今、「ESG投資」と呼ばれる手法に注目が集まっています。ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉で、持続可能な企業成長には、この3つの要素が不可欠であるという考え方です。本連載では、フロッギー読者のみなさんがESG投資に取り組むためのヒントをお伝えします。
1.ESGへの注力は巨大な市場へのアクセスにつながる
「環境や社会に対する取り組みと企業の成長は無関係である」という考えは、すでに過去のものです。今、企業にとってESGへの取り組みは、将来の数千兆円規模の巨大市場の獲得競争と同義である、という見通しが立ちつつあります。
環境(E)や社会課題(S)の課題解決をまとめたものがSDGs(持続可能な目標、Sustainable Development Goals)です。SDGsは17の大きな目標と、それらを達成するための具体的な169のターゲットで構成されています。
そして関連するビジネスの市場規模は、17の目標毎に約70〜800兆円と、多大な成長可能性を秘めているとの試算(※)されています。
企業がESGの取り組みに注力することは、数千兆円規模の巨大市場を舞台に、いち早く成長しようとする姿勢の表れとも言えます。
企業のESG意識や取り組みに注目することで、ビジネスチャンスを捕まえ、銘柄選びに活かしていきましょう。
2.SDGsをヒントに、企業の取り組みを見る
先ほどご紹介したSDGsをヒントにすることで、企業の取り組みが社会課題の解決に貢献しているのかどうか、考えることができます。
そもそもSDGsは、2015年に「誰一人取り残さない」をコンセプトに国連サミットで採択された国際目標です。環境や社会など、世界が抱える課題を17の大目標(ゴール)と169の小目標(ターゲット)で網羅しており、企業の取り組みがどのような社会課題と対応しているのか、考えるヒントになります。
ESG投資に取り組む第一歩でオススメなのが、SDGsの目標の中で自分が関心を寄せている分野の問題解決へ注力する企業を応援するという視点です。SDGsでは17の目標として、貧困の解消・教育の平等・ジェンダー平等や環境保護など幅広い分野に対し、目標が掲げられています。
自分の関心分野がSDGsのどのゴールにあたるのかが分かったら、その次は気になる企業のホームページをチェックします。「サステナビリティ」といった名前がついたページや、統合報告書に目を通してみてください。
その企業の具体的な取り組みや関連するSDGsが紹介されているならば、「その取り組みが自分の課題認識とあっているか」「応援したいと感じる取り組みか」などを基準に、投資判断を行うという方法があります。
3.投資先選びの目線に、ESGの視点を入れてみよう
一口にESG投資といっても、その取り組み方は様々です。
全体として金額が増加しているESG投資ですが、機関投資家によるESG投資においても様々なアプローチが取られていることがうかがえます※。
具体的には、以下のような手法を組み合わせて行われることが一般的です。みなさんの投資スタイルに合わせて、最適な考え方を見つけてみましょう。
①社会課題解決に向けたポジティブな取り組み(フェアトレードや簡易包装など)を行う企業を選ぶ/反対にネガティブな影響が起こり得る事業(兵器製造や森林破壊など)に関連する企業は除外する
SDGsの「つくる責任、使う責任」や「海の豊かさを守ろう」「陸の豊かさを守ろう」といった目標に注目してみましょう。
大手化学メーカーの「 花王 」は、生活者の持続可能なライフスタイルの実現に向けた「Kirei Lifestyle Plan」を掲げ、プラスチック使用量を減らした製品新パッケージによる環境負荷低減等に取り組んでいます。
プラスチックの使用はごみの発生や海への流出を通じて生態系などに悪影響を与えるとされています。花王のこうした取り組みは、プラスチックの削減を通じて海の豊かさ、陸の豊かさを守り、作り手としての責任を果たしていくというSDGsの課題と関連していると言えるでしょう。
②自分の関心が高い社会課題の解決に貢献している企業や分野を選ぶ
これは、自分が大切にしたいテーマを投資判断として設定する手法です。
例えばSDGsの中で「ジェンダー平等を実現しよう」に注目してみましょう。この取り組みは、例えば化粧品メーカーなど、女性が主に利用する製品を作る企業などで、先進的な取り組みがなされる傾向にあります。
「 資生堂 」は、女性の活躍支援策や、同性パートナーを異性の配偶者と同様の処遇とする規則改訂等のLGBT配慮に積極的に取り組んでいます。
そのほか「安全な水とトイレを世界中に」といった目標においては、水資源の重要性が認識されています。特に飲料メーカーにとって、水資源の保全や安定的な確保は死活問題です。サントリーは「水の3R」の推進を掲げ、工場からの排水をできる限り自然に近い状態で自然に還すことを目的として、法律よりも厳しい自主基準値を設定しています。
資生堂やサントリーは経営誌「日経ESG」が実施した「ESGブランド調査2020」において社会の取り組みと環境の取り組みでそれぞれ上位でした(資生堂は社会イメージ2位、サントリーは環境イメージ1位)。今回ご紹介した取り組みも、こうしたイメージ形成の後押しになっているであろうと思われます。
③企業の投資指標とESGの取り組みを組み合わせて選ぶ
①②と異なり、ESGの取り組みのみで判断するのではなく、企業の成長性や収益率といった投資指標と組み合わせる手法です。投資指標が同じ水準の銘柄が2つあった場合に、よりESGに積極的な企業を選ぶという方法です。
株式投資キホンのキ第4回「銘柄ってどうやって選ぶの?」を読む
ご紹介した3つの手法に共通するのは、企業のESG意識や取り組みを見極め、成長が期待できる企業に投資をするということです。
さらにESG投資は、通常の投資同様リターンを追求すると同時に、社会課題解決に取り組む企業を応援する方法のひとつでもあります。
例えばコーヒーを飲みたいときにフェアトレード豆を使用しているカフェを利用する、旅行に行ったらフードロス対策が徹底されたホテルに宿泊するなど、個人でできる社会貢献のひとつにESG投資があります。
今回はESG投資とは何かをサントリー、資生堂、花王を例にお話しました。第2回は、ESGに注力する企業のパフォーマンスやESGと企業財務に関するデータから、ESG投資がいかに可能性を秘めた投資手法であるかをソニー、富士通を取り上げてご紹介します。第3回ではレノバ、トヨタ、小野薬品工業を取り上げます。