PER(株価収益率)は会社の利益と株価の関係を表す投資指標の1つです。
株価を1株あたり利益(EPS)で割ることで計算でき、一般的には10倍、15倍というように倍率で表され、倍率が高くなれば「会社の利益に対して株価が高くなっている」ことを表し、割高と判断されます。反対に低くなれば割安と判断します。
(もしくは、時価総額÷当期純利益)
コロナ禍の追い風「だけじゃない」ケース
テレワークの普及や巣ごもり消費など、社会の変化を追い風に業績が好調な企業は多くあります。ただ、これから先も継続的に業績を伸ばし、株価やPERが上昇するにはさらなる「押し上げ」要素が必要です。
そこで今回は社会変化による足元の追い風だけではなく、地道なリソース効率化などにも取り組んでいる企業をご紹介します。
case60:コクヨ
今回ご紹介するのは、キャンパスノートなどの文具やオフィス家具などでおなじみの「 コクヨ 」です。
同社はオフィスリニューアル・インテリア家具などを手掛ける「空間価値ドメイン」、オフィス通販事業が中心の「ビジネスサプライドメイン」、国内外に使いやすい文具を提供する「グローバルステーショナリードメイン」の3部門を展開しています。
予想PERは底打ち感
コクヨの予想PER(東洋経済予想)は18.5倍と、過去平均(51.0倍)と比べると低い状況です。ただ、これは2010~11年に業績が落ち込んだことでPERが高くなりすぎていたことが要因の1つでもあります。
それ以降を見れば、2020年までは低下傾向が続いていましたが、足元では底打ちの兆しが出始めていることが読み取れます。その背景はどこにあるのでしょうか。
インテリア「アクタス」はコロナ前超え
新型コロナウイルスの感染拡大などにより、テレワークが普及し、私たちの働き方や働く場所は大きく変わりました。その追い風を受けている会社の1つがコクヨです。
テレワークが増えたことで、オフィスのリニューアル需要や家のインテリア需要が高まりました。同社が展開するインテリア販売「アクタス」の売上高を見ると、2021年度の1−6月期はすでに2019年度を超えていることがわかります。
効果は10億円超!? 「筋肉質な経営」へ
また、オフィス通販事業を中心とする「ビジネスサプライドメイン」では、リソースの効率化を進める「マイグレーション戦略」が進展中です。同社の「マイグレーション戦略」は、商品・物流・営業体制のそれぞれにおいて、コストの削減やリソース重複の解消などを進める戦略を指します。
その効果は、2021年度に2018年比で10億円を超えると見込まれており、まさにいま同社は筋肉質な経営に生まれ変わろうとしていることが読み取れます。
①これからの業績を考える
②会社の人気度を考える
③投資家の心理を考える
今回は、①からコクヨを見てきました。コロナ禍におけるライフスタイルの変化による追い風だけでなく、地道な社内リソースの効率化を進める同社。その成果が業績にも表れ始めていることから、株価やPERが上昇傾向にあるのかもしれませんね。