大公開! 7割勝って「そこそこ儲かる」投資法 ~なごちょうさん後編

リアル投資家列伝・ 「退場しない」がモットーの長期投資/ 名古屋の長期投資家(なごちょう)

分散投資して、資産が育つのをじっくり待ち構える投資スタイルである、名古屋の長期投資家(なごちょう)さん。「自分なりの日経平均」をめざしたポートフォリオは200銘柄以上で構成されています。「手取り配当額400万円」を目標にした高配当銘柄への投資も行っている「なごちょう」さんに「銘柄の選び方」を聞きました。
「『退場しない』がモットーの長期投資 ~なごちょうさん前編」を読む

「自分なりの日経平均」をつくる

なごちょうさんは銘柄をどう選定しているのだろうか。

投資信託のファンドマネジャーになったつもりで『自分なりの日経平均』を作ろうと思って分散しています。最近はハイテクに偏ってきていますが、以前の日経平均はメルシャン(現「 キリンHD 」)のようなマイナーな銘柄も入っていたりして、いいポートフォリオだなと思っていました」

将来は日経平均のようなポートフォリオを組みたいとイメージしていたと言う。でも、それなら日経平均に連動するETFをひたすら買っていけばいいのでは?

「今の日経平均は一部の銘柄の寄与度が高いし、225銘柄の中には欲しくない銘柄もある。それを外して個別に買っていけばいいかもしれないですが、日経平均に組み入れられた銘柄は投資信託の買いなどにより割高になっている可能性もあります」

それならば自分で銘柄を選定し、日経平均のように幅広い業種に分散したポートフォリオを組めばいい――そんな発想で227銘柄に分散投資している

「33業種、ほぼすべてに分散しています。TOPIXをパフォーマンスの目安にしていますが、この20年ほどで自分のパフォーマンスがTOPIXに負けたのは2020年くらい。あとは勝っています。『銘柄を選定して投資するアクティブファンドは日経平均など指数に連動するインデックス・ファンドに負ける』なんて言われますが、自分くらいの資金規模だと普通にやればインデックスに勝てると思います」

200社以上に分散し、1銘柄に集中投資することもないから資産が大きく増えることはないが、大きく負けることもない。

「投資家としての資質ってあると思うんです。自分は『失わないこと』『退場しないこと』に重点を置いています。退場さえせずに、株式市場に資金を置き続ければ増えていくだろう、と

なごちょうさん流! 6つのスクリーニング

では、なごちょうさんはどうやって銘柄を選んでいるのだろうか。

「1銘柄を深掘りする性格ではありません。もう値上がりしなさそうだと思ったらすぐスパッと切る。1銘柄にこだわることはありません」

他の投資家と比較してみましょう……と、過去にこの連載に登場くださった「テンバガー(10倍株)ハンター」の愛鷹さんとの違いを教えてくれた。

「愛鷹さんは10銘柄のうち1つでも大当たりすればいい、という考え方ですが、自分は10のうち7つでそこそこ儲かればいい、という理論。理論というか実際そうなっています。それでもTOPIXなどのインデックスに勝てるし、時間さえかければ凡人でもできるやり方です」

大当たりを狙うには深掘りした分析も必要だが、「そこそこ」の利益を目指すなら探す銘柄も「そこそこ良さそう」でOK、という発想でもある。

銘柄を探すときは銘柄をスクリーニングしていきます。とくに重視しているのが売上高営業利益率です

【なごちょうさんのスクリーニング条件例】
①売上高増減率5~20%
②営業利益率8~20%
③PBR0.5~2倍 0.5倍より下でもよいが、最大でも2倍くらいまで
④ROA5~10% 一定の効率的な経営ができていること
⑤配当利回り2.5~4% 一定のインカムゲインがあるか
⑥自己資本比率30~70%

売上高営業利益率は、売上高に対する営業利益の割合だ。これが高いということは、収益性が高いということでもある。

「売上高営業利益率」に着目する理由

「さまざまな会社の決算を見てきましたが、売上高営業利益率を劇的に高めるのは難しい。販売相手はあまり変わらないし、固定費を大きく削減するのも難しい。売上高も急には増えないとなると、1期、2期で激変することはあまりないんです」

売上高営業利益率はどのくらいが目安になるのだろうか。

製造業であれば10%を超えているとかなり優秀です。製造業は土地が必要で、生産ラインや倉庫をそろえて製造原価や販管費も払って、残る利益はわずか。それが10%を超えているとなると『もっと調べてみよう』と掘りがいを感じます」

10%を超える会社は安定した成長が見込める。

「寡占に近い状態であることが多く、ニッチな分野でのトップ企業であることもあります。そうなると大手も参入しづらいはずです」

企業のウェブサイトはもちろん四季報や過去の決算、ときには採用ページなども参照しながら検討していくという。

「ときにはIRイベントなどで競合他社からの評価を聞いたりもします。表立っては聞けないので立ち話などでこっそり聞き、評価が高いようだと『やはりいい会社なんだな』と自信を深めることがあります」

「どんな事業か」をイメージできる銘柄がいい

「IT系が人気ですが、自分が成功することが多いのは製造業や化学。育ちが関係しているのかもしれません」

なごちょうさんが育ったのは、「大田区と足立区を足して2で割ったような街」だという。鉄の焼ける匂いが立ちこめ、板金の音が響く町工場の密集した地域だ。

製造業(銘柄)は不人気だからこそ、割安であることも多い。IT系もポートフォリオに入れてはいますが、どんな事業なのか私の生活からはどうしても想像しにくいんです」

銘柄選びには、その人の個性が出やすい。なごちょうさんのように、イメージしやすい事業や自分が働いている業種を中心に選んでいくのも良さそうだ。

「PER15倍以下、PBR1倍以下」のシンプルな銘柄選び

初心者なら『PER15倍以下、PBR1倍以下』といったシンプルな条件でスクリーニングして、その中から『過去10年売上高が安定して増えている』『売上高営業利益率が10%を超えている』などの条件で良さげな会社を探すのもいいと思います。そうすれば大損することはないだろうと思います

そう言って教えてくれたのは「 三菱鉛筆 」だ。

「ここは営業利益率が10%を超えているし、売上高も2020年以降は安定して伸びています。売上高の53.5%が海外(2023年連結)ですが、ここ最近『ポスカ』というペンが海外のアート界隈で人気だという話もありますし、2024年になって値上げしています」

2024年12月期の会社予想配当利回りは1.73%(2024年2月21日終値で計算)と特別高くはないが、配当をもらいながら値上がりをじっくり待てる銘柄かもしれない。

目先の利回りより、増配の可能性に目を向ける

「配当を重視するなら、減配リスクが少ない銘柄がいいと思います。高配当銘柄として人気だった「 JT 」は2年前(2021年度)に上場来初の減配となり、売り込まれました。30期以上も減配がなかった「 キヤノン 」も減配で値下がりしたことがあります」

高配当で人気な銘柄ほど、減配への反応も大きくなるようだ。

花王 」は34期連続で増配してきましたが、いつか”爆弾”を食らう可能性があります。私ならば、大型ではない不人気な銘柄にも目を向けます」

前回も話に出た「中央紙器工業」もそのひとつだという。同社の予想配当利回りは4%を超えている※。

※2024年2月21日終値は1,469円、2024年3月期の会社予想配当金は60円で、予想配当利回りは4.08%です。

「以前、1ヵ月ほど出来高がゼロの日が続き、上場廃止の危機すらありました。上場を維持するためには投資家に目を向けてもらう必要があります。ちなみに過去20年の配当金推移を見ると、減配はなさそうだと私は判断しています」

配当性向(利益をどのくらい配当に回すかを示す指標)は決して高くなくてもいいと言う。

「むしろ配当性向が低い銘柄ならば増配余地がある、とも考えられます

カエル先生の一言

中央紙器工業などの名証(名古屋証券取引所)だけで上場している銘柄は、日興フロッギーではお取引できません。オンライントレード(日興イージートレード)を使用して、単元株であれば、お取引できます。

地元に着目した「名古屋銘柄」

人の目が届きにくい銘柄にはチャンスもある。そんな考えからの投資スタンスのひとつが、名古屋に拠点を置く「名古屋銘柄」への投資だ。

「私は名古屋在住なので身近に店舗があれば賑わいなどを確認できますし、株主総会にも出席しやすい。「 日本ガイシ 」の総会は自転車で行きました」

同じく名古屋に本社がある「 ヨシタケ 」も、注目している銘柄の1つだ。

「調整弁で国内トップクラスのシェアを持っています。海外へ本格的に拡販を始めたり、M&Aも積極的に行っているので、今後の成長が楽しみです」

ニッチな市場で高いシェアを誇っている企業という点では、愛知県東海市に本社がある「 ユー・エス・エス 」も同様だ。

「国内の中古車オークションでは圧倒的シェアを持っていて、国内最大手。毎年増配を実施しています。半年に1度株主優待も実施していて、大変ありがたい企業です」

カエル先生の一言

ユー・エス・エスは、半年ごとに、100株以上の保有で500円のQUOカード1枚、500株以上で2000円分の三井住友VJAギフトカード、1000株以上の保有で5000円相当のグルメギフト、1万株以上で1万円相当のグルメギフトをもらえます。なお、2024年3月末の株式分割後も株主優待の条件が変更されないため、実質的に株主優待制度の拡充となります。

なごちょうさんのポートフォリオには名古屋銘柄が20社以上。全体の約10%にあたる。

2023年は333万円の配当に

なごちょうさんは兼業投資家。株だけで暮らしていくつもりはないのだろうか。

「それほどお金を使わない生活なので、年間400万円あれば暮らしていけます。年間配当の手取り額が400万円くらいになれば仕事を辞めてもいいかなと思っています」

年400万円の生活コスト、億り人にしては少ない気も……。

「今日はここ(東京・南青山)へ来るので、せっかくだからとイタリアンで3850円のランチを食べました。たしかに美味しいし雰囲気もいい。でも普段は贅沢しないので落ち着かないんです。昨夜は神田の友人宅に泊めてもらいましたが、南青山よりも庶民的な神田のほうが落ち着きます(笑)」

昨年の手取り配当額は333万円。年400万円の目標は遠くない。

保有株が急騰すれば売却して、より割安な銘柄に入れ替えることもあるというが、じっくり保有して値上がりを待つのが基本スタンス。株式投資とのんびり向き合う人にはうってつけのスタンスだ。なごちょうさんのお話を参考に、あなたも「自分なりの日経平均」づくりを始めてみては。