株式市場で「ドラッグストア」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する18銘柄の平均上昇率は6.3%と、米長期金利の落ち着きなどが好感され大幅に反発した東証株価指数(TOPIX、1.7%上昇)を大きく上回りました(6月24日までの5営業日の騰落)。今回はそのなかでも上昇率の高い「ドラッグストア」関連5銘柄と株高の背景について解説します!
7~9月の気温、広範囲で平年より高く
東京都では6月20日以降に最高気温が30℃を超える真夏日が頻発しています。25日には35℃を超え、観測史上最も早い猛暑日を記録し26日の最高気温は36.2℃に達しました。群馬県伊勢崎市では40℃を超えるなど関東甲信地方を中心に連日猛暑となっています。
また、民間気象情報会社大手のウェザーニューズ(4825)は22日、「猛暑見解2022」で、今年の夏(7〜9月)の気温は広範囲で平年より高いと発表しました。太平洋高気圧とチベット高気圧のダブル高気圧による影響で、7月後半と8月後半に暑さのピークを迎え、猛暑日が続く可能性があるようです。
熱中症予防でドラッグストアに猛暑需要
猛暑の影響が出始めています。東京消防庁によると6月に入り熱中症の疑いで病院に搬送された人は27日時点で588人にのぼりました。うち半分近い291人が65歳未満の非高齢者です。熱中症に気を付け、予防することが大切で、対策用品や、暑さを乗り切る健康食品、ヘルスケア用品などへの需要の増加が期待されます。
そんな中、ドラッグストアの売上高は増加傾向が続いています。経済産業省の商業動態統計によると2021年5月以降11カ月連続で前年同月を上回っており、4月は3.1%増でした。調剤医薬品や食品の伸びがけん引しています。順調な売上動向や、好調な決算発表に加え、猛暑需要なども期待され株式市場で注目されています。また、物価の上昇を受けて値ごろ感のある商品を求める消費者の需要は根強いことも背景のようです。
2023年5月期は大幅増配【ツルハホールディングス】
上昇率首位の「 ツルハホールディングス 」は「ツルハドラッグ」や「くすりの福太郎」などグループで国内2506店を展開しています。6月21日に発表した2023年5月期の業績見通しでは、営業利益が前期比で5%増と2期ぶりの増益を見込んでいます(会社予想)。コロナ禍で業績が左右された反省から、収益改善を優先するとしています。
決算と同時に発表した中期経営計画では2025年5月期の売上高を1兆600億円(22年5月期は9157億円)、売上高営業利益率は5%以上(同4.4%)を目標に掲げています。23年5月期から25年5月期は純利益を配当に充てる額の比率である配当性向を50〜70%にする方針も示し、23年5月期の年間配当は233円と66円の大幅増配の見込みです。
M&Aで収益拡大【ウエルシアホールディングス】
上昇率2位の「 ウエルシアホールディングス 」はイオングループで、調剤薬局併設型のドラッグストアなどを関東を中心に2457店(2022年2月末時点)展開しています。6月1日に「コクミンドラッグ」を展開しているコクミン(大阪市住之江区)とその関連会社をグループの一因に加えるなど、積極的なM&Aで収益を拡大しています。
2023年2月期は「収益認識に関する会計基準」を採用するため単純比較は出来ませんが、旧基準によると前期比で10%増収、9%営業増益を見込んでいます(会社予想旧基準ベース)。23年2月期は中期経営計画の最終年度にあたりますが、M&Aが奏功し売上高と店舗数は計画を上回る見通しです。
「収益認識に関する会計基準」とは国際会計基準(IFRS)に準拠した売上高の計上基準。従来は売上原価に計上していた販売奨励金やリベートを売上高から差し引いたり、保守契約などの「サービス」を一定期間にわたって計上したりするなど売上高を「いつ」「どのように」計上するかを定めたものです。2022年4月に始まる決算期から適用されました。
猛暑需要で人気化、今後は選別の動きも
そのほか九州を中心に「ディスカウントドラッグ・コスモス」を展開する「 コスモス薬品 」、生鮮食品も取り扱う「ゲンキー」を福井県など5県で集中出店している「 Genky DrugStores 」、神奈川県を中心に1都7県で「ドラッグストア・クリエイト」を展開している「 クリエイトSDホールディングス 」も買われています。
厚生労働省が4月から店舗数が300以上の調剤薬局の調剤基本料を引き下げたのを受け、調剤薬局併設型店舗が多いウエルシアHDやツルハHDには収益が圧迫されるとの警戒感から売りが膨らみ、6月17日にそろって年初来安値を付けていました。
しかし、物価上昇を受け、価格に敏感な消費者は、割安さを求めてドラッグストアに足しげく通うことも想定されます。足元では、ツルハHDの決算発表や、熱中症など猛暑対策需要などをきっかけにドラッグストア関連株はそろって物色されています。今後は熱中症対策グッズの品ぞろえや、調剤薬局併設型の店舗や食料品が売上高に占める比率などで選別が進んでいくことが予想されます。