こんにちは、プロコーチのこばかなです。この連載は、「部下の能力を引きだすコーチング型マネジメント」について全8回でお伝えしていくシリーズです。
前回は、いまコーチング型マネジメントが注目されている理由について、時代背景を踏まえながら解説しました。VUCA時代とも呼ばれる変化の激しい昨今、マネージャーにはこれまでとは違ったスタンスやスキルが求められていることをお分かりいただけたのではないでしょうか。
第1回 いま「コーチング型マネジメント」が注目されている理由を読む
コーチング型マネジメントというと、良いマネジメントをするためのスキル(手法)を取り入れることと思われる方もいるかもしれません。
しかし実は、コーチング型マネジメントの土台となるのは、マネージャー自身の「あり方」。第2回となる今回はコーチング型マネジメントの実践のためになぜ「あり方」が必要なのか、現在のマネージャーに求められる「あり方」とは何なのかについてお伝えしていきます。
なぜ「あり方」が重要なのか
この連載を読んでくださっているのは、マネージャー職に就いている方が多いと思いますが、マネージャーの「あり方」を考えるために、まずは「部下」の気持ちになってみるとわかりやすいでしょう。
ご自身が部下の立場だったときのことを思い出してみてください。たとえばあなたが入社3年目で、直属のマネージャーからとあるプロジェクトのディレクターに抜擢されたとします。初めて任される仕事に、やる気が満ち溢れるあなた。しかし、いざプロジェクトが始まってみると、想像以上の忙しさが待っていました。
すると見かねたマネージャーが「手が回っていなさそうだったから、〇〇をやっておいたよ」「クライアントのXXさんに、納期を調整してもらえるように相談しておいたよ」と先回りしてくれるようになりました。
やろうと思っていた仕事を先にやられてしまう。ディレクターである自分がいる意味ってなんだろう? ——あなたは次第にやる気を失い、いつしかマネージャーからの指示を待つようになってしまいました。
これは、実際にあなたが経験してこなかったとしても、身の回りで起きる「あるある」な事象ではないでしょうか。
一方、このマネージャーがあなたの可能性を信じ、「やりたいようにやってみてごらん。困ったときにはいつでも力になるよ」という尊重のスタンスを示してくれていたら?
・裁量があることで、より強い責任感が芽生える
・困ったときは助けてもらえるという安心感がある
このような理由から、あなたは主体性を持ってプロジェクトをリードし続けられたのではないでしょうか。マネージャーが自分を信じてくれているとわかれば、自分も相手を信じられ、信頼関係も深まったかもしれません。
マネージャー自身が「あり方」を整えることで、部下が自分らしさを発揮でき、成果につながる場合も多いのです。
上司の不安・恐れが、部下の主体性を抑圧してしまうこともある

今回の「先回りして仕事を処理する」行動は、一見、プロジェクトを滞りなく進めるために必要なものであり、上司から部下への思いやりのようにも見えました。
しかし、その裏側に、上司の「プロジェクトを成功させなければ、自分が仕事ができない人間だと思われるかもしれない」「会社から評価されないかもしれない」という無意識的な不安・恐れが存在しているケースもあります。上司の中にある不安・恐れに無意識にとらわれてしまい、「部下のため」「会社のため」と言いながら、部下の主体性やその人らしさを抑圧するような行動に出てしまうのです。
不安や恐れ自体は悪ではありません。しかし、不安や恐れの根源にあるものに気づいていないと、不安が増大して現実を歪めてしまうことがあるのです。
仮にこの上司が、自分の不安や恐れに対して自覚的になれていたとしましょう。その場合、「仕事ができないと思われるのが怖いから、先回りして処理してしまおうとしているのかもしれない」と立ち止まることができ、可能な限りのリスクヘッジをした上で、部下を信じて仕事を任せられたかもしれません。
このように、上司が自分自身の不安・恐れを認識し「恐れからその選択をしてしまおうとしていないか?」と考えるだけで、チームにとって最適な意思決定ができる可能性が高くなります。
現代のマネージャーに求められる「あり方」
先ほどの例では、マネージャーのあり方として「相手の可能性を信じる」「尊重のスタンスを持つ」の2つを紹介しましたが、現代のマネージャーにはこのほかにもさまざまなあり方が求められています。中でも、わたしがコーチング型マネジメントにおいて特に大切にしている「あり方」を紹介します。
1.自分自身の本当の願いを知る
マネジメントを行うマネージャーはその立場上、部下、自分のマネージャー、会社、クライアントなど、さまざまな人の「ありたい姿」に触れなければなりません。板挟みになりやすい状況の中で「自分は本当はどうありたいか」の願いを知ると、マネージャー自身がモチベーションを維持し、チームをリードし続ける力となります。
2.上司が自ら信頼関係を育む気持ちを持つ
部下から主体性とその人らしさを引き出すためには、マネージャーと部下の間に信頼関係の構築が欠かせません。
当然ですが、人によって最適な「信頼関係の育み方」は異なります。コミュニケーションの機会を定期的に設ける、相手の話を聞き切る、信じて任せる、会社以外の場で話ができる時間を作るなど、相手に合わせた方法を考えながら、上司が”自ら”信頼関係を育む気持ちを持てると良いでしょう。
3.弱さや本音もさらけ出し、ありのままの自分でいる
組織を引っ張るマネージャーたるもの弱みを見せてはいけない、と考える方もいらっしゃるかもしれません。しかし、マネージャーが弱み本音をさらけ出すと、部下は「自分も弱い部分があっていいんだ」と安心感を抱き、ありのままの姿でいやすくなります。
心理的安全性は、部下の自分らしさや主体性を引き出すためにもっとも重要な要素のひとつ。上司が勇気を持って、率先して弱さをさらけ出し、ありのままの姿でいることは、心理的安全性の高い場を作る手がかりとなります。
4.上下関係に縛られない、フラットな関係を意識する
第1回でもお伝えしたとおり、VUCA時代には、上司が経験してこなかったような新しいことが次々と起こります。もしかすると、上司である自分以上に、部下が豊富な知識を持っているかもしれません。「上司(≒マネージャー)」「部下(≒メンバー)」を絶対的な上下関係と捉えるのではなく、その役割の間にある良い緊張感は保ちつつ、フラットな関係性を育む。すると部下は主体的に意見を発信したり行動したりでき、結果としてチーム全体の成果が生まれやすくなるのです。
とはいえ、これらは「こうなろう」と思ってすぐさまなれるものではありません。あり方を育むためには、実はちょっとしたコツが必要です。それらについては、第3回以降で詳しくお伝えしていきます。
・マネージャー自身が「あり方」を整えることで部下が自分らしさを発揮でき、チームの成果につながる
・上司が自分自身の不安・恐れに自覚的になると、適切な意思決定ができる
・現代のマネージャーには、相手の可能性を知る・自分自身の本当の願いを知るなどさまざまな「あり方」が求められる