株式市場で「転職」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する関連銘柄の平均上昇率は3.1%と、米連邦準備理事会(FRB)による利上げ継続や英国の財政悪化懸念などを受けて大幅に下落した東証株価指数(TOPIX、4.2%下落)に対して「逆行高」となりました(9月30日までの5営業日の騰落)。株価が上昇した5銘柄とその背景について解説します!
8月の転職求人倍率、2.09倍に上昇
転職関連株が買われるきっかけになったのは、人材派遣大手パーソルホールディングス傘下のパーソルキャリアが発表した8月の転職求人倍率でした。転職情報サイト「doda(デューダ)」の会員登録者1人に対して中途採用の求人が何件あるか算出した値は前月比0.11ポイント上昇し2.09倍と、2019年1月の算出開始以来の最高を更新しました。
「レジャー・外食」の求人増加率が特に大きく、入国制限が緩和されたことによる外国人観光客の増加を見越して、採用を進める動きがあったとパーソルキャリアは分析しています。また、企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進める中で、高度なスキルを持つ専門人材への需要も高まっており、転職関連銘柄が物色されています。
成功報酬型の求人メディアを展開【アトラエ】
上昇率首位の「 アトラエ 」は、2006年に成功報酬型の求人メディア「Green」のサービスを開始、2008年にはモバイルサイトの提供を始めました。蓄積した採用・転職のデータ解析をもとに、転職希望者と採用企業のマッチングを行っています。IT(情報技術)業界を中心に、累計登録企業数は9,000社超、登録ユーザーID数は101万人に上ります(2022年9月期第3四半期決算説明資料)。
飲食店開業・運営を支援【シンクロ・フード】
上昇率2位の「 シンクロ・フード 」は2003年に飲食店の出店開業・運営支援サイト「飲食店.COM」を開設。2006年には飲食店の求人情報サイト「求人@飲食店.COM」のサービスを始め、飲食店開業者・経営者向けの飲食店に関する多様なサービスを提供しています。2022年10月3日にはアフターコロナにおける飲食店採用の活発化に向け、「求人@飲食店.COM」のスカウトサービスをリニューアルしたと発表しました。
政府も「学び直し」を支援、転職市場の活況続く
そのほか、管理職・エグゼクティブ・専門職の転職・採用支援に強みを持つ「 ジェイエイシーリクルートメント 」。会社訪問アプリ「Wantedly」のサービスを行っているビジネスSNS(交流サイト)運営の「 ウォンテッドリー 」。転職情報サイトを手掛けるビズリーチを子会社に持つ「 ビジョナル 」も買われています。
岸田文雄首相は10月3日に召集された臨時国会の所信表明演説で、「人への投資策を『5年間で1兆円』のパッケージに拡充する」と述べました。賃上げにより、企業が高度人材を呼び込み、生産性を高めてさらなる賃上げが生じる好循環を目指します。これをサポートするため、個人のリスキリング(学び直し)に対する公的支援を行うとのことです。政府の後押しもあり、今後も転職市場の活況は続きそうです。決算発表などからどの企業がシェアを伸ばしていくのか、しっかり確認したいですね。