株式市場で「ホテル運営」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する35銘柄の平均上昇率は1.9%と、小幅に続伸した東証株価指数(TOPIX、0.5%上昇)を上回りました(5月27日までの5営業日の騰落)。今回は、ホテル運営関連で株価が上昇した銘柄とその背景について解説します!
6月から観光目的の入国緩和
5月20日、日本政府はコロナ感染予防対策で採られている水際対策の緩和を発表しました。入国者数の上限は、6月1日より1日1万人から2万人へ引き上げられます。松野博一官房長官は会見で「入国者ベースで8割程度の国・地域は入国検査と待機を求めないことになる見込みだ」と指摘。訪日外国人の受け入れへ向け大きく舵がとられました。
水際対策の緩和でホテルに追い風
政府は3月以降、水際対策を段階的に緩和しており、その効果はすでに出始めています。4月の訪日外国人客数は13万9500人と約2年ぶりに10万人を上回りました。2万人弱だった1〜2月と比べ着実に回復しています。
ホテル運営など宿泊業の業績は、行動制限や厳しい水際対策により大きなダメージを受けました。しかし、3月に行動規制が解かれたことで、政府の観光振興策「Go Toトラベル」の代替として「県民割(地域観光事業支援)」を導入する自治体が増加。水際対策の更なる緩和でインバウンド消費の回復が加われば、収益回復に弾みがつくとの期待から「ホテル運営」関連銘柄に買いが入っています。
需要の回復を見据え旅行会社に出資!【オリエンタルランド】
東京ディズニーリゾートを運営する「 オリエンタルランド 」のコーポレートベンチャーキャピタルであるオリエンタルランド・イノベーションズは5月18日、ガイド付きの少人数旅行を手掛けるotomo(東京・文京)に出資したと発表しました。観光需要の回復を見据え、ガイドの引き合いが強まるとみています。
会社側は、2023年3月期売上高を前期比48%増の4079億円、営業利益は6.5倍の502億円への回復を見込んでいます。テーマパークの売上高が50%増の3277億円まで回復し全体を牽引しますが、ホテル事業の売上高も44%増え、同事業の営業利益は2.1倍に膨らむ見通しです。
ホテルの稼働率が前年を大幅に上回るスタート!【共立メンテナンス】
「 共立メンテナンス 」は寮事業とホテル事業が収益の柱です。寮では、学生寮や社員寮、ホテルではビジネスホテル「ドーミーイン」やリゾートホテル「共立リゾート」などを展開しています。5月13日に発表した2022年3月期決算は、新しい働き方に対応したホテル事業や政府の雇用調整助成金の活用などで売上高は前の期に比べ43%増、営業損益は14億円の黒字(前の期は90億円の赤字)に回復しました。
会社側は、2023年3月期売上高を前期比微増の1740億円、営業利益は2.1倍の30億円と見込んでいます。4月のホテル事業は行動制限が解除されたことで、ビジネス、リゾート共に稼働率が前年を大幅に上回りました。
復活しつつあるインバウンド 「県民割」延長も追い風に
そのほかにも、「 ワシントンホテル 」は、2023年3月期の売上高が前期比68%増の143億円に回復見込み(会社計画)。「 ABホテル 」は、「県民割」などへの積極参加で2023年3月期を10%増収、25%営業増益と計画(同)。「 京都ホテル 」は、2022年3月の営業利益が前の期の25億円の赤字から19億円の赤字に縮小するなど、インバウンド回復の恩恵を受け始めています。
水際対策は大きく緩和され、観光目的の新規入国が認められることとなりました。また、国内では県民割支援の実施期間が5月31日宿泊分までから6月30日宿泊分まで延長されています。観光庁の5月27日の発表によると2021年度のインバウンド旅行の取扱額は487億円と前年度の5.4倍に急回復しました。それでもコロナ禍前の2019年度の水準を78%下回る低水準で、回復の“伸び代”は大きいとも考えられます。日本を訪れる外国人、国内を移動する日本人の増加で、ホテル運営を行う企業に久しぶりの追い風が期待されます。