株式市場で「シリコンウエハー」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は14.4%と、米連邦準備理事会(FRB)の利上げペース鈍化観測などから上昇した東証株価指数(TOPIX、3.3%上昇)を大きく上回りました(11月11日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
2022年のシリコンウエハーの出荷面積、前年比4.8%増の見通し
シリコンウエハー関連株が買われるきっかけになったのは、半導体業界の国際団体SEMIが7日に発表した2022年の半導体向けシリコンウエハーの出荷面積の予測でした。出荷面積は前年比4.8%増の147億平方インチと過去最高を記録する見通しです。シリコンウエハーはコンピューターや通信機器、家電などあらゆるエレクトロニクス製品の重要な部品である半導体の基本材料です。
SEMIによると2023年は世界的な経済情勢の悪化で鈍化するものの、データセンターや自動車向け、産業用アプリケーションなどの旺盛な半導体の需要によって、2024年以降は再び過去最高を更新する見通しです。DX(デジタルトランスフォーメーション)によるクラウド利用やEV(電気自動車)の普及を背景に、半導体需要の増加基調が続く見込みを受け、基本材料として不可欠なシリコンウエハーの関連銘柄が物色されています。
ウエハー再生で世界シェアトップ【RSテクノロジーズ】
上昇率首位の「 RSテクノロジーズ 」はシリコンウエハーの再生で世界市場シェアの3分の1(同社推計)を占めるトップ企業です。最先端の設備や高水準の洗浄技術などによって、高品質の再生ウエハーを提供しています。半導体の最終製品に使われる「プライムシリコンウエハー」を製造する中国の有研半導体硅材料股份公司(GRITEK)を2018年に子会社化し、ウエハー製造事業にも参入。ウエハーの総合メーカーになりました。11月9日にはGRITEKの上海証券取引所のハイテク新興企業向け市場「科創板」への株式上場が11月10日に決まったと発表したのも買い材料視されました。
需要拡大で再生ウエハーを増産【フェローテックホールディングス】
上昇率2位の「 フェローテックホールディングス 」は半導体製造装置などに利用されている真空シールなどの輸入販売が祖業で、半導体製造装置の部品やシリコンなどの素材を手掛けています。中国で半導体の国産化が加速し再生ウエハーへの需要が急増しているのを受け、2022年3月期に再生ウエハー事業を立ち上げ、24年3月期中に月産20万枚(12インチ中心)の体制を構築する予定です。シリコンウエハーを生産している中国のグループ会社は旺盛な需要を背景に増産を進めています。
需要増加は継続も米中の経済対立の行方を注視
そのほか、シリコンウエハー専業メーカーで約3割の世界シェアを誇る「 SUMCO 」、創業以来半世紀以上にわたってシリコンウエハー加工など半導体産業に関わってきた「 三益半導体工業 」、シリコンウエハーや塩化ビニール樹脂で世界のトップシェアを占める「 信越化学工業 」も買われています。
「産業のコメ」と言われる半導体はパソコンやスマートフォン、自動車など私たちの身近にある様々なモノに欠かせない部品です。電動化が進む自動車で搭載個数が大幅に増えているほか、データセンター向けの需要も拡大基調が続く見通しです。米中の経済対立により中国が半導体の国産化を進めているのもシリコンウエハーメーカーには追い風になっています。一方、米中の対立が和らぎ、中国が国産化の方針を改めれば需要拡大に歯止めがかかる可能性もあります。経済を巡る米中の対話がどうなるか、注目していきたいですね。