そのとき、「お金」で歴史が動いた

今日からお金賢者になれる「1分書評」/ 日興フロッギー編集部

古今東西史を縦横無尽に行きつ戻りつ、一種絵巻物のようなムード。「重大事件の裏側でこんな風に経済は動いていたのか!」と、ある人には新しい気付きを、ある人には知識を俯瞰する楽しみをもたらしてくれます。

世界史から学びたい金融のヒント! 日本のバブルの狂乱に今何を思うか?

タイトル通り、お金にフォーカスをあてた世界史の本。ナポレオン時代の金融システムの発展からコロナ後の世界予測まで1日1話、読み切り連載のようなドラマが展開していきます。著者は韓国の経済学者ですが日本経済についての言及も多く。

たとえば、「江戸時代の日本で産業革命が起こらなかったのはなぜなのか?」。興味深いトピックの、著者の見立ては爆発的な人口増加のせい。人口が増えたことで低賃金での労働力が手に入りやすくなり、逆にイギリスのような機械化が進みにくい土壌になったのではないかと考察します。

円高不況からバブル崩壊の日本経済については7話分、まるまる一章分を割いています。この時代に「世界は『日本』と『日本以外』に分かれた」とも。バブル期を知らなくても崖っぷちでの狂乱ぶりになんともいえない読後感を覚えるはず。

まぁ、当時の数字がスゴイです。80年代後半の日本の株式市場のPERは67倍。 意味するところは「企業の株価が年間収益の67年分もある」ということ。すでに成熟期に入っていた日本経済ではまずありえない数字だったわけですが、そのありえなさは地価も同様でした。

1900年代初頭対比で日本の不動産価格はなんと31倍(他国の平均は同4倍)。その後25年間で日本の地価は半分に下落しています。

全体的に問いの立て方が上手な本です。
「(産業革命時)フランスが永遠の二番手から抜け出せなかった理由」だったり「(東アジア経済が)低賃金・不平等・低学歴の三重苦を解決した方法」であったりと、雑誌の電車中吊り広告のごとく続きが読みたくなる。

学生時代に社会の資料集で見たような肖像画やカラー写真もたっぷり。懐かしい既視感もあいまって370ページ強のボリュームも不思議と厚さを感じませんでした。