元・生産性オタクが綴る「4000週間しかない生涯時間」の本当に豊かな過ごし方とは? やることリストだらけの日常に疲弊気味のあなたに特にオススメです。
生産性の罠から逃げろ! 「決め打ち」で限りある時間を豊かに
誤解を恐れずに言えば、テーマは「時間管理をあきらめる」です。あれもこれもはできない。「あきらめる」の語源は”明らかに見る”こと。生産性の向上には限界があると認め、余暇時間まで忙しく過ごそうとするその矛盾に気づくーー。現代人が陥りがちなタイムマネジメントの業(?)から解放されるような読後感がありました。
特に印象に残ったのは、”たくさんの手持ちカードこそが決断力を鈍らせる”というくだり。筆者は「理想の人に会うまで結婚しない。妥協しない人」の例をあげ「実を言えば、妥協した方がいいに決まっている。いつまでも先に進めないという残念な状況に陥るだけだ」とユーモアたっぷりに斬ります。
これは仕事にも通じることで、最大限に能力を発揮するためには選択を絞りどこかに腰を据える必要があるとも。チャンスは多ければいいというものではありません。筆者は「これしかない」状況に持って行く方が人生の満足度は相対的に高まるとのデータも提示します。なにしろ人生は4000週間しかないのですからね。
作者自身が元・生産性オタクだっただけにワークライフバランスの罠にはまり、右往左往する人への視線も優しい。
「即レスすればするほど無駄なやりとりが増えていく」「『今ここにいる』マインドフルネスは不断の努力が必要で、やればやるほど『今ここ』から離れていく」「郵送で3日待つのは我慢できても10秒かかる重いサイトには我慢できない」など、洒脱さの入り混じった筆致にニヤリとしてしまいます。
従来のタイムマネジメント本にしっくりいかないものを感じた人ほど得るものが多いはず。