マーケットの「温度感」がわかる連載「カエル先生のマーケットハイライト」。今回は売上が好調なはずの自動車メーカーの株価が年初から下がっている理由について解説します。その裏には、ある部品の「供給問題」がありました。
米国の追加経済対策への期待などから、上昇トレンドが続いている日経平均株価。しかし、自動車業界は足元で急速に販売が回復したことなどから、半導体の供給が追い付かず、自動車生産の停滞を余儀なくされています。いつこの問題が解消されるかに、マーケットの注目は集まっているようです。
1月は米追加経済政策期待で、株価上昇続く
1月29日の日経平均株価は2万7663円となり、前月末比219円高でした。
東京都で2020年12月31日に発表された新規感染者数が1000人を超えたほか、全国でも感染者が急増したことなどを受けて、政府は2021年1月7日に緊急事態宣言の再発令を行いました。この報道を受けて、一時は株価が弱含む場面も見られました。しかし、米国のバイデン新大統領による追加経済対策などへの期待が追い風となり、米国の主要株価指数が軒並み最高値を更新。その流れを受けて、日本株も上昇基調が続きました。
半導体は需給がひっ迫
1月に株式市場で話題となったのが、半導体市場の需給ひっ迫です。
半導体はあらゆる電子機器に組み込まれており、最近ではテレワークの需要増加などからデータセンターなどでのニーズが高まっています。また、自動車販売がコロナ禍でも回復してきたことも需要の増加につながりました。半導体製造装置などを手掛ける企業では、相次いで設備投資を行うなど対応を急いでいますが、供給が追い付いていない状況が続いています。
「テレワーク増で需要が高まる半導体に注目」を読む
このことが今回、自動車産業に大きな影響を及ぼしました。自動車はここ数年、自動運転技術の発達などが追い風となり、これまでよりも多くの半導体が使われるようになりました。そのため、半導体の不足により、完成車メーカーでの組み立てが滞る事態に陥っています。
自動車メーカーの株価は頭打ちに
株価を見ると、半導体シリコンウエハを手掛ける「 SUMCO 」や「 信越化学工業 」などは株価が大きく上昇しました。また、半導体試験装置の国内最大手メーカーである「 アドバンテスト 」や、半導体製造装置を手掛ける「 東京エレクトロン 」なども株価は好調でした。
一方で、完成車メーカーである「 トヨタ自動車 」「 本田技研工業 」「 日産自動車 」などは株価の上値が重い状況が続いています。しばらくは半導体の供給が追い付かないものと見られており、来期にかけて厳しい事業環境が続きそうです。
2月は「失望売り」に注意!?
国内では、緊急事態宣言の解除時期に注目が集まります。感染拡大がピークアウトし、少しでも営業時間短縮要請の緩和につながれば、小売店などに対する業績不透明感の払しょくにつながるかもしれません。
海外では、引き続きバイデン米大統領の経済政策に注目が集まります。2月中にも追加の経済対策を議会で議論する見込みとなっています。ただ、ここまで政策期待から株価が大きく上昇しているだけに、ちょっとした失望感でも、株価がいったん調整する可能性はあります。少し海外のマーケットにも注意をしたい時期と言えそうです。