間違いなく教科書です。使いながら読んでこそ価値が上がります。個別株の初心者から中級クラスまで「数字に強くなるってこういうこと!」と世界が広がる気分になれる一冊です。株価チャートなどは企業の実例がふんだんに掲載されています。
四季報から成長株を見つける方法
本書がもっとも役に立つのは、株式投資をしてはいるものの、売買基準が「なんとなくよさそう」くらいの感覚な人でしょうか。「会社四季報は字ばっかりで、めくる気が失せる!」「決算書は読んだハナから集中力が飛んでしまう!」というタイプの人が、そうしたデータに親近感を覚えやすい構成になっています。
四季報などの見るべきポイントがよくまとまっているうえ、「そこから何がわかるのか?」という動機づけもしっかり。貸借対照表やキャッシュフロー計算書も「比較することで粉飾決算の兆候が見えてくることもある」と言われれば、がんばってみたくもなるじゃないですか。
「成長株」や「割安株」「復活株」の探し方の章は読んでいてワクワクします。成長株の定義とは「過去3年以上売上や利益が増加していること」「その後の業績予想も増加見込みであること」。見方がわかるとすぐにでも「買い」に走りたくなる自分ですが、著者はリスクや例外を提示して、はやる心に「待った!」をかけてくれます。
たとえば、成長株と見せかけた「なんちゃって成長株」。建設や鉄鋼株など、アベノミクス相場ゆえに自助努力なしで3年以上増収増益になっていた銘柄は「避けた方がよい」と明言します。
また、成長株が出やすい「オーナー企業」や「上場企業の子会社」の銘柄。これらにはTOB(株式公開買付け)による非上場化! という特有のリスクがあるだけに、株価の変動には特に注意を払う必要があるとのこと。
本書は「株は儲かりますよ」「株は怖いですよ」なんてことを声高には語りません。リスクとリターンをロジカルに解説、攻めと守りが絶妙な教科書といった印象。改訂版とあるのは、個別投資家に愛されてきた何よりの証拠でしょうか。2012年に発売したロングセラーをアップデートした本書、ここ数年の注目銘柄も多くその分析も面白いですよ。