経済指標 読み方がわかる事典

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

景気予測に役立つ64の経済指標の読み方がわかる本。円安やインフレが不安、はたまた今後の株価を先読みしたい投資家に。日々のニュースが面白くなる一冊でもあります。

景気の先読みに。GPSで新車の生産台数が予測できるって!?

まず、巻頭の経済指標カレンダーに圧倒されます。GDPや消費者物価指数、企業物価指数や百貨店売上高など聞き覚えのある指標から、イギリスの海運取引所が算出するバルチック海運指数(ばら積み船運賃の総合指数)などニッチなものまで。

「データや数字は苦手」というクチでも、とじ込みの「The一覧」のボリュームになぜかワクワクしてくるこの不思議。経済音痴でも知的好奇心をそそられるのに十分な仕掛けです。

さて、タイトル通り、事典のように使える本書ですが、まずは通しで読むのがおすすめ。四角四面のデータ解説ではなく、読者が「おお!」と感じる雑学ネタも多いのです。

たとえば、チェーンストア販売統計に気温や降水量のデータがあるのはなぜなのか? はたまた、アメリカの市場予測として中古住宅件数が注目されるのはなぜなのか?

前者は天候によって客足が変わるためであり、販売額だけで景気は読めないという理由によるもの。後者はアメリカの中古住宅は新築より市場が大きいから。かつ家具や家電の買い替えも伴うだけに、関連株に投資している人は特にチェックしたいデータなのだとか。

また、注目されるビッグデータ(GPSやSNSの投稿など)についての記載もあります。緊急事態宣言下での「人の流れの増減」は携帯電話の位置情報から算出していましたが、面白いのがこのGPS、生産数の予測までできてしまうこと。

自動車工場の人流データから、新車の生産台数を読むことも可能です。企業発の自動車生産台数はタイムラグが生じますが、何しろこっちはリアルタイム。投資判断にもがぜん有利になりそうですね。

以上のように、国内はもちろん、欧米や中国まで、景気を読むための材料ってこんなにあったのかと再認識させられました。経済のことが少しわかった気になれるような読後感も嬉しい限り。