難解かつ退屈に感じる会計を「シンプルな図法」で解説。「ROEって何だっけ?」と思いつつ、わかっているフリをしてきた人を最短距離で救います。エンタメ性溢れる事例から「読書した感」も味わえる二度おいしい本。
会計は社会の共通言語! 苦手意識のある人にこそオススメの一冊
コンセプトは「入門書の前に読む入門書」。学習参考書的な「圧倒的なわかりやすさ」を社会人向けの本で体現した印象です。
120以上ある図解も多ければよいということはなく、すべてを「同一パターンの図法で解説する」という徹底ぶり。作り手として難度の高いチャレンジですが、読者を挫折させないその姿勢に頭が下がります。
扱われる会計用語は(まさに最重要である)15個のみですが、それぞれの意味が見えるにつれ、自分と社会とのつながりも見えてくる構図。
用語事例にも「引きがある(=記憶に残るエピソードが多い)」ため、読んでいて飽きが来ません。「動物園のペンギンは固定資産である」的なビジネス小ネタがあるかと思えば、決算書を紐解きつつ、業界や人気企業のカルチャーを浮き彫りにしたり。
たとえば、「株価×株数」で推移する「時価総額」からは電気自動車のテスラの例。その額42.8兆円(!)とトヨタの2倍強にあたるわけですが、テスラ社の実際の販売台数はトヨタの4%しかないとのこと。
「時価総額」は必ずしも会社の価値とイコールではなく、現時点での投資家の期待の表れです。テスラであれば環境配慮的な気運であったり、イーロン・マスクという起業家への評価も大きい。
「会計は社会を見るレンズ」という本書の言葉通り、数字から時代の空気が透けて見えます。
「会計とは社会の共通言語。知ってさえいれば、どんな世代のどんな立場の人とも対話できるようになる」と著者は言います。
一方で、もしも、理解が進まない箇所があったとしたら??
その際は「今の自分にはまだ必要ないんだな」と一旦据え置いてしまってよいとのアドバイスも優しい。その意味でも、会計アレルギーの人にこそ読んでほしい一冊です。