第1話「なんとなく貯蓄A子と金銭感覚バブリーB美。本当に賢いのはどっち?」を読む
どうも。
29歳のA子(独身)っていうか、今のところ独身です。
今日はB美とサシ飲みです。
B美?
そうです。この春同じ部署に異動してきた例のB美(25)と、です。
この前のランチで
「センパイ、今度飲みに行きましょ♡」
と誘われ、
今日は水曜。ノー残業デー。
ノー残業デーに残業して頑張ってる気持ちになってたけど、最近ちゃっちゃと帰るB美に感化されて、やることが終われば思い切って定時でPCをシャットダウンするようになった。
今日も集中してたらあっという間に18時。
さあPCをシャットダ……
はっや!!!!!!!!!!
「私、定時になったら光のスピードでPC落としますよ」
20~34歳までのF1女子の月平均残業時間は約20時間。しかし、なんとなく定時で帰るのが気まずいと感じている様子。
だからついつい1時間くらいは「様子見て残業します」という女子も多い。本当は定時で帰れる勇気が欲しい。
今日は、B美がよく行くという会社近くのお店へ。
この女、金銭感覚がしっかりしていると言っても、やはりキラキラ女子。
きっと、
と、口癖のように言うんだ。
まあいい。B美の歓迎なんだし、B美が行きたいところに合わせる。
だってほら私、大人だし。
そんなことを考えてたら、通ったこともない裏道に来た。
そこには、赤提灯が灯り、いいにおいがするこじんまりとした居酒屋が。
なんかいい……。
串5本盛り合わせ、530円。
本日のお刺身、590円。
だし巻き卵、300円。
チェーン店ほど激安ではないが、なかなか良心的な価格設定。
ナイスセレクト、B美。
コスパは重視したいが、20代後半になるとチェーン店はなんとなく気が引ける。1回の飲み会はひとり3000円以内に納めたい。できれば2000円台。3000円を超えるとちょっと高い。
「わたし、生で!」
早速注文するB美に遅れぬよう、わたしも便乗した。
「じゃあ、とりあえず私も!」
そうして、注文したビールと美味しいおつまみを食べながらB美とたわいもない話をする。
最近みているドラマのこと、靴擦れした足の対処法、会社の上司のカツラ疑惑の真相。
そう、実家の母が良縁祈願に神社に行っていることを告白したのだ。
「まじですか、それ!?」
「そう、まじなの~へへ」
ヘラヘラしながら自虐気味に言った。ちょっと泣きそうになった。
「っていうか、センパイって結婚願望あるんですか?」
「まあ……そうだね。周りは結婚どころか、もう子供もいたりするし。そう思うと、どんどん自分だけ置いていかれる感じしちゃうし。そういえば、来月2回結婚式だし。考えなくはないよ、やっぱり。てか、まあしてもいいかな1回くらい。
結婚したいです!!!」
私は私。
独身だってことに別に引け目は感じてない。これは本当。結婚だけが幸せじゃないって分かってる。だけど、友達は着実に次のステージに進んでいって、つい比べてしまうと自分だけ置いていかれている感は否めない。
結婚だけが幸せじゃないと思ってる女性は当然多い。しかし20代半ば以降からの第1次結婚ラッシュに遭遇すると置いていかれたという感情はどうしても抱きがち。そしてご祝儀が彼女たちの家計を圧迫するのもこのころから。
「へえ~意外でした! センパイ、結婚に興味ないのかなって思ってました。じゃあどうして結婚しないんですか?」
さっき開いた心の扉を頑丈に施錠しなおした。二度とこの扉、開くまい。
何回も繰り返しては問い続けている、この心に。
正直、自分のことは特別美人ではないにしても、そんなに悪くはないと思ってる。
性格的にもどちらかというと控え目だし、叔父には小さなころから
いい嫁さんになるといわれ続けた。
(2年前から変な気を遣われて、何も言ってこないのが気に食わないけど)
それに、相手だって別に高望みをしてるワケじゃない。
イケメンには最初から興味ないし、年収だって人並みでいいし、身長だって私より1センチでも高ければいい。
フツーでいい。ていうか、フツーがいい。フツーがいちばん。
多くの女性たちがいう“フツー”は中の上くらい。もしくはそれ以上。理想が抽象的な分、無意識のうちに“理想のフツー”のハードルは高くなってしまっている可能性も少なくない。
もはや、婚活市場において“フツー”は最も競争率が高い。
「ん~、どうしてって言われてもなあ。私、そんなに理想高くないから、まあいい出会いがあれば! って思ってるよ」
感情をマナーモードにして答えた。
「そう言ってセンパイ、そのために何か行動してます?
そうなのだ。
引いたとかいいつつ、母の願掛けにけっこう期待してたし、この間実家に帰ったときにもらった良縁祈願のお守り、実はちゃっかりキーケースにつけてる。
つい、こんなことを調べてしまうのも、もうやめたい。
思わず黙り込む私を見て、B美はやさしい口調で語りかけてきた。
「ちなみに、結婚したら仕事を続けるかどうかとか考えてますか?」
「仕事ね……。そうだな、まだ決めてないけd……」
「じゃ、じゃあさ、そういうB美ちゃんはどうなの?」
思わず私もムキになって聞き返してしまった。
「私は、出来れば3年以内に結婚したいなと思っています。あと子供も2人欲しいので、そこらへんもライフプラン立てています」
キミも所詮、25歳のキラキラ女子よのぅ。
ていうか、そんなの、私だって思ってたよ。
27歳くらいで結婚して、1人目を30歳までに産んで……って。でもそれは幻想。
仕方ない、私が見せてやるよ、現実というものを!!!!
「3年以内かあ。でも、そんなうまく行くかなあ(笑)?」
「うーん、まあなんとも言えないですけど、3年っていうのは実現可能な期間かなと思ってます。私、土日とか時間がある平日は婚活パーティー行ってるんですよ。やっぱり、自分から出会いを求めにいかないと。あ、今の婚活パーティーってセンパイが思ってるようなやつじゃないですよ。たこ焼きパーティーとかBBQとかいろんな種類があるんです。サークルみたいな感じで自然と仲良くなれますし。ちなみに合コンで結婚する確率より、婚活パーティーで結婚する確率のほうが高いと肌感で分かってから合コン行ってないです」
最近の婚活パーティーはテーマが多様化していて、料理、寺社めぐり、山登り、ボウリングなど趣味が合う人たちを集め気軽に参加できるものも増えている。合コンでは既婚者や彼女持ちが来てがっかりするケースも多いが、婚活パーティーでは独身証明が必須なところも多く、ヘタな合コンより女性も安心して行けるよう。
「自分では何も行動しないで、いつか素敵な人が現れるのを待つなんて、そんなのおこがましいって思いません? 結婚後だって同じだと思うんですよね。結婚して旦那さんにすべて養ってもらおうなんて思ってたら、相手の年収とか会社の安定性とか、そういう“条件”も必要になってきますよね。確かに経済力もある程度必要だと思いますけど、もし全部相手に頼り切っていたら、万が一、旦那さんが倒れて働けなくなったり、実はとんでもない男で離婚したとき困っちゃいますよ!!」
あれ? なんかB美、私のことすごい考えて話してくれてる?
「でも私、いろいろ計画的に考えてますけど、やっぱり結局は乙女なんで、ちゃんと好きになって結婚します。養ってもらう相手ではなく、支え合える相手と結婚したいんです♡」
今の女子の婚活は現実とロマンスをいいバランスで保てるかが、成功のカギ。婚活をすることにまだまだ抵抗のある女子も多いが、圧倒的に出会い不足は実感している。そこで、現実的、計画的に婚活をはじめる女子も徐々に増加中。
でも誰でもいいわけじゃない。ちゃんと好きになって恋愛して結婚したいのは今も昔も変わらない乙女心。
(いま一瞬、B美のドレス姿がみえたような)
叔父さん、私なんかよりこの子のほうがずっといいお嫁さんになるよ。
4つも年下なのに、なんか尊敬してきた。
「B美ちゃんって、どっかのお金持ちと結婚して仕事辞めるタイプかと思ってたけど、すごく計画的だし、自立した考えだね!」
「フフ……。このご時世、
だから3年以内、10年以内、15年以上先っていうように、ざっくりですけど現実的な計画立ててます、私」
3年以内(28歳まで)に結婚→短期的な目標
10年以内(35歳まで)に出産やマイホーム購入→中期的な目標
15年以上先は子育てや老後の生活→長期的な目標
効率よく貯蓄を考えるなら短期、中期、長期的な目標を立てて『お金の置き所』を考えておくのがベター。実際にアンケートによると、“このまま結婚しないとして不安なこと”では38.5%の女性が「貯蓄」と回答。次いで「健康」33.5%、「年金」27%という結果に。結婚するにせよ、しないにせよ、お金は備えあれば憂いなしで間違いない。
(2016年7月マイナビウーマン調べ│21歳~40歳社会人女性対象│有効回答数200件)
「たとえば結婚資金と老後の生活費って、必要になる時期が絶対的に違うじゃないですか。それなのに、同じように貯めているだけってどう考えても効率悪いんじゃないかなって思うんですよね。結婚もお金も、守りだけじゃだめですよ!
「た、確かに……」
ぼんやり「いつか結婚したい」と夢を見ていて、いつどのタイミングでどんな出費が必要になるのかわからないまま「将来のために!」と思ってなんとなく貯めていたお金。
でも、B美のように具体的に、15年先とか考えたことなかった。
ライフプランから見直していかないとダメかも……。
B美は私の考えを察したのかグイっと熱燗を飲んだあと、こう言った。
このあと私達がカラオケに行ったのは言うまでもない。