1980年に発売し日本のプロテイン市場を築いてきた『ザバス』。目下、新たなユーザーを獲得しているのが、その飲料タイプである『ザバスMILK PROTEIN』だ。コロナ禍の運動不足解消目的や女性層の購入も目立ち、2016年の発売から5年ほどで売上は10倍以上に。躍進の背景を株式会社 明治 マーケティング本部の平松貴志さんに伺った。
3度目の正直で大ヒット! 『ザバスMILK PROTEIN』【前編】を読む
常温保存、長期保存OKのブリックタイプが売れ筋
実はブランドとしては形状でのすみ分けはないんです。どちらも「週1回以上運動をする方」がターゲット。「粉末はアスリートやガッツリ運動している方向け」「ドリンクタイプは初心者が飲むもの」といったイメージがあるかもしれませんが、1回分のたんぱく質量はほとんど変わりません。
『ザバスMILK PROTEIN』はプロテインの間口を広げた商品である一方、上級者にも十分に対応できる商品だと自負しています。両方を場面に応じて飲み分けている方も多いですよ。
たとえば、430mlのボトルタイプも、200mlのブリックタイプも、たんぱく質量は同じです。ですが、飲み心地がそれぞれ違うんですね。「たんぱく質を効率よく摂りたいか」「スポーツ直後はすっきりとした飲み心地がいいか」でも変わってくるところだと思います。
発売当初はサイズによってたんぱく質量に差がありました。ですが、お客様の要望もあり、2018年に改良。今は2つのサイズともたんぱく質量は同じですが、濃さが違います。430mlの方がスッキリした飲み心地なので夏場だったり、ランニングの直後などはこちらの方が飲みやすいとは思います。
一方、ブリックタイプは携帯に便利な大きさなので、ジムにお持ちになる方も多いです。「少ない量でたんぱく質を効率よく摂れる」という利点はもちろん、常温保存も可能です。買いだめもできることからネットでケースごと購入される方もいますし、シリーズの中では販売物量が一番多いですね。
コロナを機にプロテイン市場は伸びている
コロナを機に健康意識は高まり、運動不足を心配してYouTubeやSNSで家トレ動画を視聴する方も増えました。その流れから「運動直後にたんぱく質を摂った方が良い」「引き締めたいならソイプロテイン」などプロテイン関連の知識も拡散されやすくなったと感じます。ステイホームになると、粉末の『ザバス』の購入が増えるという例もあります。
本来、男性の比率が高かったプロテインですが、女性の購入が増えているのもこの1年の変化ですね。(株)明治の調査では、2018年と比較し2020年は女性のプロテイン購入率が40%も増加したことがわかっています。
今春は『ザバスミルクプロテイン』で女性に向けた「ミックスベリー風味」や「ミックスフルーツ風味」を発売しました。たんぱく質だけではなく鉄分やビタミンも加えています。AIで女性好みの味を算出したものなのですが、実をいえば、私自身、ブランドの中で一番好きな味だったりします(笑)。
「健康によければ味は二の次」は食品メーカーとして違う
大学時代はゴルフ部で『ザバス』をよく飲んでいました。体育会系でも飲んでいる人の方が少なかった時代からのユーザーなので、マーケティング部に配属された時は感慨深い気持ちでしたね。表現が難しいのですが、社内でも『ザバス』は特に「明るい」「前向きなイメージ」が強いブランドなんですよ。
入社後の数年間はドラッグストアで『ザバス』の営業もしていました。バイヤーの方にフットサル大会に誘われ、『ザバス』のサンプルを持ち込んだところ、「プロテインなのにおいしいね」と言われた嬉しい記憶もあります。
プロテインというのは「おいしくない」「でも、身体にいいから仕方ないよね」と評価されがちです。ですが、「健康にいいもの」だから「味は二の次」という考えは食品メーカーとしてやはり違うと思っているので。
今は、ドラッグストアに行くとプロテインがほとんどのお店で棚一本分くらいはあります。一方、自分が営業をしていた7、8年前はその半分もあるかないかでした。自分の体感に照らし合わせても、急速な広がりを感じますね。
プロテインを飲んでいる人は人口の10%足らず。まだまだ訴求すべきことがある
健康やスポーツへ関心が強まる機運はこの先も間違いなく続きます。期待は大きいです。ただ、浸透してきたとはいえ、プロテインを飲んでいる人は日本の人口の10%足らず。アメリカやイギリスと比べると格段に少ないんですね。
『ザバス』が80年代にスタートした頃、プロテインといえばボディビルダー的なイメージがついて回りました。今はどうかというと、実は完全に払しょくできてはいません。「昔、プロテインを飲んだことがあるけどおいしくなかった。だから、もう飲まない」という声を聞くこともあります。お客様調査をすると「まだまだ訴求が足りないな」とも思います。
われわれプロテインを販売している側の人間は知識が先行し、期待値が高くなってしまうことも多いです。けれど、そうなるとマーケティングにズレが生じますから率直な声は大切です。「プロテインが浸透してきた」のは事実でも、それは「運動はしておいた方がいいよね」程度の認識」だと肝に銘ずるようにしています。
「プロテインはおいしくない」と感じてしまった方に、いかにもう一度飲んでいただくか。プロテインの知識をいかに普及していくか。「おいしい」「飲みやすい」と思っていただくためにブランドとしてさらにできることはないか。
もう一度飲んでもらう役割は今回お話した『ザバスMILK PROTEIN』であったり、今後、全国に展開していくヨーグルトタイプ(※2021年9月現在はエリア限定。順次全国発売予定)などに期待しています。「おいしくて続けられる」ことは何より大切。アスリートの方やスポーツをして健康的な生活をしたいすべての方に、より良いプロテインブランドを提供したいと思っています。