小麦価格を抑制へ 「即席めん」関連株が上昇

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株式市場で「即席めん」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する3銘柄の平均上昇率は4.2%と、欧米主要国による金融引き締め策の発表などを受け5週ぶりに大幅下落した東証株価指数(TOPIX、5.5%下落)に対して「逆行高」となりました(6月17日までの5営業日の騰落)。今回は「即席めん」関連3銘柄と株高の背景について解説します!

値上げしても追いつかない?小麦の国際価格高騰

即席めん大手は、2月に6月1日出荷分から即席めんの希望小売価格を引き上げることを相次いで発表しました。原材料となる小麦の価格だけでなく、包装材などの資材価格やエネルギー費、物流費の上昇が続いているためです。

また、6月1日、ウクライナ穀物協会は、2022年の小麦の収穫量が1920万トンと前年の3300万トンから42%減少するとの見通しを示しました。需給のひっ迫により、小麦の国際価格は高騰が続く見通しです。即席めん企業の業績には苦しい展開です。

政府の小麦価格抑制姿勢を好感

そうした中、6月15日、岸田文雄首相は記者会見で、食料品やエネルギーの価格高騰への対策を強調しました。ロシアが穀倉地帯であるウクライナに侵攻し、輸入小麦の国際価格は2〜3割上昇していますが、政府は国内製粉会社への売り渡し価格を9月まで据え置いています。首相は「10月以降も輸入価格が突出して急騰している状態であれば必要な措置を講じる」と表明しました。

これを受け、小麦粉の値上がりによる収益悪化懸念が後退し、即席めん関連株には買い安心感が広がっています。

主力ブランドが最高売上高を更新【日清食品ホールディングス】

上昇率首位の「 日清食品ホールディングス 」は、世界的なカップめんのブランドとなっている「カップヌードル」や「どん兵衛」を擁する代表的な即席めん会社です。2022年3月期は、発売50周年のカップヌードルが5期連続、45周年のどん兵衛が7期連続で最高売上高を更新しました。

そして2023年3月期は、売上高が前期比4%増の5950億円、営業利益が470億〜495億円と増収増益の見通しです(会社予想)。糖質を抑えタンパク質を高めた「カップヌードルPRO」など、付加価値の高い商品の投入やプロモーションの効果で、新たな価格で収益性を確保していく方針です。

価格改定で収益改善へ【東洋水産】

上昇率2位の「 東洋水産 」は「マルちゃん」ブランドの「赤いきつね」や「緑のたぬき」で知られ、袋めんも含め多様な即席麵を手がけています。2022年3月期は、袋めんとカップめんともに好調だった海外即席めん事業の売上高が過去最高となったほか、「巣ごもり需要」でレトルト米飯や冷凍食品などが伸び、加工食品事業と冷蔵事業の売上高も最高を更新しました。

2023年3月期は売上高が前期比12%増の4050億円と過去最高を更新し、営業利益は23%増の365億円と大幅な増収増益の見通しです(会社予想)。海外の即席めん事業で新規生産ラインが稼働し製造能力が回復するほか、国内外の値上げで収益率を示す売上高営業利益率は9.0%と前期の8.2%からの改善を見込んでいます。

値ごろ感のある即席めん需要は堅調との見方も

そのほか、即席めんやうどんスープなどを手がける食品事業と養殖魚向けの飼料などを手がける「 ヒガシマル 」も買われています。2022年3月期は即席めんのOEM(相手先ブランドによる製造)などが苦戦し、前の期に比べ8%の減収となりましたが、原価率の改善などから営業損益は2億円の黒字(前の期は3400万円の赤字)に転じました。

中国や米国を中心に即席めん市場は拡大基調で、関連各社の業績は海外事業が牽引する見通しです。しかし、国内では、「巣ごもり需要」による即席めん消費が、コロナ禍の後退で減少することが警戒されます。ただ、様々なモノの値段が上がるなか、値ごろ感のある即席めんの需要は底堅いとの見方もあります。政府の小麦価格抑制はひとまず安心材料ですが、消費者の行動がどう変わるのか見極める必要はありそうです。