株式市場で「宅配便」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は5.5%と、利益確定目的の売りなどから小幅に下落した東証株価指数(TOPIX、0.6%安)に対して逆行高となりました(2月3日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
佐川急便、宅配便の値上げを発表
宅配便関連株が買われたきっかけは、1月27日に、物流大手SGホールディングス傘下の佐川急便が発表した宅配便の値上げです。宅配サービス「飛脚宅配便」などの運賃を4月1日から、引き上げるとのこと。料金改定は2017年以来です。
佐川急便は、値上げの理由として、「コスト上昇」、「2024年問題」、「サービス向上」の3点を挙げています。「2024年問題」は、トラック運転手の労働時間が、2024年4月から、「上限なし」から「年960時間」へと上限が設けられることで、配送が滞ってしまう可能性があるという問題です。物流業界だけでなく、社会経済全体に影響する大きな環境変化で、労働環境の改善が大きな課題となっています。
佐川急便が、値上げを発表したことで、同業他社も値上げをしやすくなり、収益改善につながるとの期待から関連株の買いを誘いました。
顧客の声で物流を高度化【SGホールディングス】
上昇率首位の「 SGホールディングス 」は、宅配便のセールスドライバーが顧客から得たニーズや課題を解決することをビジネスモデルに掲げています。グループやパートナー企業の経営資源を組み合わせ、物流ソリューションを高度化していく方針です。
EC荷物の取り扱いを開始【福山通運】
上昇率2位の「 福山通運 」は、自社の倉庫ネットワークを活用し、顧客の物流を受託する一貫輸送を推進するなどして、貨物輸送量の増加に取り組んでいます。EC(電子商取引)市場の拡大を受け、2022年9月にはEC荷物を集荷し日本郵便に配達を委託する契約を結びEC荷物の取り扱いを開始しました。
値上げ浸透するか、春闘の賃金交渉など注目
そのほか、「 セイノーホールディングス 」は、「カンガルー特急便」の宅配サービスを中核とする輸送事業や自動車販売事業、物品販売事業などを展開。「 ヤマトホールディングス 」は、宅配便サービス国内トップで、2月6日に、4月3日から料金を引き上げると発表。「 トナミホールディングス 」は、輸送から倉庫運営、通販物流などの事業をワンストップで請け負う3PL(サード・パーティー・ロジスティクス)の先駆けで、「パンサー宅配便」ブランドの宅配サービスも手掛けています。これらの銘柄も買われています。
原油価格の高騰は一服しつつありますが、燃料費や人件費の負担増は物流会社共通の課題です。また、物流の2024年問題も控えており、人材の確保やシステム高度化のために運賃の値上げは欠かせません。一方で、消費者が値上げを受け入れなければ、値上げした企業は顧客離れに直面しかねません。現在進んでいる春季労使交渉(春闘)で物価上昇率を上回る賃上げが実現するかどうかが、物流各社の値上げ浸透のカギを握っているといえそうです。