株式市場で「中堅・中小証券」関連株が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は9.2%と、米金融引き締めの長期化観測などから下落した東証株価指数(TOPIX、1.2%安)に対し逆行高となりました(9月22日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
増配や特別配当、自社株買いの発表が相次ぐ
中堅・中小証券関連株が買われたのは、9月期末を控えて相次いだ増配や自社株買いの発表でした。証券会社の収益は市場動向に左右されやすく業績予想を開示しないケースがあります。そのため、中間配当を実施するかどうかについても9月期末にかけて発表される傾向があります。足元の好調な業績(『日本株市場活況で業績好調 「中小証券」関連株が上昇』)や株主還元姿勢もあり積極的な利益還元が発表され物色が膨らみました。
28年3月期まで普通配当に加え特別配当を実施【丸三証券】
上昇率首位の「 丸三証券 」は9月15日、2024年3月期の中間配当について前年同期の2倍となる1株10円の普通配当を実施すると発表しました。さらに24年3月期から28年3月期までの間、普通配当に加えて年間10~30円の特別配当を出す方針を決めました。資産管理型営業に舵を切ったことで収益基盤が従来に比べ安定してきたことなどから内部留保を株主に還元し、資本効率を高めるのが目的だといいます。
中間配当と自社株買いの実施を発表【アイザワ証券グループ】
上昇率2位の「 アイザワ証券G 」も9月15日に2024年3月期の中間配当を実施すると発表しました。配当金は13円と前年同期と同じですが、同時に総額5億円または40万株を上限に自社株買いを実施すると発表しました。株主への利益還元については配当と自社株買いの総額を純利益で割った連結ベースの総還元性向で50%以上を基本方針としています。
日本株の売買手数料の無料化、影響を注視
このほか「 今村証券 」は株主への利益還元の姿勢をより明確にするため、4月に配当方針を「業績及び財務状況を総合的に勘案し、株主の皆さまへの利益還元を行う」に変更しました。「 水戸証券 」は9月15日に中間配当を前年同期の5倍となる10円にすると発表しました。「 岡三証券G 」は3月24日に発表した23年4月から28年3月までの5年間を対象とした中期経営計画で、期間中はPBR(株価純資産倍率)が1.0倍を超えるまで、年間10億円以上の自社株買いを実施すると明記しました。これらの銘柄も買われています。
東証が上場企業に「資本コストを意識した経営」を要請していることもあり、配当と自社株買いを組み合わせるなど積極的に株主への利益還元を進める証券会社が目立ちます。丸三証券のPBRが足元で1倍を超えるなど、還元策は一定の効果をあげています。一方、8月31日にネット証券のSBI証券と楽天証券が、日本株の売買手数料を無料にすると発表し、手数料の引き下げ圧力がかかるのは避けられないとみられています。手数料引き下げ圧力の高まりが株主還元に影響しないか、しっかり見極めて投資先を決めていきたいですね。