テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、2023年に予定されるモーターショーに関するニュースの裏側についてご紹介します。
「自動車×メタバース」の可能性を披露
「 ソニーグループ 」と「 ホンダ 」の合弁会社、ソニー・ホンダモビリティが10月13日に設立発表会見を行いました。EV(電気自動車)の発売は2026年になるとのことですが、同社が提示しようとしているのは、もはやEVうんぬんという段階ではなく、EVというプラットフォームにどういうサービスを搭載するのかが焦点となりました。
会見では「メタバースなどデジタルをフルに活用し、新しいエンタテインメントの可能性も追求」すると宣言。「自動車×メタバース」という容易には想像しにくい可能性を披露しました。
会見後のステージのスクリーンには「January 4, 2023 in Las Vegas」の文字が映し出され、来年1月のデジタル見本市CES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)で具体的な商品イメージを披露することを示唆しました。また、1年後には東京モーターショーが予定されており、さらなる具体的な未来像が提示されると予想されます。
EVをめぐり迷走の予感も
この東京モーターショーは、来年に大掛かりなリニューアルを予定しています。「JAPANオールインダストリーショー」と名称を変え、自動車だけでない全産業の見本市に生まれ変わる予定ですが、いまだにその概要は公表されていません。
「東京モーターショーの主催は日本自動車工業会だが、インダストリーショーとなるため経団連に協力を求めている。その経団連では新設のモビリティ委員会がインダストリーショーに協力するらしいが、同委員会は9月22日に初会合を行ったばかり。まだ動きがない。自動車メーカー各社のモーターショー担当も困っている」(自動車担当記者)。
ソニー・ホンダにとってもう一つ悩ましいのは、そのモビリティ委員会がEVシフトに懐疑的な姿勢を示している部分です。同委員会の初会合では、委員長を務める「 トヨタ自動車 」の豊田章男社長が当日、参加企業にアンケートを取り、「選択肢を狭めず、すべての選択肢をとるべき」――つまりEV一辺倒にしないとの意見を取りまとめました。それだけに、EVの未来像を世に提示したいソニー・ホンダとしては、インダストリーショーでEVを強調しづらくなるのではないか、という見方も出ているのです。
同様のことはEVシフトに舵(かじ)を切った「 日産自動車 」「 三菱自動車 」にも言えます。
EVシフトをインダストリーショーでどこまでアピールできるのか、そして、そもそもショーを実施できるのかも心配されています。
(出典:日本証券新聞)