日本ハム 新球場ビジネスを展開

ニュースの裏事情/ 日本証券新聞

テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、「北海道日本ハムファイターズの新球場」に関するニュースの裏側について、ご紹介します。

ネーミングライツがビジネスに直結

WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)の高揚が冷めやらぬ中、3月30日にプロ野球が開幕しました。他球場に先駆けて開幕戦が行われたのが、北海道日本ハムファイターズ(以下、日本ハム)の新球場「エスコンフィールド北海道」です。これまで、日本ハムは札幌市が保有する札幌ドームを本拠地としていましたが、これからは自前の球場が本拠地となります。

「これで日本ハムは、球場ビジネスを自身で展開できる。札幌ドームにはこれまで、リース料9億円に加え、運営費などもろもろ20億円以上を拠出しており、今後はこの負担がなくなる。また球場が稼ぐ飲食やグッズ販売の利益も全て得られる。そうした計算で日本ハムは自前の球場を建てた。それだけではなく、球場を含む周辺地域を再開発し、『北海道ボールパークFビレッジ』と名付けた本格的なボールパークのビジネスを展開するもくろみだ」(スポーツ紙デスク)。

象徴的なのがネーミングライツ。不動産の総合開発事業を手掛ける「 日本エスコン 」が史上最高額の10年間50億円を拠出しました。これで日本エスコンの社名が周知されるだけではありません。同社はボールパーク開発にも関わり、パーク内に分譲マンションを建て、既に118戸が全戸完売となりました。

ボールパークを起爆剤に消費アップを狙う

このボールパーク構想に乗ったのが、球場の地元となる北広島市(北海道)です。200億円規模を拠出し、周辺地域の道路や下水道などインフラ整備や集合住宅建設を行うといいます。自治体が熱心なのは、ボールパークを起爆剤に住民を増やして税収を上げ、ボールパーク来場者からの消費が税収につながることを見越してのもの。地価などは既に上がっています。

関連企業には、球場内で家族で観戦するゾーンを担う「 大正製薬HD 」、ペットとの観戦ゾーンを運営する「 ユニ・チャーム 」、パーク内の農業学習施設を運営する「 クボタ 」が挙げられます。

その他にも、興味深いのは金融関連です。三井住友カードは球場内のキャッシュレス化を担います。「 三菱UFJフィナンシャル・グループ 」傘下の三菱UFJ銀行も、将来的にNFT(コピーや改ざんが不可能なデジタル資産)をボールパークで展開したり、応援選手への「投げ銭」の仕組みの導入を想定しているといいます。

ただ、伸び盛りの取り組みには、やっかみもつきものです。駅から球場の間は禁煙ゾーンで、喫煙所がないと批判されていましたが、直前に「 JT 」(日本たばこ産業)が喫煙所を6ヵ所設置。事なきを得ました。

(出典:日本証券新聞)