どうして自分は、あの人みたいにうまくできないんだろう。
いまだに他人と比べて「あの人はいいな」と思って落ち込んでしまう癖が拭えません。キラキラとした姿を見るのが嫌で、思わずSNSをミュートしてしまうことも(小さい……)。
この負のループ、どうにかして断ち切れないものか……。
今回お話を聞いたのは、バラエティ番組でも活躍中のアーティスト・青山テルマさん。メディアではいつもポジティブで笑顔全開な彼女ですが、「デビュー後てっぺんからどん底まで転げ落ちた」とのこと。一体何が……?
記事提供:新R25
「私たちが手に入れるべきは、“落ち込まないコツ”じゃなくて……」
今日はいつもポジティブなテルマさんに、「落ち込まないコツ」を教えていただきたいのですが……
うーん……私べつに、ポジティブでいようと思ったことないですけどね。
そうなんですか!? こんなに明るいのに!?
私からすると、落ち込んだり、そんな自分が嫌になったりするのって超日常ですから。
そこをなくすって、普通に無理じゃないですか(笑)?
素で明るい方だと思ってたので、けっこう衝撃なんですが……!
いや、むしろ「落ち込まないコツ」とか一生答え出ないと思ってます(笑)。
私たちが手に入れるべきは、「落ち込まないコツ」じゃなくて「落ち込んだ自分とうまく付き合うコツ」なんですよ。
残酷な話なんですけど、自分だけは自分から一生消えられないんで。
消え……え?
恋人も、家族も、友だちもいつかは自分の前から消えるじゃないですか。
でも、自分は一生自分として生きていかなきゃいけない。
であれば、落ち込んだ自分を受け入れて、仲良くなるコツを考えたほうが生きやすいと思います。
“落ち込む”とは、「理想の自分」に気づくための時間
でも、落ち込んでる自分を肯定的に捉えるって無理じゃないですか?
まあ、 サラッと言ってみたけど難しいよね(笑)。
でもね、「落ち込む」っていうのは、きっと何かを変えたいと思っている“サイン”なの。
落ち込んだときって、必ず悩みのなかに「理想の自分」がいるんですよ。
もっとこうしたいなとか、ああすればよかったなとか……なんでこの恋うまくいかないんだろうとかね(笑)。
だから「落ち込む」って、もう一度「理想の自分」を確かめるための時間だと思うんです。
落ち込んでいる自分にこそ、人生を好転させるヒントが隠れていると。
もちろん友だちと喋ったり、ドラマを観たりして気を紛らわすこともできるけど……
いつかは根本的に悩みの種を解決しなくちゃいけないんですよ。結局自分しか変えられないからね、自分のことは。
そういう意味では、落ち込むというのは、「最高の材料」だと思いますね。
「誰かのせい」にしている限り、いつまでも落ち込みつづける……!?
ほかにも、落ち込んだ自分との向き合い方のコツってありますか?
「人のせいにしない」。
人のせいにしてる限り、「落ち込みループ」から抜けだせることはないですね。
私が人生で一番「落ち込みループ」にハマってたのは、「そばにいるね」で1位を取ったあとだったんですね。最高潮に高まったまわりの期待に、応えつづけられるかどうかという局面。
当時は19歳だったので、プレッシャーに押しつぶされそうで、つねに落ち込みがちだったんですよ。
「そばにいるね」のときって19歳だったんですか……それは苦しそうですね……
でもそうやって落ち込んでいるとき、自分がすべて“人のせい”にしてることに気づいたんですよ。
誰かに「こっちのほうがいいんじゃない?」「いい曲じゃん!」と言ってもらえたのに、結果がダメだったときに「ほら、だから言ったじゃん」って。
そうやって「相手のせいにする」ことがクセになってたときこそが、私は“どん底”だったと思うんですよ。
だって、自分に一切原因がないのかといえば、絶対そうじゃないでしょ?
勇気を出して主張して、立ち向かう選択肢もあったはず。それを怠って「いざとなったら人のせいにできるようにしてた」だけ。
弱音を吐くのは必要なことだと思うけど、ずっと人のせいにしててもループから抜け出せなくなっちゃう。だから、「人のせいにしない」はすごく意識しています。
誰かのせいにしない……でもただでさえ落ち込んでいるときに「自分のせいにする」って、余計落ち込んじゃいませんか……?
そこでポイントになるのが、さっきの「理想の自分」の考え方です。
自分を追い詰めるんじゃなくて、解決策や次のヒントを探すために、整理すればいい。
「自分のせいにする」ことは、自分を幸せにすることでもあるんですよね。
人と比べてしまうのは、自分が成功したい理由をわかっていないから
あと……まわりと比べて落ち込んでしまうことが多いんですけど、これっていい向き合い方があるのでしょうか……?
いや、めっちゃわかります。今はみんなSNSをやっているから、羨ましかったり、妬ましかったりする瞬間も多いよね。
「失敗すればいいのに」とか思う気持ちも、正直わかる。私もそう思ったことはある。
でも、「その人が失敗する」=「自分が成功する」では全然ないってこともわかってるんですよね。
自分の現在地は何も変わってないのに、何をよろこんでんの? って、だんだん気づいてく。
グサグサに刺さってます。
誰かと比べちゃうのって、まだ「自分がどうありたいか」がわかっていないんですよ。
「自分がどうありたいか」がわかってる人はそれを叶えることがすべてだから、他人がどうとか本当にどうでもいいの。
そこがわかってないから、人と比べて「まわりよりはまだマシ」って思おうとしちゃう。
でも、落ち込んだ自分と向き合って「理想の自分」がしっかりわかっていくと、だんだん人と比べなくなっていくから。
人を超すことが本当にやりたかったこと? 違うよね。「理想の自分」がそれぞれ違うことに気付けば、比べるべき“ライバル”なんて誰もいないことがわかるんですよ。
誰かに合わせてカメレオンにならなくていい。「無理矢理」をやめてみること
この1時間終始正直な言葉で話してくださって……
テルマさんがつねに「自然体」であることにちょっと驚いてます……!
ああー、そう言ってもらえるのはうれしい! じつは私が意識してる最後の「落ち込んだ自分とうまく向き合うコツ」は……「人に合わせないこと」なんです。
私が20代で一番気持ちが楽になったのって、「自分が好きな自分でいよう」と割り切れたことだったんですよ。
もともとは、落ち込んでいる自分が嫌で、イケてる人と友だちになってみたり、人が喜びそうなことをして盛り上げたり、カメレオンのように自分をいろんな色に染めていて。
でもね、そんな自分で何かいい出来事があっても、あんまりうれしくなかった。それってやっぱり、無理してたからなんですよね。
だから、あなたも無理に「ポジティブになろう」って考える必要はないんですよ。
なんか今って「ポジティブになろう!」みたいな声が多すぎて、むしろプレッシャーになってる気がしません?
そうかも……
本当に自分を好きでいたいなら、ある程度の適当さも必要だし、ある程度の逃げも必要。無理矢理やってることって大体いつか壊れていってしまうから。
それより、自分が本気で守りたいものを守ったほうが絶対に楽しいよ。それが、一番「無駄な落ち込み」をなくせる方法だと思う。
「無理矢理やっていないか」は自分の心の叫びに気付くヒントになりそう……! 本日はありがとうございました!
〈取材・文=いしかわゆき(@milkprincess17)/編集=サノトモキ(@mlby_sns)/撮影=長谷英史(@hasehidefphoto)〉