テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、本土復帰50周年を迎えた沖縄の経済に関するニュースの裏側についてご紹介します。
開業率、出生率で日本一!
5月15日に沖縄が本土復帰50周年を迎え、マスコミも大きくこれを取り上げました。沖縄の経済というと、フォーカスされるのが観光業。関連銘柄には、沖縄の宿泊予約に特化したサイトと連携する「 手間いらず 」などがありますが、その他はスーパーやレストランを展開する「 サンエー 」や「 沖縄電力 」「 おきなわFG 」といった地元企業がある程度です。
「だが、沖縄の経済成長のポテンシャルはかなり高い。沖縄科学技術大学院大学(OIST)は、科学論文誌『ネイチャー』掲載の自然科学分野の『質の高い論文ランキング』で9位に入った。東京大学の40位、京都大学の60位をぶっちぎってのトップ10入り。また沖縄の開業率は8.8%と都道府県トップ。事業意欲が高い地域で、29歳以下の新規勤労者数はこの5年あまりで3倍に増えており、若い労働力も豊富。出生率も日本一だ。起爆剤があれば、経済力がグッと伸びる可能性は高い」(経済アナリスト)。
沖縄は日本有数のIT企業集積地
その起爆剤としては、やはりIT関連が想定されます。沖縄は、戦略産業として情報通信産業の振興に力を入れてきました。2020年1月時点ではIT企業490社が沖縄に拠点を設立しており、「日本有数のIT企業集積地」とも言われています。
そうであれば、地図情報最大手の「 ゼンリン 」やシステム建築大手の「 TIS 」「 琉球銀行 」が参画する、沖縄都市モノレールのようなMaaS事業(より便利な移動手段を実現するサービス)が伸びる可能性も考えられます。
IT立国「台湾」との連携が飛躍の起爆剤に
「ただ沖縄のIT産業といっても雇用者数で見ればコールセンターが1万8000人のところ、情報サービスで6700人、ソフトウエア開発で3200人という具合。つまりは賃金の低さでコールセンターが集中しているだけで、IT技術開発の能力が高いわけではない」(前出・アナリスト)。
沖縄の経済的自立は、まだまだポテンシャルだけに止まっているということのようですが、沖縄の地の利に着目する向きもあります。たとえば、電子機器受託製造で世界大手の鴻海(ホンハイ)や、半導体ファウンドリー世界トップのTSMCなどがあるIT立国の台湾。その台湾に一番近いのは沖縄です。沖縄は、台湾と日本をつなぐ拠点になる可能性があります。
「台湾とのビジネスは、中国との安全保障の問題がネックとなっていた。が、ロシアのウクライナ侵攻で国際社会が中国の台湾侵攻に目を光らせ、日本は台湾ビジネスを拡大しやすくなった。かねて沖縄経済同友会が、台湾からのIT企業誘致活動も行っている」(経産省OB)。
台湾の「平和」が、沖縄の経済的自立の起爆剤につながるかもしれませんね。
(出典:日本証券新聞)