【ワンキャリア/対談編】クチコミが仕事選択を変える!

御社の決算、教えてください!/ 妄想する決算

音声プラットフォームVoicyの決算10分解説で人気の「妄想する決算」さんが、企業を分析、対談する動画「御社の決算、教えてください!」。今回は、株式会社ワンキャリアの長澤副社長への突撃取材を公開します。

掲載社数をどの様に増やすのか

妄想:現在、ワンキャリアはトラフィックに対して掲載社数が少ないということですが、今後どのように掲載社数を増やしていくのでしょうか?

トラフィック:ウェブマーケティングにおいて、ユーザーがウェブサイトに訪問した回数・セッション数などのアクセス全体の数

長澤さん:法人の取引先の数を増やしていくことは、ワンキャリアのビジネスのKPI(重要業績評価指標)になっています。

基本的な戦略としていくつかありますが、まず1つ目は営業力・販売網の強化です。直販の営業部隊を中心に人員を増やし、更に代理店・販売パートナーとの販売チャネル構築が重要だと考えています。

2つ目は、広告宣伝活動です。今まで我々は大きな企業様や採用人数の多い企業様との取り組みが多かったのですが、取引社数が増えるにつれて、地方や採用人数が少ない企業様にも裾野が広がってきています。ワンキャリアの認知を高めるためにしっかり宣伝活動を強化していく必要があり、昨年に引き続き今期も投資をしていきたいと思っています。

妄想:データ分析が強みのひとつだと思いますが、それを利用してもらうためにカスタマーサポートの拡充が必要になると思いますが、いかがでしょうか?

長澤さん:これまで手が回っていなかったサービス導入後のフォローやお客様の採用の成功に向かって伴走するチームが必要と考え、昨年「カスタマーサクセス部門」を立ち上げました。

カスタマーサクセス部門はお客様が我々のサービスを利用する際の使い方や、成功パターンをお伝えしています。もしくは、なかなか手が回らなくて使いこなせない、リソースが足りないというお客様に、我々がそのリソースのお手伝いをしています。

新卒・中途採用方式に変化

妄想:「ONE CAREER PLUS」は転職を視野に入れて就職活動をする求職者が増える中、重要なサービスになると思います。しかし、企業側からすると、新卒のデータから転職までのデータを掲載するとなると、せっかく採用した人材が転職してしまう可能性を感じるかもしれません。こうしたことから掲載を嫌がられるケースはありませんか?

長澤さん:現時点でその様な声をいただいた事はありません。おっしゃるように、新卒求職者も転職を視野に入れて就職活動することが増えています。基本的には、求職者は2回目、3回目の転職も視野に入れており、終身雇用を前提に就職活動をしている求職者は少なくなっていくと思っています。

だからこそ、次にどこに行けるという情報を、就活生、求職者は求めています。我々がその情報を提供していった上で、1社目を決めていただいた方が求職者と企業にとって、お互いにWin-Winになれるーーというのが我々の基本的な姿勢です。

知っていようが知っていまいが、将来的には転職はするもので、流動性が高まることは止めることができない。これは掲載企業の人事の皆様もご理解しています。その上で、我々のサービスを使いこなして、「2社目はこんなにいいところに行っています」「こういう会社からも人が入ってきています」と流動性を逆手に会社をアピールする企業もあります。今後はこの様な使い方がメジャーになると思いますし、今のところネガティブな声よりも、ポジティブな声をいただく事が多いです。

妄想:新卒の採用の方式も変わる可能性はありますか?

長澤さん:長い目で見ると、徐々に変わっていく傾向にあると思います。ただ、短期、5年、10年というスパンで申し上げると、一括で新卒を採用していく流れはそこまで大きく変えられないと思います。

就活生・企業も共に今の形にある程度アジャスト(適応)されています。企業側からすると効率が良く一括で採用できて、採用活動も一極にリソースを集中できます。

一方、就活生も勉強、部活動、サークル、いろんな活動がある中で、ずっと就職活動をするよりは一極でやったほうが型にはめやすい。新卒一括採用のやり方が固まってしまっているので、採用方式が全部変わるというのは、マーケットの構造を考えると難しいと思います。

ただ、先ほど申し上げたように流動性が上がっている、転職を前提にしている就活生が増えている中で、就職活動においても1回で決めてしまわず、少し長い時間をかけてしっかり検討すべきです。

その一方で、一括ではなくて通年採用ができないのかと言うと、そうでない理由も見当たりません。『今までがそうだったから』と言うことに踏襲されている部分が大きいと思いますので、徐々には変わって行きますが、すぐには変われないという構図だと思います。

一方、我々が目指している世界では、HRマーケット全てを対象にサービスを考えています。人が働く時に、その意思決定に携われるようなデータを一極に集めて、求職者・企業の意思決定に使えるサービスを提供します。新卒から中途、アルバイト、派遣まであらゆる雇用形態に区切りはなく、全てのキャリアが線でつながっていくものだと思います。

HR:「Human Resources」の略で、人的資源全般に関係する業務

今後の投資戦略

妄想:財務的な余力も大きいですが、開発や拡張させたい領域・サービス等はありますか? あるいは、M&A等の検討ポイントについてお伺いしてもよろしいでしょうか?

長澤さん:足元の余剰資金でどこに投資するかというと、一番は人に投資します。我々はウェブのプロダクトを展開していますが、サービスを開発するにしても、プロモーションを打つにしても、全て人が関わってきます。このため、人件費への投資が中核になってくると思います。

良いものを作るために良い人を採用する、雇い入れることも大切ですし、先ほど申し上げたような販売に関しても、自社の営業力を強化するために営業の人間を採ることが重要になってきます。

一方で、M&Aに関しても視野に入れて検討しています。現時点ですぐにどこか買収の話を出せるかというと、そういう段階ではありませんが、常に選択肢は考えております。

既存のビジネスを拡張するためにシナジーのある領域を中心に検討していますが、全然関係ない領域をM&Aをして事業を多角化していくかという考えはありません。あくまでも、本業としているHRのビジネスの地盤を固め、将来をつくる良いお話があれば、ぜひ検討したいと思っています。

売上100億円の見通しは?

妄想:2026年の目標として、売上高100億円、営業利益率30%を掲げていますが、そのころに「ONE CAREER PLUS」が、新卒時に利用したユーザーが今度は転職して……というステージで、利用率が上がっていくといった見通しでしょうか?

長澤さん:そういった側面も一部織り込んでいますが、基本的には2026年時点ではまだ新卒が主力だと思っています。現時点においても新卒領域での売上が大半を占めており、引き続き成長を牽引して100億をつくっていく前提は変わらないと思っています。

妄想:マーケットの大きさとしても中途採用の領域が非常に重要になると思いますが、どのあたりから本格的に売上が上がるイメージでしょうか?

長澤さん:いつの時点でどのぐらいという金額まではお伝えする事が難しいですが、中途採用はしっかり腰を据えて投資しなければならない領域だと考えています。サービスのローンチは2021年ですが、そこから数年の投資期間が必要だと思います。

今は焦って売上を立てるフェーズではなく、しっかり良いサービスを作り込んで投資をして行く事が重要です。短期的に小さな売上を取るというより、マーケットを変えるような大きなサービスに育てていく思想でやっています。

妄想する決算の総括

長澤さんとお話ししてみて、今後2026年の目標である、売上高100億円、営業利益率30%という目標に対しては、新卒採用のマーケットを主力として成長していく話しを伺いました。そのために今後、営業人員を増やしたり、カスタマーサクセスチームを立ち上げたり、広告費を増やし、中~小規模の顧客をしっかり獲得できるのかに注目です。

あとは、長期的には転職サービスが重要です。現状は、求職者を集めている段階ということですから、集客がしっかり進んでいくのか確認していきたいと思います。

妄想する決算総括/気づき
Q.掲載企業を増やすには?
A.販売網の増加と広告宣伝を強化
ポイント①カスタマーサクセスの人員増加と販売チャンネル(代理店)の強化
ポイント②地方や採用数の少ない中小企業へ裾野を広げる
Q.新卒・転職採用市場の今後?
A.短期的には大きく変わらないが、長期的には採用方式や転職の意識は大きく変わる
ポイント①就活生も企業側も今の新卒一括採用にアジャスト(適応)しているため、急には変わらない
ポイント②新卒・転職市場の流動性は年々上がっており、通年採用でない合理的な理由がない
Q.2026年売上高100億円の達成イメージは?
A.新卒領域が主力サービスとしてあり牽引
ポイント①現時点でも新卒領域が大半を占める
ポイント②中途領域はまだ就活者・掲載企業を増やすことに注力。マーケットを変えるサービスに育てる局面
ポイント③将来的にはHRマーケット全てを対象にサービス展開

「妄想する決算」さんの詳しい解説から対談まで見られる動画はこちらから!

長澤有紘さんプロフィール
取締役副社長
京都大学大学院農学研究科卒業。2011年にIT系ベンチャー企業に入社。WEBマーケティング業務、セールス業務に従事した後、2014年に株式会社トライフに入社。2015年よりワンキャリアの取締役COOとして、マーケティング、開発、営業の各部門の事業責任者を歴任した後に、2019年に管理部門管掌取締役に就任。2020年に取締役副社長に就任。
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