今の社会動向や投資環境をもとにホットな銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。6月号では総合重機メーカーの「三菱重工業」が新たに仲間入りしました! 早速、三菱重工業の投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてみましょう。
重厚長大産業のリーディングカンパニー「三菱重工業」
今回仲間入りした「 三菱重工業 」は、プラント、原発、ガスタービン、航空・宇宙、インフラなど多様な事業を手がける総合重機メーカーです。
明治17年の創業から現在に至るまでの約140年の間には、日本の近代化や戦後復興、高度経済成長、技術立国……など、日本の経済成長における様々な局面がありました。これらの歴史とともに歩む同社は、高度な技術力と先見性で、内燃機関、自動車、航空機、発電設備などの事業を展開。重厚長大産業のリーディングカンパニーとして成長を遂げています。
CO2の回収事業は世界トップシェア!
その時々の社会の課題に取り組み、社会・経済・人々の暮らしに貢献してきた同社。現在は地球規模の課題である「カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする)社会」の実現に向け、新たな成長領域を開拓しています。
世界各国が目標に掲げる「2050年のカーボンニュートラル実現」は、世界の電力全体に占める再生可能エネルギーのシェア(2022年時点38%)を80%まで高めることが必要とされています。これを受けて、同社は燃焼時にCO2を出さない、水素を用いた発電を2025年に商用化することを目指しています。また、原子力発電の既設プラントの再稼働支援や特定重大事故等対処施設の設置、燃料サイクルの確立などで脱炭素化への貢献を進めています。
一方で、カーボンニュートラル実現のためには、排出されたCO2の回収も欠かせません。同社グループは、排ガスを冷却したり、加熱したりしてCO2を再生するプラントを開発し、全世界13ヵ所で稼働させています。豊富な実績と独自技術を強みに、2022年3月期に世界トップシェアとなる約2700万トン/年相当のCO2回収の実効性調査も新規受注しています。
また、同社は回収したCO2を資源として有効利用する技術への投資も拡大しています。CO2回収の商談が北米、欧州、日本で活発化していることもあり、同社業績への新たな成長ドライバーとして期待されます。
中期経営計画の進捗は順調
同社は「成長領域の開拓」および「収益力の回復・強化」を二本柱とした中期経営計画(2021事業計画)を策定しています。そのなかで、2023年度における新事業での売上高1000億円、事業利益率7%など、さまざまな数値目標を設定しています。
当計画の実現に向け、2020年10月には国産ジェット旅客機事業の凍結を発表。固定費や人員の削減、不採算事業の整理などで収益性の回復・向上を図りつつ、カーボンニュートラル社会実現に向けた成長投資への資金配分を増加させています。
この取り組みが奏功し、2022年5月に行った2021事業計画推進状況発表では、初年度(2022年3月期)の目標達成および、2023年度目標達成に向けて順調に計画が進んでいる旨も発表しました。
防衛分野や原子力発電でも存在感が増す
2019年に発生したホルムズ海峡周辺のオマーン湾でのタンカー攻撃や、サウジアラビア東部の石油施設攻撃。こうした地政学リスクによるエネルギー供給の不安定化などを背景に、エネルギーを安定供給できる原子力発電が再評価され、世界各国で新設計画が発表されています。このようななか、奇しくもロシアのウクライナ侵攻を受け、G7首脳により化石燃料依存の低減およびクリーンエネルギーへの移行を加速する共同声明が出されました。人々のセキュリティに対する意識を変化させたこともあり、市場では防衛関連や原子力発電への注目度も高まっています。
陸・海・空すべての防衛分野、原発などでも存在感が大きい同社は、業績や株価の長期的な上昇余地につながりそうです。
保守的な会社予想で上振れの可能性も
2023年3月期の業績計画は、売上高3兆9000億円(前期比1.0%増)、事業利益2000億円(同24.8%増)の見通しです。ただ、航空・宇宙・防衛事業では民間航空機などの生産回復を織り込んでいない前提であることや、為替の想定が1ドル=120円となっていることを考慮すれば会社計画は保守的な印象です。
重厚長大から新たな成長領域へ!
プラント、原発、ガスタービン、航空・宇宙、インフラなど多様な事業を手がける「三菱重工業」。現在は、カーボンニュートラル社会の実現に向けた投資や成長領域の開拓も進めています。140年近くの歴史で培われた高い技術力と先見性を強みに、脱炭素化や防衛などの社会課題解決に取り組む同社から目が離せませんね。