広告収入が回復! 「テレビ局」関連株が上昇

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株式市場で「テレビ局」関連銘柄が買われています。QUICKが選定する9銘柄の平均上昇率は6.4%と、上昇した東証株価指数(TOPIX、2.2%上昇)を大きく上回りました(2月10日までの5営業日の騰落)。今回は、その中でも上昇率の大きい「テレビ局」関連5銘柄とその背景について解説します!

世界の広告市場は、コロナ前の水準を超えた

テレビ広告は、コロナ禍の経済活動の停滞により2020年に落ち込みましたが、現在回復基調です。新型コロナの変異型「オミクロン型」が猛威を振るうなかでも、経済活動との両立を目指す動きが世界的な潮流になりつつあるのが要因のようです。

電通グループが世界59市場から収集したデータによると、2020年の広告市場は7.1%減少しました。ところが、2021年は17.0%増え、規模としてもコロナ禍前の2019年を上回ったもようです。さらに、2022年は前年比+9.2%、23年は+4.6%と伸びる見通しです。牽引役はオンライン上のデジタル広告ですが、テレビ広告も健闘しています。2022年の日本のテレビ広告市場は3.2%伸びる見通しです。

民放キー局5社は業績予想を上方修正

広告収入の回復を受けテレビ局の業績は回復が鮮明です。2月10日までに出そろった民放キー局5社の2021年4〜12月期決算では、全社が2022年3月期の売上高や利益の見通しを上方修正しました。番組に関係なくテレビ局が定める時間に放送される「スポット広告」が好調なことが背景にあります。

このほか、動画配信サービス用のコンテンツ販売も伸びています。また、コロナ禍による広告収入の減少を受け、各社がコストの抑制に動いたことも利益を押し上げる見通しです。業績回復の勢いが増していることから、テレビ局関連銘柄への買いが続いています。

制作費抑制で利益率が大幅改善!【日本テレビHD】

上昇率1位の「 日本テレビHD 」は、メディア・コンテンツ事業に加え、スポーツクラブ「ティップネス」の運営など生活・健康関連事業、不動産事業も手掛けています。

2月3日に発表した2021年4〜12月期決算は、グループの主力である日本テレビ放送網でスポット広告が好調に推移。広告収入が前年同期比12.6%増となりました。また、コストの大半を占める番組制作費は、2.8%減でした。

2022年3月期の業績見通しは、売上高は従来予想を50億円上回る4050億円、営業利益は90億円上回る550億円と上方修正しました。会社の予想通りとなれば、経営効率の高さを示す売上高営業利益率は13.6%と前期から4.8%ptの大幅な改善となり、過去10年で最高になる見通しです。「新しい成長戦略」として、総制作費を過去20年間で最も抑制する改革に踏み切る方針を示している同社。売上高の増加だけでなく、コストの抑制で利益が出やすくなっているとの見方から買いが入っています。

都市開発・観光事業も好調!【フジ・メディアHD】

上昇率2位の「 フジ・メディアHD 」は、主力のメディア・コンテンツ事業に加え、マンション販売やオフィス賃貸、ホテルや水族館などリゾート施設を運営する都市開発・観光事業も手掛けています。

2月3日に発表した2022年3月期の業績見通しは、売上高は従来予想を33億円上回る5234億円、営業利益は21億円上回る296億円と上方修正しました。スポット広告が好調に推移していることから、スポット広告の収入予想を前期比15.6%増から16.8%増に引き上げ、全体の広告収入が前期比で10.1%伸びるのが主因です。また、これに加え、オフィス賃貸などのビル事業が好調なことや保有物件の売却もあり、都市開発・観光事業が40.2% の大幅な増収見込みであることも業績を支えています。

希望退職者の募集で特別損失を計上するため、純利益の見通しは据え置きましたが、構造改革により収益性向上を掲げる同社。制作費運用や人事政策など、構造改革の進展で来期以降の収益性が改善するとの期待が高まっています。

動画配信など、ネットメディアへの対応も焦点に

そのほかにも、主力の放送事業でテレビスポット収入などが増加したとして、2月7日に2022年3月期の業績予想を大幅に上方修正した「 朝日放送グループHD 」。好調なテレビスポット収入に加え、海外向けのコンテンツ配信事業が好調だとして、2022年3月期の業績予想を引き上げた「 TBSHD 」。番組制作費のコストコントロールなどが功を奏し2022年3月期の業績予想を引き上げた「 テレビ朝日HD 」。広告収入が好調なうえ、アニメ部門のコンテンツ配信が好調な「 テレビ東京HD 」。これら4社にも収益改善を好感した買いが入っています。

広告市場はデジタル広告が成長を牽引しているものの、テレビ広告の回復基調も当面は続きそうです。テレビ局の業績もこれに伴い回復するでしょう。一方で、各社が保有する豊富なコンテンツを、動画配信サービスなどネットメディアにどれだけ展開していけるかも焦点です。収益の改善基調がいつまで続くか、市場関係者の関心は高まっています。