株式市場で「中小証券」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は4.5%と、円高の一巡感などから上昇した東証株価指数(TOPIX、0.9%高)を上回りました(7月21日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
中小証券、2023年4~6月期決算好調
中小証券関連株が買われたきっかけは、相次いで発表された2023年4~6月期の決算速報や決算発表でした。証券会社は業績予想を開示していない企業が多く、投資家へ迅速な情報を提供するために、決算発表に先立ち「決算速報」を開示しているケースがあります。「 岩井コスモ 」が7月14日に発表した2023年4~6月期の連結決算速報は、売上高にあたる営業収益が前年同期比24%増の57億円、営業利益が73%増の16億円と大幅な増収増益、また、経常損益は43四半期連続で黒字となりました。
4~6月の日経平均株価は大幅に上昇し、6月16日には3万3706円と1990年3月以来、およそ33年ぶりの高値を更新。商いも活況で東証プライムの売買代金は5月31日に7兆円に迫りました。4~6月平均の売買代金は3.4兆円と前年同期比15%増えました。市場では、決算発表前に開示された決算速報に反応し、株式相場の活況を受け収益が改善しているとの連想から関連銘柄にも買いが広がりました。
営業損益が黒字に転換【光世証券】
上昇率首位の「 光世証券 」は大阪市中央区北浜に本店を構えています。7月19日に発表した2023年4~6月期の単独決算の営業収益は前年同期比7倍の3億3200万円、営業損益は1億7900万円の赤字から8300万円の黒字に転換しました。活況な株式相場を背景に顧客の投資マインドに復調がみられ、コンサルティング部門の受け入れ手数料が2.4倍になりました。自己売買部門の損益も大幅な黒字に転換しました。
営業利益が88%の大幅増【今村証券】
上昇率2位の「 今村証券 」は石川県金沢市に本店を構えています。7月21日に発表した2023年4~6月期決算速報の営業収益は前年同期比34%増の13億円、営業利益は88%増の5億円でした。株券や受益証券の受け入れ手数料が増加したことなどから大幅な増収増益となりました。
株式相場の変動を受けやすいことを念頭に
そのほか、「 水戸証券 」は7月18日に発表した2023年4~6月期決算速報で営業収益が前年同期比34%増の35億円、営業損益が2億円の赤字から5億円の黒字に転換。「 丸三証券 」は7月18日に発表した23年4~6月期決算速報の営業収益が18%増、営業利益が6.9倍の8億円に増加。これらの銘柄も買われました。なお、岩井コスモホールディングスは、7月14日の決算速報の後、7月21日に同額の決算を発表。また、今村、水戸、丸三の各証券会社は7月28日に決算発表を予定しています。
中小証券の収益は、個人を中心とする投資家からの委託手数料のウエートが比較的高いため、株式相場の変動をより受けやすいという特徴があります。日本株市場は、東京証券取引所が上場企業に資本コストや株価を意識した経営を促したことなどから、海外投資家が日本株に注目する動きが続いています。また、日銀が金融緩和策を維持する姿勢を続けていることも日本株相場を押し上げる一因になっています。中小証券への投資にあたっては、株式相場の動向そのものを注視していく必要がありそうです。