無料よりも安いものもある お金の行動経済学

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

わたしたちは不合理な判断で日々お金を損している!? 行動経済学の火付け役D・アリエリーと金融系コメディアン、J・クライスラーによる「貯まらないクセ」に気づく一冊。読めば、未来の預金残高が変わるかも。

無料も価格のうち? 軽妙な筆致で「お金を貯められない習慣」に気づかせる本

何しろ、お題に対するキャッチアップが上手すぎます。
「高価格=高品質と思いこむ」説で「いや、自分はもう少し思慮深い」と思ったあなたに、絶妙な喩え話を畳みかける。「格安キャビアや特売フォアグラと聞けばマズそうに感じるよね?」「異様に安い心臓外科手術と聞けばほかの医者を探したくなるでしょ?」などと並べてくるからぐうの音も出ません。著者2人の軽妙なキャラもあり、行動経済学の何たるかを楽しみながら学べる本です。

タイトルにもありますが、無料も価格のうち、なのだそうです。
わずかな価格差なら商品の価値を考慮できるのに、片方が無料になった途端、ほとんどの人は思考を停止し、無料の方を選んでしまう。「会員になれば送料無料」のサービスは、買えば買うほど「ますますお得」に感じます。本当は、買えば買うほど支出が増えるだけなのに。

キャッシュレス決済は「お金の時間感覚をあいまいにし、出費の痛みを薄くさせる」との説にもやられました。実際、PayPayやクレジットカードを使う時は「今、払っている」ような気はしません。一方で、請求書が届いた時は「すでに支払いを済ませた」気になっている。じゃあ、われわれはいつお金を払ったのか? 昨今の普及ぶりに鑑み、現金決済が恋しくなる気づきでもあります。

企業があの手この手で開発する先進的な方法に注意しよう、と本書は繰り返します。「セール品で考えなくてはいけないのは値引き率ではなく、実際に払う額」「投資商品の手数料は、パーセンテージで表示されると実感がわかないが、実際に支払う額を見ると実感する」等々。日々の買い物でドジを踏む人たちのエピソードから、お金を貯められない習性というものはどの国も同じなんだと実感しました。なお、ショッピングでの悪癖を止めたい人だけでなく、モノを売りたいマーケティング担当者も絶対読んだ方がいいと付け加えておきます。