株式をめぐって、買い手と売り手の様々な思惑が交錯する株式マーケット。時には「企業が別の企業の株を買う」というケースもあります。今回はその代表例であるTOB(公開買付け)について、わかりやすくお伝えします。
TOBって何?
TOBはTake Over Bidの略で、株式の「公開買付け」のことを指します。わかりやすく言うと、「A社の株を1000円でたくさん買い集めたいので、賛同してくれる人は応募してください!」と募集をかけることをTOBと言います。
この手法は、あらかじめ買取価格や株数、期間を公開したうえで、株式市場を通さずに株式を買い取りたいときに活用します。M&A(合併・買収)の手法の一つで、企業の経営権などを取得するために、不特定多数の株主から株を買い集める目的で実施することが多いです。
株を買い集めると段階的に「経営権」が握れる
そもそも株式会社の株を買い集めると、どのようなことができるようになるのでしょうか。株主による権利は細かく分かれますが、ここでは持株比率による主な権利をご紹介します。
たとえば10%を保有することができれば、裁判所に対して会社の解散を請求する権利を持つことになります。また、33.4%を保有すれば、株主総会の特別決議(事業譲渡や合併や会社分割といった組織変更の決定など)を単独で否決することができるようになります。つまり、保有する割合が増えるほどに、その株式会社の経営権が握れるようになります。
このように多くの株数を集めると、経営を大きく左右する権利を有することになります。このため、株主に対して公平性・公正性を確保することを目的として、多くの株を買い集める際は、TOBが義務付けられているのです。
株式マーケットにおける「買い」とどう違うの?
株式マーケットで買い集めるのとTOBはどう違うのでしょうか。一般的に、TOBで株式を買い集めるときは、グループ内の子会社を完全子会社として非上場化させたい場合や、M&Aを目的とした経営権の取得時など、大量の株式を募集することが多いです。
一般投資家と同じようにマーケットで買いを入れてしまうと、最初は安く買えるかもしれませんが、自分の買い注文によって株価がどんどん上昇してしまうことがあります。これにより、予定していた株数が買えなかったり、割高に取得してしまうリスクが高まります。
また、TOBには「5%ルール」というものがあります。これは取引市場外の株式取得により株式の所持率が5%を超える場合、TOBを行わなければならないとする規制です(例外もあります)。先ほどお伝えしたように、大量に株式を買い集めることで経営権に影響が及んだり、株価に与える影響も大きくなります。このため、あらかじめ買付価格、買付予定数、買付期間などの条件を公告する(広く一般に知らせる)ことが必要となります。
株主の選択肢3つ
TOBが公表された際に、その銘柄を持っている株主が取れる選択肢は3つあります。
①TOBに応じる
②TOBに応じずに市場で売却
③株式を保有し続ける
①TOBに応じる
公表された条件に応じる場合は、応募するために「公開買付代理人」となっている証券会社に口座を開く必要があります。そして保有する株式をその証券口座に移管することになります。
当社が「公開買付代理人」となった銘柄の場合、どのような手続きが必要なのか具体的に見てみましょう。
口座をすでにお持ちの場合は、日興イージートレードで直接お申込みください。あるいは、公開買付け専用フリーダイヤルへお問い合わせいただき、「公開買付説明書」「公開買付応募申込書」をご請求ください。
当社に口座をまだお持ちでない方は、口座開設後に株式を預けている他証券会社、信託銀行等にて、当社への「株式の口座振替」を依頼してください。
0120-250-959
平日9:00~17:00(土・日・祝日を除く)
②TOBに応じずに市場で売却
TOBが公表されると、株式市場での株価が買付価格に近づくケースが多くみられます。その場合は、わざわざTOBに応じなくとも、そのまま株式市場で売却することも可能です。ただし、買付条件を満たさない場合があること、またはTOBそのものが中止となることもあること、あるいは後日、TOBでの買付価格が引き上がることもあります。こうした場合は、結果としてTOB価格より低い価格で売却してしまう可能性がある点には注意が必要です。
③株式を保有し続ける
株式を保有し続けることも可能です。ただ、TOB成立後に上場廃止となるケースでは、信託銀行で換金手続きが必要になるなど、さらに手間がかかる場合がありますので注意しましょう。
TOBがあっても上場廃止にならないケースもあります。その場合は、TOB成立後は株価が元の水準に戻ることもありますので、その可能性も考えて保有したままでいるかどうか検討してください。
日興フロッギー(キンカブ)の取り扱いについて
日興フロッギー(キンカブ)でTOB対象銘柄を持っていた場合はどうなるのでしょうか。
キンカブは以下のいずれかの事由に該当することとなった場合は、当該事由が解消されるまでの間、キンカブ取扱銘柄の対象外となる場合があります。
ⅱ)公開買付期間中の銘柄(当社が公開買付けの代理人あるいは復代理人になった場合)の売却注文および買付注文
ⅲ)当社が売買管理上、売買の自粛が必要と判断した銘柄の売却注文および買付注文その他、当社が適正な事務処理や取引を維持できないと判断した場合等、やむを得ない事情により売買注文の受付を停止する場合があります
(金額・株数指定取引説明書より)
つまり、TOBとなる銘柄のうち、当社が公開買付代理人または復代理人になった場合は、TOB期間中は売買ができません。また、そのほかの場合でも、当社が自己での取得が困難と判断した場合などにおいては、同様に売買ができなくなる可能性があります。ご注意ください。
「株式会社」のルーツを体現した制度
企業がほかの企業の株を買うときに実施する「TOB」。仕組みはすこし複雑ですが、持ち株比率に応じて経営権が持てるという「株式会社」の特徴がよくわかる制度の一つと言えそうですね。