こんにちは、自炊料理家の山口祐加です。日々の自炊を楽しみながら続けていくコツをお伝えする連載、第6回のテーマは「料理したくなる環境」についてです。
「『味が決まらず、ぼんやりする』の解消法」を読む
ここまではどうやって心地よく自分好みの料理を作るかについてお話してきましたが、そもそもどんなキッチンで、どんな道具を使って料理をするかは自炊のモチベーションに大きく関わってきます。今の家はキッチンが狭いから……と思っている方もいるかもしれませんが、極小キッチンでも楽しく料理できる方法をお伝えしますよ。
使いやすいキッチンは広さよりも動線で決まる
私は仕事柄、「料理が苦手」と感じている方のお宅にお伺いしていろいろなキッチンを見てきました。キッチンの広さは大小ありましたが、心地よく料理できるかどうかの問題は、「広さではなく動線にある」と感じました。
キッチンは広ければ広いほどいいというわけではありません。アメリカで豪邸のキッチンを使わせてもらったことがありますが、ガスコンロは6口あるし、とにかく広くて冷蔵庫まで何歩も歩かないとたどり着けません。小柄な日本人の私からすると、もうちょっと狭い方が使いやすいなと思った記憶があります。
では、どんな動線のキッチンが良いのか? 以下の図は私が以前住んでいた部屋と今住んでいる部屋の比較です。
料理家になる前に住んでいた部屋では、動線について考えたこともありませんでした。冷蔵庫とキッチン本体が離れているため、冷蔵庫から何か出したい時は毎度1、2歩歩いて行かなくてはなりませんでした。たかが1、2歩ですが、これが積み重なると地味にストレスだったなと今となっては思います。
現在住んでいる部屋に引っ越す前に、どんなキッチンなら使いやすいかを考えた末にたどり着いたのが「冷蔵庫から食材を出す→洗う→切る→調理する」が一直線になる動線です。冷蔵庫は右開きにして取り出しやすく、食材を出したらシンクで洗い、調理スペースで切ってコンロで火入れする。そして食器棚から食器を取り出して、盛り付け、出来上がったものは食器棚の上に置いておく流れになります。
冷蔵庫はシンクの真横か、シンクの真裏に置くことが重要です。そうすれば1歩か、あるいは1歩も歩かず食材が取り出せるので楽です。引っ越しをした後に早く片付けてしまわないとと、とりあえずここでと配置したまま生活を続けてしまう方も多いですが、ぜひ一度本当にこの位置でいいのだろうか? と検討してみてください。
極小キッチンの使い方
動線のお話をしましたが、一人暮らしサイズの1Kルームのキッチンなどでよくあるのがシンクのすぐ横にコンロがあるような「極小キッチン」です。調理するスペースもほぼなく、どこで野菜切ればいいの? と思ってしまうのも当然です。私は料理が好きなので、築年数を問わずキッチンの広さ重視で選んでいるゆえに住んだことはないですが、友人宅の極小キッチンで料理したことはあります。確かに狭いと使いづらい部分はありましたが、”1歩も歩かず料理できる”という魅力があることに気づきました。
上手く使う方法としては、シンクにまな板や頑丈な水切りラックを渡して調理スペースを確保するのがおすすめです。調理道具などに関しては収納が少ないと思うので、100均一などで売られている吸盤がついたフックなどを購入し、キッチン内の壁面を有効活用するのが良いです。食器や調味料、その他の備品に関しては、シンク下収納用のラックがニトリやアイリスオーヤマなどで販売されています。こちらも高さを活用することにより、デッドスペースが活用できるので収納力が上がります。
揃えておくと便利な道具たち
キッチンの広い狭いに関わらず、調理道具はなるべく少ないほうが収納場所も取らないですし、何がどこにあるのかわからなくなることもなく、シンプルに暮らせるのでおすすめしています。私は料理の仕事をしている割に調理道具はかなり少ないと思います。
基本的に、同じ用途のアイテムはひとつしか持たないと決めており、ザルもボールもひとつずつで済ませています。フライパンは20cmと28cmと卵焼き用で3つ、鍋は1リットルほど入る鋳物ホーロー鍋(STAUB)と味噌汁用の片手鍋の2つだけです。これらがあれば、かなり幅広い料理が作れます。一人暮らしの方で、もう少し気楽に料理したい場合には次のような道具をおすすめしています。
片手鍋(直径16cm 深さ6cm)、深めのフライパン(直径24cm)、シリコンベラ、包丁、まな板、ボウル、ざる、ピーラー、菜箸、おたま、トング、計量スプーン、 計量カップ、電子レンジ、炊飯器
これだけあれば、炒め物やサラダ、スープ類、パスタや丼もの、オムライスやハンバーグなどのごちそうまで作れます。私が皮を剥く野菜はじゃがいもだけです。なのでじゃがいもを料理しない方はピーラー不要かもしれません。トングはバーベキューなどで使うステンレス製のものだとフライパンのフッ素加工が傷つきやすいので、先のところだけ樹脂加工されているものがおすすめです。
計量スプーンは、浅いものではなく深さがあるものだと調味料が飛び跳ねず入りやすいのでおすすめです。こちらに私がおすすめしている具体的なメーカーを記載していますが、道具はその人に合うかどうか持ってみたり、試してみたりしないとわからないので実際に手に取って触ってみてから購入することをおすすめします。
料理は準備が肝心
キッチンのレイアウトや道具などが整ったところで、実際に料理しましょう! となるわけですが、料理は野菜を切るところから始まるのではなくそのもっと前から始まります。気持ち良く料理するためには、まずシンクを空っぽにしておく必要があります。調理中には使ったボウルやフライパンなど洗い物がでるので、前日の食器が残っていたらそれらが入りません。まず洗い物はリセットしてから始めるのが吉です。
また、調理中に使う「ふきん」を用意しておくと便利です。調理中に洗った野菜をまな板に置いてビショビショになった経験はありませんか? あれもふきんで拭けば一度できれいになります。フライパンから跳ねた油も気づいた時に拭いておけばシミになりません。
まな板で野菜を切るときに少しずつまな板が滑ってずれてイライラすることもよくあります。これも濡らしたふきんをまな板の下に敷けばずれません。洗い物が増えてイヤ! ということであれば、最初は数日使って使い捨てるダスターやキッチンペーパーなどでも良いので使ってみるとその使い心地の良さがわかるはずです。
調理中には野菜を切って少しの間置いておきたい時や、できあがった料理をテーブルに持っていく前に置いておく場所など、一時的に使えるスペースがあると大変便利です。極小キッチンの方は、キャスターがついているキッチンワゴンなどを活用すると良いと思います。
キッチンタイマーを活用してスキマ時間を作ろう
調理中は洗い物や冷蔵庫にしまうべきものが途中で出てきます。洗ってしまおうかなと思うけど、フライパンを火にかけているし目を離すのも心配。そんなときに私がよく使うのはキッチンタイマーです。炒め物なら1分、煮物なら5分など料理によって、少しだけ目を離す時間を決めてタイマーをかけるのです。
1分あれば、ボウルや箸を洗っておくことができます。5分あれば、次の料理の準備や、テーブルの片付けなどもできます。時間になればタイマーが知らせてくれるので、焦がしてしまった! なんて失敗も防げます。
たかが1分ですがちょこちょこと洗い物ができていると、最後に使ったフライパンしか洗い物が出ないなんてこともできて、その後の片付けも気楽になります。
また、同時進行が苦手で一つのことに集中するタイプの方にもタイマーはおすすめです。同時進行が得意な人は体感で「この料理にはこれくらいの時間がかかる」と分かっていますが、一点集中型の方は別の作業に取り掛かっていて、鍋の存在を忘れていた! というパターンがあると思います。そんな時は「自分は手際が悪い、どんくさい」と落ち込まず、「私はそういうタイプだから、次から時間管理はタイマーに任せよう」と考えましょう。
気持ちよく使い切れる、冷蔵庫の在庫管理方法
料理をすれば、玉ねぎ半分、ミニトマト5個など中途半端な食材が出てきます。肉もお得パックを買って一度に使いきれないこともありますね。それらを冷蔵庫にしまうわけですが適当に入れてしまって、冷蔵庫の奥から干からびたにんじんが見つかった……なんてことも。もちろん私も経験者ですし、今でもたまにやってしまいます。
いちいち断面にラップをするのも手間なので、私は中途半端な野菜はまとめて頑丈なビニール袋に入れてしまいます。次に料理をするときはその袋の野菜から優先して使うようにすると、迷子の野菜が出ません。
また、トマトなどラップをしないと水気が出てきてしまう野菜に関しては、繰り返し使える「フードハガー」というシリコン製のラップのようなものを活用してプラゴミが出ないようにしています。
肉や魚に関しては、一食分に小分けにして、タッパーなどに入れて冷凍することが多いです。使いたい分だけ使えるので、とても便利です。肉のパックを丸ごと冷凍するとその後の扱いが本当に不便なので、特に一人暮らしならばめんどくさくてもちょっと頑張って小分けにしておくと、数日後の自分が喜んでくれますよ。
また、冷蔵庫は上段・中段・下段と3〜4段に分かれていることが多いですよね。私は上段に賞味期限が長い保存食系を置いて、作り置きのおかずやなるべく早く消費したい豆腐などは中段・下段に置くことが多いです。全ての段に食品を詰め込んでしまうと、冷却効率が悪くなることと、新しく買ってきたものが入らないので、常に3〜4割は空間を開けておくことも心がけると良いでしょう。
これまでパーソナルレッスンでお宅にお伺いしてきましたが、キッチンを整理した後日、必ず「格段に使いやすくなって、料理したくなりました!」との言葉をいただいてきました。動線を少し変えて、道具の収納場所を使いやすいところに位置するだけで、自炊のモチベーションがぐっと高まるようです。皆さんもぜひお休みの日に、一度キッチンの環境を見直してみてくださいね。
レンジ加熱で気軽に作れる!ブロッコリーナムル

ブロッコリー 1個
ごま油 小さじ2
塩 ひとつまみ
ニンニクチューブ 2〜3cm
白ごま(お好みで)
1.ブロッコリーは食べやすいサイズに切る。耐熱皿にブロッコリーを入れ、大さじ1の水を加える。ラップをして600wのレンジで1分半〜2分加熱する。レンジから取り出してそのまま冷ます(冷水にはつけない)。
2.ボウルにキッチンペーパーなどでよく水気を切ったブロッコリーとごま油を加えて和える。油がブロッコリーに絡むまで混ぜ、塩、ニンニクを加えて和える。お好みで白ごまやすりごまを加える。
※ほうれん草や小松菜、にんじん、もやしなどの定番のほか、白菜、春菊あたりで作ってもおいしい(加熱時間は野菜によって調整する必要があります)
・調理の手順に沿ってキッチンの動線を見直そう
・料理は準備が肝心。まず取りかかる前に洗い物を済ませておくと後がラク
・タイマーを使ってスキマ時間を作り出すと気持ちよく料理が進む