250万円の元手を2億7000万円へ 弐億貯男さん前編

リアル投資家列伝・ 週2時間の分析で、250万円の元手を2億7千万円へ/ 弐億貯男

「あさって引っ越し予定なんです。新居? いいなと思う物件が売りに出ていたので買ってしまいました。現金一括払いです」ーー引っ越し間際のすっきりした部屋で取材に答えてくれたのは、億り人の弐億貯男さん(以降、弐億さん)。250万円ほどの元手を2億7000万円へ増やした個人投資家です。難しいことはしないシンプルな投資で成功を収めている弐億さん。その話には多くの学びがありました。

失敗からスタートした株式投資

「2002年10月頃、ニュースなどで『日経平均、バブル後最安値を更新』といったニュースが連日のように流れていました。そんなに安いのなら、今買えば素人でも儲かるんじゃないか――そう思ったのが株を始めたきっかけです」

弐億さんが27歳のときのこと。日経平均は9000円割れまで下がっていた。

「最初の資金は100万円でした。買ったのは現「 スクウェア・エニックス・HD 」や現「 バンダイナムコHD 」、「 サイゼリヤ 」など自分に身近なゲームや外食などの銘柄です」

弐億さんの投資は波乱含みの始まりだった。買った早々、サイゼリヤで悪材料が噴出。株価は下落してしまったのだ。

「株価が下がっても損切りせず、反対に追加入金して買い増ししました。その分も合わせた入金額は合計250万円、サイゼリヤ株を1000株以上も保有するまでになっていました。株主優待で2万円分以上のお食事券がもらえたほどです(笑)」

カエル先生の一言

サイゼリヤは、2024年6月時点も株主優待を実施しています。100株以上500株未満を継続保有すると、2000円分の食事券をもらえます。

株価はなかなか回復せず、身動きが取れなくなってしまった弐億さんが再び動き始めたのは約半年後、2003年の5月頃だ。

「株式市場全体が反転上昇し、サイゼリヤの株価も持ち直してきた。『やれやれ』とやっとサイゼリヤ株を手放せました。損失は小さく済んだものの、当初の予定よりも多くの資金を投じることになりました。そしてその資金も半年の間、拘束されて身動きが取れない状態となってしまったのは反省です」

弐億さんの投資は失敗からのスタートだった。

「失敗したときには『同じ失敗を繰り返さないぞ』と自分に言い聞かせています。自分の投資スタイルは、失敗を教訓に『次からは気をつけよう』と洗練させていった感じです。それでも同じ失敗を繰り返すことはありますが、失敗する要因を潰していくことで、負けにくくなりました」

最大損失200万円、最大利益は6000万円

サイゼリヤでの反省点は『損切りの遅れ』だった。同じ失敗を繰り返さないよう、弐億さんが心がけるようになったのは「損切りは素早く」だ。

「『いくら下がったら損切り』などとマニュアル化しているわけではないですが、悪材料が出たら速攻逃げることを心がけています。それもあって1銘柄で大きく損をすることはごくまれ。これまでの1銘柄での最大損失は200万円です」

「損切りを素早く」と心がける一方、弐億さんは「利益は大きく」もモットーとしている。それを実践した銘柄が……、とその前に、弐億さんがどうやって投資スタイルを固めたかを聞いていこう。

「サイゼリヤを塩漬けしている間に投資本を読み、割安成長株を買うのが良さそうだと思いました。早速「シノケングループ(2022年に上場廃止)」のような新興不動産銘柄を買って実践したところ、2005年末には2000万円弱まで増えてくれたんです」

今に至るまで弐億さんの芯となっている割安成長株への投資の始まりだ。なかでも大成功を収めたのが「 チャーム・ケア・コーポレーション 」への投資だった。介護付き有料老人ホームを展開する会社だ。

「チャーム・ケアを最初に買ったのは2012年。同業の会社が時価総額約500億円ほどだったのに対して、チャーム・ケアの時価総額は20億円にも満たず、PERも割安でした。チャーム・ケアの老人ホームが増えるとともに売上や利益が拡大し、株価も将来的に10倍、20倍へ上がっていく期待が持てました」

成長性と割安感の2つを兼ね備えた銘柄だった。

「2016年から株価が上昇していったため、少しずつ利益確定し、2019年に全株を売却しました。550万円ほどの投資でしたが、約6000万円の利益をもたらしてくれました。テンバガー(10倍株)の達成です」

※チャーム・ケア・コーポレーションは2016年、2017年、2018年、2019年に1:2で株式分割をしています。

1銘柄での最大損失は200万円だが、チャーム・ケアの利益は約6000万円。投資用語でいう「損小利大」、つまり「損は小さく、利益は大きく」の好例だ。割安成長株へ中長期保有し、「損小利大」を実践していくのが弐億さんの投資スタイルとなった。

暴落から学んだ「買付余力」の大切さ

「とはいえ順調な道のりではありませんでした。ライブドア・ショックやリーマン・ショックなど、株価が短期間に急落する◯◯ショックはその都度食らってきました。本来なら暴落は安く買うチャンス。それなのに食らってしまうのは、ある銘柄を売却して資金ができると『次はこれを買おう』とすぐに次の株を買ってしまうフルポジ(フルポジション)が常態だったからです」

〇〇ショックで打撃を受けるのは「運が悪いから」ではなく、「常にフルポジだから」と気がついた弐億さんは投資スタイルを転換していく。

「株式市場ではいつ急落がくるかわからない。そうであれば、買付余力を常に残しておくようにしようと決めたのが、東日本大震災での株価暴落のあとでした。それからは急落時に安く買えるよう、資金の最低2、3割は買付余力として残しています」

2015年に億り人、現在の資産は2億7000万円へ

チャーム・ケアの成功も貢献し、2019年に弐億さんの資産は2億円に到達する。

「今は2億7000万円まで増えました。資金? 最初に投じた250万円だけです。でも大成功だとは思っていません。コロナ・ショックでは買付余力があったのに、恐怖心もあって上手く買えませんでした」

昨年(2023年)からの上昇局面でも反省があるという。

「2023年からは、日経平均に採用されるような大型株を中心に株価が上がっています。割安成長株への投資は中小型株が中心になりやすく、私も利益は出ているものの、他の投資家さんに比べると見劣りします」

250万円から2億7000万円へーー22年間で100倍以上なので大成功といっていいだろう。年間パフォーマンスを見ても、マイナスとなったのは2007年だけだ。
「2024年末には3億円、2029年末には5億円が目標です。根拠ですか? 2億円を達成した2019年から年率10%ペースで増やすとそのくらいだったんです」

いま注目している3つの業種

目標に向かって今も割安成長株を中心としたポートフォリオを組んでいる弐億さんには、注目している業種がある。

「世はAIブームですし、私も注目していますが、いかにもAI、AIしている銘柄は大人気で割高なことも多い。そこでAI導入を支援するようなSI(システムインテグレーター)関連銘柄を探しています。保有株でいうと「 SHINKO 」はそのひとつと言えるかもしれません」

SHINKOはシステムの構築や導入支援を行う会社だ。

もうひとつ弐億さんが注目するセクターは介護関連だという。

「チャーム・ケア」の二匹目のドジョウではないですが、介護業界は今、人材難で採用が難しい。そこで介護そのものではなく、医療福祉分野への人材紹介サービスを強みとする「 トライト 」などを保有しています」

課題を抱えた業界にはチャンスも多い。トライトと同じ発想で保有しているのが大阪を地盤とする物流企業の「 ヒガシトゥエンティワン 」だ。

「トラックドライバーの労働時間が短縮される、いわゆる『2024年問題』があります。ネガティブに捉えられがちですが、物流企業からすると値上げへの理解を得るきっかけでもある。EC関連で物流の需要も増えていますし、ヒガシトゥエンティワンのような倉庫から物流まで一括して受託できるようなビジネスにはチャンスも増えそうです」

新居も構え、「2024年末3億円」の目標に向かって投資を続ける弐億さん。後編では銘柄の選び方を深掘りして聞いていこう。

次回は6/28(金)配信予定です。