株主優待の豆腐で数年しのぐ
父親からの資金で信用取引での損失を埋められても、当座の生活費が足りないことは変わりません。売れる株は売りました。残ったのは、例えば50万円から10万円に値下がりして売るに売れないような株ばかりです。
田舎へ帰ろうかと思ったときに届いたのが株主優待でした。優待券はもちろん、お米、缶詰、海産物――いろんなものが届くんです。
それまでも優待は届いていましたが、値動きばかりを気にして優待はあまり気にしていなかったんですね。
値下がりした株でも、持っていれば株主優待は届きますから。こうして、優待品を主食にして暮らすことになったんです。
さまざまに届く優待品のなかでもいちばん役に立ったのは豆腐でしたね。今はもう株主優待をやめてしまいましたが、「 篠崎屋 」というお豆腐屋さんの株を持っていたんです。
豆腐は栄養が豊富ですからね。篠崎屋のお店は、自転車で30分ほどかかるところにありました。そこへ優待券を持っていき、豆腐やこんにゃくを買っておかずにして、数年間をしのぎました。
優待のなかには映画が見られるものもあります。当時、木場にある映画館まで地下鉄で行ったことがあります。行きの電車賃は240円でした。映画を楽しんだあと、また240円も払うのはつらいですから、1駅歩いたんです。でも、1駅歩いても電車賃は変わらない。もう1駅歩きましたが、まだ240円のまま。さらに歩くと200円になったのでやっと地下鉄に乗ることができました。
そうやって歩いても40円しか得しないんだったら、いっそのこと自転車で移動しようと。それで、今のようにどこへでも自転車で行くスタイルになりました。