テレビや新聞で取り上げられたニュースの裏側を解説する本連載「ニュースの裏事情」。今回は、テレワークで拡大するセキュリティ対策に関するニュースについてご紹介します。
デジタル化でリスクは倍増、重要性高まる
2020年はコロナ禍で多くの企業活動が制限された一方、デジタル化やテレワークが一気に広がった1年でした。しかし、中には半ば急ごしらえ的に対応したために、セキュリティ対策が不十分な企業も少なくありません。
「 野村総合研究所 」傘下の情報セキュリティ専門会社が実施した「企業における情報セキュリティ実態調査2020」では、テレワーク実施企業の約4割でセキュリティ対策が追い付いていないことが明らかになりました。
また、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進にあたり「自社のセキュリティ戦略やルール、プロセスを見直しているか」という質問に対しては、「検討中」の回答が59%と最も多く、実際にセキュリティ対策の見直しを実施している企業は2割程度にとどまりました。
経済産業省によれば、昨年3月以降はインシデントの相談件数が増加しているほか、メールを起点に感染を広げるマルウェア「EMOTET(エモテット)」によるサイバー攻撃被害の相談が急増。
セキュリティ対策が不十分な中小企業が攻撃の足掛かりとなり、取引先への攻撃に利用され感染を広げるといったケースが多く発生しているとのこと。さらに、VPN(バーチャル プライベート ネットワーク)の脆弱(ぜいじゃく)性を突いた攻撃、コロナ禍に便乗した攻撃も多発しています。
1事故あたりの漏えい件数はケタ違い
サイバー攻撃の被害で代表的なのが「情報の漏えい」。特に上場企業にとっては死活問題となります。東京商工リサーチの「上場企業の個人情報漏えい・紛失事故」の調査結果によると、20年に上場企業とその子会社で個人情報の漏えい・紛失事故を公表したのは88社、事故件数は103件、漏えいした個人情報は約2515万人分に達しました。
事故件数のうち、理由として最も多かったのは「ウイルス感染・不正アクセス」で、約5割を占めます。社数、事故件数ともに2年連続で増加して最多となりました。機械的に膨大な情報を抜き取るサイバー犯罪は、1事故あたりの情報漏えい・紛失件数の平均が約57万件と突出しています。
上場市場別で最多は「東証1部」で、76社と8割を超えました。大手企業が中心で、保有する個人情報が膨大なため、規模や知名度からサイバー犯罪のターゲットとされやすいようです。
ちなみに、調査を開始した12年から20年までに漏えい・紛失した可能性のある個人情報は累計1億1404万人分に達しています。ほぼ日本の人口に匹敵する件数が漏えい・紛失したことになります。
セグエG、サイバーセキュリティなど注目
こうした中で、政府が定めた「サイバーセキュリティ月間」(2月1日~3月18日)を迎えています。期間中は政府機関や各種啓発主体が普及啓発活動を集中的に実施。サイバーセキュリティを巡る情報量が増え、関連株に関心が向きやすい環境が想定されます。
コロナ禍の影響から取引先案件の中止・延期が発生するなど決して良好とは言えない事業環境で、堅調な業績推移が確認された銘柄には安心感があります。
そんな中、セキュリティ製品の輸入販売とソリューション関連を展開する「 セグエグループ 」の2020年12月期第3四半期(20年1~9月)営業利益は微増益にとどまりました。もともと収益が第1四半期と第4四半期に偏重する傾向があるため、現在の進捗状況からすれば通期予想(前期比6%増の5億8100万円)の上ブレが期待できます。
仮想デスクトップ関連製品やテレワーク向けインフラ構築を手掛ける「 アセンテック 」、Webセキュリティの「 サイバーセキュリティクラウド 」も通期の業績上ブレが有力視されています。
アセンテックは高採算の自社製品や継続収入ビジネスへのシフトが順調なほか、サイバーセキュリティクラウドは主力の「攻撃遮断くん」に次ぐ第2の柱「WafCharm(ワフチャーム)」が大きく成長しています。
これからも企業や個人の情報を守る、セキュリティ関連企業には注目が集まりそうです。
(出典:日本証券新聞)