人を分析する「あーる流イナゴ投資」で億超え~後編

リアル投資家列伝・ 「イナゴ投資」を極めて億り人になる方法/ あーる

他の投資家が選定した銘柄をそっくり真似する「イナゴ投資」から始めたあーるさん。批判されることもあるイナゴ投資ですが、あーるさんはイナゴ投資を極めることで億り人となりました。

とはいえ、あーるさんが行なっていたのは単純なイナゴ投資ではなく、自分なりの方法論を追加した、「あーる流イナゴ投資」です。「数字ではなく人を分析する」「他の投資家の思いを推察する」など独特なあーるさんの分析術、必読です!
「イナゴ投資を極めて億り人~あーるさん前編」を読む

「イナゴセンサー」で豊穣な実りを刈り取る!

イナゴ投資から始まったあーるさんだが、独自の方法論を加えていく。前回紹介したIRセミナーの活用もそのひとつで、ほかにもテーマ性や決算といった要素を考慮するやり方も。

「同じ20%成長の会社でも、テーマ性がある銘柄とそうでない銘柄とでは、値上がり率が大きく変わります」

市場では折々のテーマやキーワードがある。例えば、サブスクリプションやワクチン、AIなどだ。

「しかし、あるテーマに乗ろうにも候補となる銘柄は多い。『さて、どの銘柄がいいんだ』と迷ったときに駆使するのが、イナゴセンサーを発揮して作ったリスト。デフレというテーマが盛り上がっていたら、このリストの中からデフレに関連する銘柄を探すんです。つまり、イナゴするかどうか判断基準のひとつがテーマ性と言えますね」

リストはどうやって作っていくのだろうか。

「日夜、ツイッターを検索し、優れた投資家を探しています。フォロワー数と分析力は比例しない。フォロワーが50人しかいないような人でも優秀な人がいる。そうやって見つけ出した投資家のリストはイナゴセンサーの源泉ですし、彼らが注目する銘柄を100~200銘柄ほど、ウォッチリストに入れてあるんです。「 ウェッジHD 」での失敗があるのですぐにイナゴするようなことはせず、一旦このリストに入れておきます」

あーるさんが投資する銘柄は、すべて誰かが発掘した銘柄ということになる。

「自分でスクリーニングして銘柄発掘することはまずありません。候補銘柄の選定は分析力の優れた人に任せ、どれを買うかの最終判断だけを自分で行ないます」

たとえばテレワーク。新型コロナウイルスの拡大初期、テレワークが相場のテーマとなった。

「テレワークと言っても関連銘柄は多い。どれを買うか、悩むところですが、自分はウォッチリストを開きます。するとテレワーク関連では当時なら、井村俊哉さんが注目していた「 サイボウズ 」、別の著名投資家の「 ブリッジインターナショナル 」、福証(福岡証券取引所)上場ゆえに大化け候補として熱狂的なファンがいる「PBシステムズ」が出てくるんです」

恐るべし、イナゴセンサー……。

ウォッチリスト×テーマ性・好決算

「自分より優れた投資家が持っているということは、いい銘柄だろうと推測できます。そんな銘柄がテレワークというテーマ性を帯びることで、上がる確率はさらに高まる。そうした銘柄を買っていくんです」

以前のあーるさんなら即座にイナゴしていただろうが、今はすぐに飛びつかず自分で調べた上で市場のテーマと合致するタイミングや材料などを待つ。

「テーマ性もそうですし、あとは決算ですね。ツイッターのある有名アカウントから学んだことが『決算至上主義』。ウォッチリストに入れてある会社の決算分析を自分で細かくすることはないですが、よかったか悪かったかは、うっすら見ています。『誰が見てもいい決算が出たら買う』というのは基本です」

好決算が出たときに注目するのは、他の投資家がどんな「思い」で決算の日を迎えたか、だ。

「必ず見るのが『信用買い残』(信用取引で買われて、まだ決済されていない株の残高)。これが積み上がっているということは、個人投資家が『いい決算が出るだろう』と期待して信用買いを積み上げながら決算発表を迎えたということ。好決算が出ても『材料出尽くし』で売られることがありますから、投資家の心理を読むことは大切です。信用買い残に加え、チャートからも『個人投資家がどんな思いで決算発表の日を迎えたか』を想像できます」

決算発表に向かってジリジリと買われていたら好決算に期待した人が事前に買っていたと解釈できるし、とくに動きがなければ個人投資家は無関心だったということにもなる。

「事前の思いよりも強い数字が出たサプライズだったのか、期待ほどではなかったのか、と照らし合わせるんです」

「思い」がそのまま文字となるSNSにも着目する。

「ツイッターを銘柄名で検索すれば、他の投資家の思いを覗けます。昨年だと「リグア」という銘柄でツイッターが役に立ちました」

リグア 」は時価総額50億円以下の小型銘柄。整骨院向けのコンサルティングという特殊な事業で、知名度も低い。

「7月、ある投資家のツイートがキッカケでした。いろいろ調べた上で購入。8月の決算発表でストップ高しましたが、ツイートは少なく気づいている人も少ないだろうと思いました。ストップ高とはいえ、まだ気づかれていないなら、これから買われてストップ高が上昇の初動となる可能性もある。ストップ高の翌日にさらに買い増ししていきました」

初心者のツイートにも投資のヒントがある

あーるさんが参考にするのは決して上級者だけではない。

「雰囲気を大事にしているんです。最近はYouTuberの影響も大きくなっていますが、自分は初心者からベテラン、逆指標として有名な人の放送まで見ています。初心者とはいえ市場参加者のひとり。その買い、売りが株価形成の要因です。だから初心者の考え方も貴重なんです」

そうやってつかんだ市場参加者の「雰囲気」から行けると判断したリグアに、あーるさんは資金の7割を投じた。相当な集中投資だ。

「井村俊哉さんから学んだことですね。あの方も厳選した2、3銘柄への集中投資スタイル。集中投資はリスクが高いと言われますが、本当にいい銘柄だけに集中したほうがリスクが少ないんじゃないか、と話していたのを聞いて、自分も銘柄を絞っています。その代わり、損切りは早い。3%~5%くらいを目安に値下がりしたら10%以内で損切りします」

カエル先生の一言

井村俊哉さんは元芸人の億り人です。2017年に運用資産1億円、20年に5億円、21年に10億円を突破しました。100万円から驚異的なスピードで資産を増やしている井村さんのインタビュー記事はこちら。
株芸人から億トレへ〜井村俊哉さんインタビュー【前編】

上がると思ったのに上がらない、思ったほど業績がよくない、そんなときはサクサク切って次の買い時を待つ。

「10回のうち8回ほどは損切りです。その代わり利益はなるべく大きく『半年で2倍』をめざす。打率は低くてもホームラン40本! 野球ならそんなイメージですね。2割が大きく値上がりしてくれればいい」

7月に買って8月の決算発表後に買い増したリグア株だが、10月までにはすべて売却していた。売却するきっかけとなったのもツイッターだ。

「2倍になったあたりで、ツイッターでも話題になることが増えた。『みんなが知らないうちに買って、みんなが知ったら売る』というのも基本です」

みんなに知れ渡れば、これから買ってくる人はいない。つまり上昇の終焉ということになる――そんな考え方だ。

子ども時代から「人」との勝負が好きだった

すぽさんブログの研究、経営者の熱量測定、他の投資家の思い――あーるさんに共通するのは「人」の分析だ。

「相手の考え方、他の人の思いにフォーカスするやり方ですよね。思い返すと子どもの頃からそうでした。将棋のような、相手との駆け引きや先読みするゲームが好きだったんです。相手が”穴熊”で来たら”角交換”でーーなんて具合に、相手との先読みや駆け引きするゲームが好きでしたし、投資に限らず『この人は今、何を考えているんだろう?』と想像するのは、今も好きです」

好みとするのは人を相手にするゲーム。だからか、馬を相手にする競馬は不得意だった。

「1年、2年くらい競馬にハマった時期がありました。血統がどうだ、競馬場との相性はどうかと研究したんですが勝てない。毎週のように競馬場へ通いましたが、負け越してやめました」

あーるさんが得意とするのはやっぱり、人だ。そこにはあーるさんが「将来がない」と嘆いた接客業に勤めることの強みもあるのかもしれない。

「いろんなお客さんが来ますからね。顔色や表情、仕草などから相手の思いを察しますし、それが投資に活かされている部分もあるのかもしれません」

リーマン・ショックと東日本大震災、2つのショックから始まった、あーるさんの投資遍歴だが2020年8月、とうとう億の大台へとたどり着いた。

「オフ会も刺激になりました。コロナ禍以前は2、3ヵ月に1度のペースで参加していました。オフ会で知り合った人から『億りました』って連絡が来たんです。身近な人が億り人になったと聞き、自分もなってやるぞとモチベーションになりましたね」

オフ会は、あーるさんが重視する他の人の「思い」をヒアリングする場でもある。

「自分がいいと思って買った株を他の人はどう見ているのかを知りたいんです。自分には死角になっていたことを知れることがあるので」

成功したいなら最初に失敗したほうがいい

投資を始めてすぐ2度も大暴落に見舞われた経験が、後々につながったとあーるさんは述懐する。

「最初に失敗してよかったと思います。成功者が『これをやったらダメ、こうやろう』と教えてくれますが、それでも最初は絶対失敗します。どうせ失敗するなら少額のうちに失敗したほうがいいですよね」

100円(100ポイント)から株が買えるフロッギーなら失敗しやすい。

「100円から買えると、ドルコスト平均法も使いやすいですね。自分も大きく買いたいときはまとめて買わず2、3日から1週間くらいに分けて買うようにしています。最初は少額でものちのちの実りは大きいですから」

あーるさん自身、いまだに失敗することは多いという。

「今週もイナゴして失敗したばかり。「 プレミアアンチエイジング 」という化粧品会社が上がっていたので、同業の会社も上がるだろうと安易にイナゴしたのが間違いでした。冷静に考えればPERは割高水準。普段なら買わないはずの銘柄でした。自分で調べたつもりでいても、誰かにいいって言われると、つい手を出してしまうんです」

億り人でも失敗があるのだから、初心者ならなおのこと。最初は少額で始めて失敗から学ぶのがよさそうだ。

先輩投資家を真似することから始めて億り人へと登りつめたあーるさんのやり方は、これから株を始める人の参考になりそう。ただ、初心者に失敗はつきもの。あーるさんが言うように、少額のうちに失敗して学んでおくことが大切なのかも!