連株が上昇

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株式市場で「サイバーセキュリティ」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は3.9%と、東証株価指数(TOPIX、2.3%安)に対して逆行高となりました(7月19日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!

好決算発表と不正アクセス続発で先行き期待高まる

サイバーセキュリティ関連株が上昇した背景は、関連企業の好決算発表と、不正アクセス発生によるサイバーセキュリティ需要の拡大期待です。

7月12日、顔認証などを活用した生成AI(人工知能)サービスの開発などを手掛けているトリプルアイズが、2024年8月期第3四半期(9-5月)の決算において、営業利益の黒字転換と通期業績予想の上方修正を発表。セキュリティ需要などを背景とするAIソリューション事業の好調な推移が確認されました。

一方、16日、アルプスアルパインの中国法人が不正アクセスを受けたと発表。続く17日には、東京ガスが子会社へのネットワーク不正アクセスにより消費者の個人情報が流出した恐れがあると公表しました。国内企業のサイバー攻撃被害が後を絶たず、サイバーセキュリティ需要に対する拡大期待が広まりました。

安全重視のAIサービス【トリプルアイズ】

上昇率首位の「 トリプルアイズ 」は、データ保護やセキュリティ管理に注力しており、自社内施設で保有、管理するサーバーとクラウドを使い分け、安全性と機動性を両立するAIサービスを提供しています。

12日の決算発表では、2024年8月期連結最終損益を500万円の黒字(従来は8700万円の赤字、前期は8億2500万円の赤字)に上方修正しました。大型案件の受注などAIソリューション事業の好調な推移を挙げています。AI需要が拡大するなか、さらなる成長が期待されます。 

未知のウイルス対策が強み【FFRIセキュリティ】

上昇率2位の「 FFRI 」は未知のウイルス対策への研究を進め、製品の開発に活かしています。日本年金機構などの官公庁や金融、教育機関といったセキュリティが特に重要視される組織からの採用実績があり、技術力の高さがうかがえます。24年3月期の連結純利益は前の期比2.3倍と大幅に拡大し、25年3月期も増収増益を見込むなど、業績も順調に拡大しています。 

セキュリティ教育を手掛ける企業も

HENNGE 」はクラウドサービス向けのセキュリティ対策を手掛けています。マイクロソフト365やグーグルワークスペース、スラックなど230以上のサービスに対応し、約2600社の導入実績があります。

セキュアヴェイル 」は病院など医療機関向けのサイバーセキュリティ対策サービスを手掛けているのが特徴です。今後は自動車産業向けも強化する方針で、27年3月期の連結売上高を24年3月期比で約1.5倍とする目標の達成を目指します。

グローバルセキュリティエキスパート 」はサイバーセキュリティに関する教育に力を入れており、企業研修やセミナーなどを開いています。 

サイバーセキュリティ関連銘柄は成長銘柄に育つ可能性も

現代社会のあらゆる経済活動はインターネットやネットワークを介しており、ひとたびシステム障害が発生すると、世界各地の企業活動や我々の生活は大きな打撃を受けます。

今年6月、KADOKAWAがランサムウェア(身代金要求型ウイルス)を含むサイバー攻撃を受け、社内外の関係者の個人情報などが流出しましたが、現在もシステム障害が続いています。今月19日には米サイバーセキュリティ企業のクラウドストライク・ホールディングスのソフトウエアに不具合が生じた影響で、世界的なシステム障害が起こっています。

また、局地的な武力紛争が絶えないなど複雑化する国際情勢の中、武力攻撃とサイバー攻撃が組み合わされた「ハイブリッド戦争」が展開されているともいわれます(『サイバー攻撃への警戒高まる! 「セキュリティ」関連株が上昇)

システム障害の要因の一つとなるサイバー攻撃を未然に防ごうと、政府も新法を制定する方向で検討に入ったとも伝わりました。過去1年にサイバー攻撃を受けた企業は取引先を含め24%にものぼるという調査が出るなど、サイバー攻撃対策は必須となりつつあります。対策を手掛ける企業は成長銘柄になる可能性を十分に秘めており、業界や各企業の動向に注目しておきたいテーマの一つです。