少子化なのに赤ちゃん銘柄? と思った人もいるかもしれません。しかし、それは日本国内の話。世界では毎年1億人以上の赤ちゃんが生まれ、人口は増え続けています。1950年に25億人だった世界人口は、2015年には73億人。約3倍になっています。しかも、国連の報告書によると、2100年には112億人に達するとも言われているのです(国連「世界人口推計2015年改訂版」)。人口が増えると、まず業績拡大が期待できるのは赤ちゃん関連。赤ちゃんに愛情をたっぷりそそぎ、革命を起こしてきた「赤ちゃん銘柄」をご紹介します!
布から紙へ! オムツ界に革命を起こす【ユニ・チャーム】
オムツは赤ちゃんの肌に24時間触れ続けるもの。そんなオムツについて、快適さを追求し続け、革命を起こしてきた会社が「 ユニ・チャーム 」です。
日本では、江戸時代から長らく布オムツが主流でした。その習慣を変えて、 紙オムツが普及するきっかけを作ったのが、ユニ・チャームの「ムーニー」です。1981年に世界で初めて紙オムツの立体化に成功し、大ヒットしたのです。さらに1992年、オムツの概念を変える革命を起こします。世界初のパンツタイプの「ムーニーマン」を発売。赤ちゃんの動きを邪魔せずにはかせられると、こちらも大ヒットしました。
オムツは今も進化し続けています。ユニ・チャームは2016年、赤ちゃんの柔らかいうんちが背中からモレてしまうのを防ぐオムツを開発。オムツの背中に、外向きに広がるポケットを付けました。こうすることで、うんちがポケットの中に収まり、モレにくくなったのです。アジアではシェアトップ、世界では第3位を誇るユニ・チャームのオムツ。今後も世界にどんな革命を起こしてくれるのかわくわくしますね。
世界の赤ちゃん4人に1人がお世話になっている?【日本触媒】
オムツ界での革命は、とりかえ回数でも起こっています。1982年に7.7枚だった1日のオムツの平均使用枚数は、1990年には5.5枚へと減少しました。立役者は、紙オムツに使われている「高吸水性樹脂」。水分を吸収すると、ゼリー状になります。吸水力は、1gの樹脂で水100~1000g。保水力も高く、一度吸った水分は、圧力がかかってもほとんど外にでません。
そんな「高吸水性樹脂」の世界トップは、「 日本触媒 」。長い間世界をリードしてきた不動のエースです。しかし、実はこれは偶然の産物だったのです。1972年、日本触媒の研究員は、水に溶ける新しい化合物をつくろうと研究していたものの失敗。水に溶けるどころか、水を吸って大きく膨らんでいる化合物ができてしまいました。しかし、それを見逃さず、「むしろ吸収性の材料として使えるのではないか!?」と発想を転換。製品化しました。
いまや世界の紙オムツの約4分の1に使われる日本触媒の「高吸水性樹脂」。ときには研究員がオムツをはきながら、赤ちゃんが気持ちよく過ごせるよう開発を続けた賜物です。しかも近ごろでは、保水性が高いことから砂漠化を防ぐ手段としても使われているとか。発想の転換で失敗を大発見に変え、赤ちゃんの必需品になり、砂漠を緑化しようとしているなんて驚きです。
ティッシュ出し放題! リモコン触り放題!【ピープル】
赤ちゃんはティッシュ箱からティッシュを取り出すのが大好き。ちょっと目を離したすきにティッシュが散乱している……。そんな現場に遭遇したお母さん、お父さんは多いはず。そんな悩みを解決するおもちゃが「いたずら1歳やりたい放題」。赤ちゃんが触りたがる、ティッシュ、リモコン、電話、鍵、マヨネーズなどが1つにまとまっています。もちろん偽物ですので、赤ちゃんはティッシュ出し放題です。
このおもちゃをつくったのは「 ピープル 」。1977年の設立以来、おもちゃ界に新しい風を吹き込み続けています。1985年発売の「いたずら1歳やりたい放題」もそのひとつ。生活用品をおもちゃにする発想はそれまでありませんでした。このため、業界での前評判は最悪でした。しかしふたを開けてみると、初年度に40万個を売り上げる大ヒット。いまや30年超のロングセラー商品となりました。
2016年にはニューヨークに子会社を設立することを発表したピープル。今後のグローバルな活躍が楽しみです。
100年前に日本初の粉ミルクを作った和光堂【アサヒグループホールディングス】
「小児科の生みの親」が赤ちゃんの命を救うためにつくった会社があります。それは和光堂。
「
アサヒグループホールディングス
」傘下の会社です。日本で初めて小児科をつくった医師、弘田長(つかさ)博士が、1906年に設立しました。当時の日本の乳幼児死亡率は15%(現在は0.2%)。これをなんとか低下させたいと考えたのです。
そんな創設者の想いを引き継いだ和光堂は、赤ちゃんの命にまっすぐです。例えば、1917年に発売した粉ミルク。この開発のきっかけも、赤ちゃんの命を救うことでした。当時は、栄養失調や傷んだ牛乳を飲んで命を落とす赤ちゃんがたくさんいたのです。そして、お手本になる製品や文献がない中、実験に取り組み、ついに粉ミルクの製品化に成功しました。学者たちが「牛乳を粉末化するなんて不可能だ」と首を横に振っていた中の快挙でした。
そして、粉ミルク発売からちょうど100周年となる今年。「乳幼児の栄養に関する研究」を対象に研究助成を行うことを発表しました。創業時からの想いを忘れずに、赤ちゃんの命を守ることに全力をささげる和光堂。これからも時代をリードする商品づくりに期待したいです。
「母乳実感」で赤ちゃんとお母さんを救う【ピジョン】
赤ちゃんにとって欠かせない哺乳びん。ですが、2割ほどの赤ちゃんは、哺乳びんが原因でお母さんのおっぱいから母乳を飲めなくなることがあります。これは、哺乳びんとお母さんのおっぱいで、吸うのに必要な力が違うためです。哺乳びんのほうが弱い力で吸えるため、こちらに慣れてしまうと、お母さんのおっぱいから母乳を吸う力がなくなってしまうのです。
そんな赤ちゃんを救うべく立ち上がったのが「 ピジョン 」です。60年にわたり赤ちゃんがママのおっぱいを飲む口の動きを研究。おっぱいと同じ飲み方ができる「母乳実感」哺乳びんを開発しました。これがお母さんの間で大ヒット。国内売上シェアでトップを獲得しました。病院や産院でも一番使われる哺乳びんになっています。
お母さんのおっぱいと哺乳びん、両方での育児を可能にすることで、お母さんたちの子育てをサポートしてきたピジョン。いまや海外にも進出し、売り上げの半分以上を占めています。最近ではアフリカにも進出。ますます世界のお母さんたちをサポートしてくれることでしょう。
赤ちゃんへのひたむきな愛を原動力に、革命を起こしてきた企業をみてきました。赤ちゃんはわたしたちの未来そのもの。赤ちゃんの命を守り、成長を応援してくれるこのような企業こそ、私たちが一番応援するべき企業なのかもしれませんね。
今回のテーマで取り上げた上場企業
ユニ・チャーム
日本触媒
ピープル
アサヒグループホールディングス
ピジョン