落下物から地球を守れ! 「宇宙ごみ」関連株が上昇

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株式市場で「宇宙ごみ(スペースデブリ)」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は7.4%と、東証株価指数(TOPIX、3.1%)を上回りました(6月28日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します! 

ついに訴訟問題も発生

宇宙ごみは、運用を終えた人工衛星や打ち上げ後に切り離されたロケットの機体などです。関連株が物色された背景は、宇宙ごみ対策の必要性を強く意識させるニュースが相次いだことです。 

今年3月、米国で自宅に宇宙ごみが直撃し屋根を破壊するという事故が起きました。落下してきたものは国際宇宙ステーションが廃棄したもので、家主は5月に米航空宇宙局(NASA)に対して損害賠償を求め提訴しました。6月に入り家主の代理人の所属する米国の法律事務所が提訴したことを発表、国内外のメディアで報道されました。

さらに、6月末にはロシアの運用済み人工衛星が軌道上で分解し100個超の宇宙ごみが発生、宇宙飛行士が一時退避したと米宇宙統合軍が発表しました。

監視サービスを開発【IHI】

上昇率首位の「 IHI 」は宇宙ごみや他の人工衛星との衝突回避装置や、宇宙ごみの監視サービスなどを手掛けています。2023年には米防衛大手のノースロップ・グラマンと宇宙監視向け小型・高機動人工衛星の日本への提供で協業する覚書を締結しました。宇宙ごみ対策や宇宙の安全対策が加速すれば、同社の製品やサービスの需要増加が期待できそうです。

同社は大型ロケットの「H3」や小型の「イプシロン」、国際宇宙ステーションに関する機器の開発などもしています。宇宙ごみ以外でも宇宙開発の加速による恩恵を受けるとみられます。 

宇宙ごみ対策が主力【アストロスケール】

上昇率2位の「 アストロスケールは6月5日、東証グロース市場に上場した新興企業です。宇宙ごみの除去サービスの開発など、持続可能な宇宙環境(スペースサステナビリティ)に専業で取り組んでいます。同社は14日、開発した人工衛星「ADRAS-J」が宇宙ごみに約50メートルまで接近し、撮影に成功したと発表しました。宇宙ごみの観測データは取得が難しく、宇宙ごみ除去サービスの開発に向けて大きな一歩となりました。  

重工メーカーにも期待

川崎重工業 」は宇宙開発機器の一つとして、宇宙ごみ捕獲用の衛星を開発しています。

三菱重工業 」は大型ロケット「H3」の開発など、宇宙開発事業を主力とするほか、アストロスケールと宇宙ごみ除去に向けた技術協力で覚書を締結しています。

富士通 」は宇宙ごみの軌道を計算する解析システムを構築し、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が活用しています。

宇宙ごみ対策の強化により、いずれの銘柄も業績への寄与が期待されます。 

30年までに「宇宙ごみゼロ」を目指す

欧州宇宙機関(ESA)は23年、宇宙ごみの低減をうたう「ゼロ・デブリス憲章」をまとめ、30年までに宇宙ごみをゼロにする目標を立てています。アッシュバッハー長官も国際的なルール作りを呼びかけ、「合意を見出すことが全員の利益になる」と協力を促しています。

宇宙ごみ対策の市場規模は29年までに、22年比で約60%増の15億2770万ドルに達するとの予測もあり、大きな成長が期待できます。加熱する衛星通信や月面資源などの宇宙開発競争(『ミッション継続で再脚光 「宇宙開発」関連株が上昇)を支える宇宙ごみ対策にも注目してみてはいかがでしょうか。