為替とは? 円高・円安ってどういうこと?

不透明な時代を生き抜く「資産づくりの選択肢」/ MonJa編集部日興フロッギー編集部Junichi Kato

わかっているようで、実はよくわかっていない「為替(かわせ)」の仕組み。円高・円安とは何か、為替レートとは何か……。投資信託などを使って資産形成をする際には、ぜひとも押さえておきたい知識です。

「円高還元セール」のカラクリ

経済ニュースに限らず、いろいろなところで耳にする「円高」「円安」という言葉。あまりにもよく聞く言葉なので、ついつい理解しているつもりになりがちですが、「ところで、円高って何だっけ?」と急に聞かれたら、きちんと答えられますか?

ひと昔前に、スーパーマーケットなどで「円高還元セール」が盛んだった時期がありました。なぜ「円高」になると「還元」されて、買い物をしたお客さんが得をするのでしょうか? ややこしく見える円高・円安の仕組みを、スーパーでのお買い物を例に、わかりやすく説明します。

ある日スーパーマーケットへ行くと、以前1000円で売られていた米国産のサーロインステーキ肉が、円高還元セールで15%オフの850円になっていました。なぜ、スーパーはお肉を安く売ることができるのでしょうか?

米国産の牛肉を日本のスーパーで売るためには、アメリカでお肉を仕入れる必要があります。当然、支払いは日本円ではなく米ドルです。したがって、仕入れ担当者は日本円を米ドルに交換する必要があります。

このときに円と米ドルを交換する取引のことを「外国為替取引」、あるいは単に「為替取引」といいます。そして、円と米ドルの交換比率を「為替レート」と呼びます。

たとえば、米国産牛肉を仕入れるために100万円用意したとします。為替レートが1ドル=125円であれば、100万円は8000ドルと交換できます。1ドル=100円なら、100万円は1万ドルになり、125円のときより2000ドル多くなります。

1枚10ドルのステーキを買う場合、円高の方がより多くのお肉を買えます。

同じ800枚分のステーキを比較した時、円高のおかげで、2割も安く仕入れることができます。したがって、値下げしてもスーパーは利益を確保できます。お客さんにとっては安く買える方がうれしいので、スーパーはお客さんを呼び込むためにセールを開催します。これが円高還元セールの仕組みです。

為替は私たちの生活と切っても切れない関係

私たちの身の回りにあるものは、多くが外国から輸入した材料で作られています。普段食べているパンも、原材料の小麦の約9割は輸入に頼っています。機械の部品で使われる金属やプラスチックも、その材料となる鉱石や石油は日本ではほとんど生産できません。そもそも、日本の発電所で使われている天然ガスや石炭も、その大半が海外からの輸入です。

たとえアメリカやカナダなどの国内で小麦の値段が変わらない場合でも、為替が円安になると、日本人にとっては小麦が値上がりすることになります。このため円安になると、パンは値上がりしやすい状況になります。逆に、円高ならば小麦が安く買えるようになるため、パンの値段も下がりやすくなります。

このように為替は、私たちの生活とは切っても切れない関係にあるのです。

為替(外国為替)とは

そもそも為替という言葉は、「為替手形」と呼ばれる有価証券がその由来です。江戸時代には、商人が現金を直接持ち運ぶリスクを避けるため、現金と引き換えに、両替商で現金と交換できる為替手形を発行してもらう商習慣がありました。

この「現金と有価証券の交換」を外国の通貨で行うことを「外国為替」と呼びます。近年では、「為替」というと多くの場合は「外国為替」のことを指します。

為替レートは、「日本円が欲しい」「米ドルが欲しい」という人がどれだけいるか、経済用語で言うと需要と供給の関係によって、絶えず変動します。「日本円が欲しい」という人が増えれば、日本円の価値が高まって「円高」になります。逆に、「米ドルが欲しい」という人の方が多ければ「ドル高」になります。

円と米ドルの2種類の通貨の間では、円高=ドル安、ドル高=円安という関係が成り立ちます。

円と米ドルの為替レートは2000年以降、図のような変動を示しました。この間、最も円安だったのは2002年で1ドル=135円、逆に最も円高だったのが2011年で、1ドル=75円になりました。円高還元セールが増えたのもこの頃です。この21年間で、米ドルに対する円の価値は最大で約1.8倍も変化したことになります。

よく間違えられるのですが、「1ドル=○円」の○の数字が大きくなるのは「円高」ではありません。円高とは「日本円が欲しい」という人が増えて円の価値が高まることですから、円高になれば、同じ1ドルで手に入れられる円の量は少なくなります。したがって、円高では1ドル=○円の数字は小さくなります。上のグラフでは、下方向が円高で、上方向が円安となります。

円高か円安かで得をしたり損をしたりするのは、普段のお買い物だけではありません。資産形成も同じです。投資信託やETFを通じて米国株に投資するとき、その価格は為替変動の影響を受けます。海外の資産に投資する場合は、為替の影響を考えることが重要となります。

後編では、資産形成と外国為替の関係について詳しく見ていきます。

まとめ
・「円高還元セール」が成り立つ理由は、円高になれば同じ日本円でより多くの外国通貨と交換できて、外国からたくさんモノを買えるようになるから
・日本人は食品や日用品、機械やエネルギーなど、さまざまなものを輸入に頼っている。為替は私たちの生活とは切っても切れない関係にある
・為替(外国為替)とは、日本の通貨と外国の通貨を交換すること。その交換比率である為替レートは、それぞれの通貨の需要と供給の関係で変化する。2000年以降、日本円と米ドルのレートは1ドル=75円~135円の間で推移した