金利上昇は終わり? 「売られすぎ銘柄」の反転を探る

カエル先生の株式相場プレイバック/ 日興フロッギー編集部平松 慶

マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は株価下落要因になっている中国の「ゼロコロナ政策」や、好業績にもかかわらず売られすぎている銘柄などについて解説します!

カエル先生の一言

22年ぶりに0.5%の利上げを決定した米国。インフレを封じこめることと、景気を減速させないことの難しいかじ取りを求められている状況です。そんな中、日本株をはじめ世界の株式市場の売り要因になっているのが中国の「ゼロコロナ政策」です。中国で何が起きているのか、いまマーケット参加者はなにを想定しているのかを探ります。

5月は景気後退懸念で下落しやすく

5月31日の日経平均株価は2万7279円となり、前月末比431円高でした。
世界的なインフレ進行に対し、5月4日にはFRB(米連邦準備制度理事会)が22年ぶりとなる0.5%の利上げを決定しました。市場では一部で0.75%の利上げも想定されていただけに、株式市場への影響は一時的なものとなりました。しかし、中国の「ゼロコロナ政策」の影響で、上海など一部で経済が滞っていることや、米国の小売大手などが想定を下回る決算を発表したことなどから景気後退への懸念が高まる場面がありました。

中国「ゼロコロナ政策」による傷は深い

中国の「ゼロコロナ政策」が世界景気および株式市場に影を落としています。ゼロコロナ政策とは、少しでも感染者を見つけると、該当地域をロックダウン(都市封鎖)して徹底的に感染を食い止めようとする政策のことです。上海に代表されるような大都市でも実施され、経済にも大きな影響が出ています。

その影響について強く意識されたのが、5月16日に発表された4月の中国の鉱工業生産指数で、前年同月を2.9%下回りました。新型コロナの流行が始まって、経済が打撃を受けた2020年1~2月(前年同期比13.5%減)以来の落ち込み幅となりました。

新型iPhoneの生産にも影響か

そのほかにも、厳しい行動制限などから小売売上などもダメージを受けており、ロックダウンが続く上海市では、前年比4割も落ち込んだとのこと。また、これらの影響で米アップルが2022年発売予定のiPhoneの新機種のうち、少なくとも1機種の開発が予定より遅れているとの報道もありました。

世界の工場の役を果たしている中国。コロナに対する政策を厳しく統制するあまり、世界の流通や経済へ大きな影響を与え始めているようです。

米小売り大手の決算が映す「景気悪化の足音」

こうした中国の政策による影響に加え、米国の小売大手の決算などを通して、本格的な景気悪化を懸念する声も出始めています。5月中旬に発表された米小売大手・ウォルマートやターゲットなどの決算で、賃金と輸送コストの高騰が改めて浮き彫りとなりました。

企業の業績悪化は、やがて雇い止めやレイオフ(一時解雇)などにつながり、さらには個人消費の落ち込みにつながります。今はまだ雇用統計などにそうした影響は見られませんが、米国のGDPの約7割を占める個人消費が落ち込むことが市場では想定されはじめています。

インフレVS景気後退懸念

こうしたシナリオ変化は金融市場にも表れています。これまではインフレ進行を止めるべくFRBによる利上げを急速に織り込むように、米国の債券・金利市場は推移してきました。米国2年債利回りで見ると、2%台後半まで上昇してきました。

しかし、景気後退が一気に加速するとなると、FRBとしてはインフレ退治ばかりを意識しているわけにもいかなくなります。景気のアクセルとブレーキのバランスをとるために、利上げを早期に打ち止めするという選択肢も浮上してくるわけです。

こうした状況を織り込むように、2年債利回りも5月に入ってからやや頭打ちになってきました。このように、金利の推移と企業の決算などを読み解くことで、いまマーケットがどういうことを織り込んでいるかも読み解けるようになります。

「売られすぎ銘柄」の反転に着目

これまでは金利上昇による影響などから、主にPERが高いグロース(成長)株が売られやすい状況が続いてきました。しかし、金利上昇が一服するとなれば、そうした銘柄にも一部投資資金が戻ってくる可能性があります。

そこで今回は、目先好業績が予想されているにもかかわらず、予想PER(東洋経済予想)が昨年末比で大きく落ち込んだままになっている銘柄をスクリーニングしました。もちろん景気悪化が進むことで業績予想が下ブレするリスクには注意が必要ですが、「売られすぎ」と判断されれば買い戻される場面も想定されます。ぜひ今後の参考にしてみてくださいね。

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