骨太の方針で期待高まる 「洋上風力発電」関連株が上昇

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株式市場で「洋上風力発電」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する50銘柄の平均上昇率は2.8%と、小幅に続伸した東証株価指数(TOPIX、0.5%上昇)を上回りました(6月10日までの5営業日の騰落)。今回は、洋上風力発電関連で上昇率が大きい5銘柄とその背景について解説します!

今後10年の投資規模、官民で150兆円超に

6月7日、政府は、経済財政運営と改革の基本方針「骨太の方針」を閣議決定しました。同方針では、「成長志向型カーボンプライシング構想」が掲げられ、成長促進と温暖化ガスの排出抑制・吸収を最大にする具体化が盛り込まれています。

カエル先生の一言

2020年10月、政府は2050年までに温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ排出全体をゼロにする「カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。「カーボンプライシング」は、炭素税、国内排出量取引など、炭素に価格を付けるなどして、排出削減を働きかけることでカーボンニュートラルを目指す手法です。

「成長志向型カーボンプライシング構想」では、今後10年で150兆円の官民投資を通じた脱炭素化の実現を目指しており、重点的に環境整備を行うものの一つとして、「カーボンニュートラルポート」が挙げられました。

「カーボンニュートラルポート」で洋上風力発電に脚光

「カーボンニュートラルポート」は、脱炭素化に配慮し港湾機能を高度化することによって、カーボンニュートラルを目指すものです。日本の輸出入の9割超を取り扱い、CO2排出量の約6割を占める産業の多くが立地する港湾での脱炭素効果は大きいことが期待されます。

カーボンニュートラルポートの機能の一つとして洋上風力発電が注目されます。四方を海で囲まれた日本では、陸上に比べ安定的な風力が見込める洋上風力発電が有力視され、株式市場でも洋上風力関連銘柄が物色されています。

風力発電で前期比14倍の受注を見込む!【日立造船】

上昇率首位の日立造船 」は、大型風力発電で新規の事業地開発から建設、事業運営まで一貫して取り組んでいます。洋上風力では、基礎構造物の設計、制作、据え付けを手がけ、2019年には浮体式洋上風力発電システムの実証機「ひびき」を納入しています。

2022年4月には、国内外で保有する脱炭素化技術を機動的に発展させるために脱炭素化事業本部を設立。風力発電事業では、2023年3月期に140億円と、前期比14倍の受注を見込んでいます。

傘下に風力発電専門企業を持つ【コスモエネルギーホールディングス】

上昇率2位のコスモエネルギーホールディングス 」は、傘下に日本初の風力発電専門企業であるコスモエコパワーを擁しています。発電所の立地地点の選定から建設、運転保守までかかわる一貫体制で、国内で170基以上、設備容量30万キロワットを超える風車を運営しています。

陸上風力は、2031年3月期までに約90万キロワットまで規模を拡大する方針です。洋上風力では、工事が進んでいる設備容量14万キロワットの「秋田港・能代港」プロジェクトが2023年3月期後半に運転を開始する見通しのほか、青森西北沖や秋田中央海域などのプロジェクトが開発中です。陸上風力と洋上風力をあわせ、31年3月期に設備容量150万キロワットを目指しています。

洋上風力の恩恵を受ける企業は多数

そのほか、独立系ブレーキメーカーの曙ブレーキ工業 」は、風力発電装置向けのディスクブレーキなどを手がけています。出光興産 」は、ノルウェーの子会社が権益を保有する油田で浮体式洋上風力発電の運転開始を2022年後半に計画しています。また洋上風力発電用の潤滑油の開発で、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の事業に採用されました。東レ 」は、発電効率のカギを握るブレード用の炭素繊維素材の生産能力を2023年に従来の年2万8000トンから年3万5000トンに増強する計画です。

骨太の方針ではロシアによるウクライナ侵攻などを踏まえて、エネルギー安全保障の確保にも言及しています。脱炭素化を進めるとともに、安全保障の面からも、国産エネルギーの比率を高めるのは喫緊の課題と言えるでしょう。政府の計画の進展と企業業績への影響に目を配っていきたいですね。