「投資の神様」として名高いウォーレン・バフェット率いる持株会社バークシャー・ハサウェイ。時価総額60兆円のビジネスモデルを徹底的に分析した1冊です。バフェット本人が株主に薦めたことでも話題に!
時価総額60兆円! 負け知らずのバフェット式経営は信頼から
最初にお断りしておきますと、本書は投資についての本ではありません。バフェットがCEOを務めるバークシャー・ハサウェイを「どのように経営してきたか?」に焦点をあてた本となります。
内容としては、株主の構成や取締役会の実情であったり、幹部や買収した会社などの実名が次々出てくることもあって、ある程度のバフェット通やアメリカのビジネスに詳しい人向きではあります。
もともとバフェットは26歳で起業家となり、その10年ほど後の1965年に繊維会社だったバークシャー・ハサウェイの支配権を獲得。紆余曲折を経て、保険や金融、新聞社などの株式を取得し、現在のような80もの事業を抱えるコングロマリットへと成長させました。コロナ禍にあった20年第1四半期の営業利益も前年比プラスと健闘しています。
投資した株を半永久的に持つことで知られるバフェットですが、同社におけるM&Aでもその点は同じ(編集部註:2020年に、保有する株式を一部売却していたことが報じられました)。いったんパートナーシップを結んだのなら業績が悪くても簡単に切り捨てることはしません。バークシャーの経営原則を一言でいうなら「信頼」でしょうか。
買収した企業の方針にも介入せず、子会社の報酬システムや評価基準もそれぞれ違います。現場を把握している人間が経営方針を決めることが当然だよね、という判断です。
その方針ゆえ、子会社の間違った判断を見逃すこともゼロではありません。けれど、バフェットは「(息が詰まるような徹底管理により)経営者の判断が遅れるならば、間違った意思決定をして目に見えるコストが生じた方がマシ」と語ります。
この辺り、人間性がうかがえますが、バークシャーの株主総会は毎回数万人(!)が訪れる人気ぶり。フェスさながらの総会でバフェットは株主への手紙――ゴーストライターは立てず、エッセイのようだと評判も高い――を披露し、自身によるオススメの本の販売会もあるのだそう。かくいう本書も2020年の株主総会(コロナのためオンライン配信)でバフェットが薦めた本となっています。