株式市場で「宇宙開発」関連株が買われています。QUICKが選定する関連株の平均上昇率は10.5%と、利益確定目的の売りなどで小幅に下落した東証株価指数(TOPIX、0.7%安)に対して逆行高となりました(5月26日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
ispace、ミッション1失敗の影響は「軽微」と公表
宇宙開発関連株が買われたきっかけは、宇宙スタートアップ企業が発表した決算説明会での説明でした。5月19日にispace(アイスペース)が発表した資料では、4月に民間で世界初となる月面着陸を目指した計画「ミッション1」に挑戦し失敗したものの、業績への影響について「軽微」と説明しました。2024年に計画している「ミッション2」、25年に計画している「ミッション3」の打ち上げスケジュールも変更予定はないと強調しました。
4月26日のミッション1で月面着陸に失敗したのを受けispaceの株価は急落しましたが、上記発表を受けて急回復しました。ミッション継続による技術の進展や宇宙ビジネスへの需要の強さが改めて意識され、関連株にも物色が広がりました。
複数ミッションの並行開発で持続可能な事業に【ispace】
1回のミッションの失敗による影響が大きい宇宙ビジネス。上昇率首位の「 ispace 」は複数ミッションを同時並行で進めることにより、事業の持続可能性を確保しています。固定型の着陸船「ランダー」や移動型の「ローバー」にスポンサーとしてロゴを掲載する「パートナーシップ」、顧客の荷物を預かり月周回軌道や月面まで輸送する「ペイロード」などのサービスを収益源としています。
衛星機器の開発や宇宙ロボティクスプロジェクトに参画【川崎重工業】
上昇率2位の「 川崎重工業 」は次世代大型ロケット「H3」などで大気中の風圧や摩擦熱から衛星を守るカバー「衛星フェアリング」の設計・製造を担当しています。将来の宇宙輸送を担う再使用型宇宙輸送機の開発や宇宙ステーション日本実験モジュール、宇宙往還技術試験機、技術試験衛星Ⅶドッキング機構などの宇宙ロボティクスプロジェクトにも参画してきました。宇宙飛行士の養成・訓練などの有人宇宙技術にも取り組んでいます。
世界の宇宙産業の市場規模、2040年に100兆円超の試算も
そのほか、「 三菱重工業 」はロケットエンジンやロケット・衛星の姿勢制御装置、宇宙ステーション、宇宙環境利用実験装置などを製造・開発。「 三菱電機 」は人工衛星をはじめ衛星の運用に欠かせない地上管制設備や大型望遠鏡などの事業を展開。「 NEC 」は標準衛星システム「NEXTAR」やマイクロ波放電式イオンエンジン、地球観測、観測データ提供サービスなどを展開。これらの銘柄も買われています。
世界の宇宙産業の市場規模は2040年に100兆円超と、22年の3倍になるとの予想もあります。これまでは国が主導していましたが、世界でispaceなどのスタートアップ企業による参入が相次いでいます。月や火星など企業によって開発対象が異なるほか、ロケットや人工衛星の製造や打ち上げ、衛星データの活用、衛星テレビ・ラジオ・インターネットなど通信事業、宇宙ごみ(スペースデブリ)の回収など宇宙開発事業は裾野が広いのも特徴です。ロケット打ち上げや着陸の成否だけでなく、宇宙を利用する技術の進展度合いを見極めつつ投資先を検討したいですね。