今の社会動向や投資環境をもとに旬な銘柄を毎月選定している「日興ストラテジー・セレクション」。1月号の新規採用銘柄は、サランラップでお馴染みの「旭化成」です! 旭化成の投資ポイントをチェックして、これからの銘柄選びの参考にしてはいかがでしょうか。
日用品からリチウムイオン電池まで手がける総合化学メーカー
家庭の台所で見かけるサランラップや耐火性、遮音性に優れた住宅「ヘーベルハウス」。暮らしに関わる製品を手がける「 旭化成 」は、2019年に「リチウムイオン電池(LiB)」の開発でノーベル化学賞を受賞した吉野彰氏が名誉フェローを務める総合化学メーカーです。
使い捨てではなく充電することができるLiBは、エネルギー密度が高く、容易に高電圧を得ることができます。このような特長から、スマートフォンやノートパソコンなどの電源として広く用いられています。吉野氏および同社の開発が、世界のIT社会化に大きな貢献をしたと言えるでしょう。
電動車へのシフトで注目される世界トップクラスの「LiB用セパレータ」
さらに、LiBはハイブリッド車や電気自動車においても重要な存在となっています。
ところで、LiBは電池内で正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで充放電(電池に電気をためる・電気を使う)します。電力密度が高いことから過充電や過放電により発火するおそれがあるため、LiBには正極と負極を絶縁する「LiB用セパレータ」という部材が欠かせません。
実は、同社の「LiB用セパレータ」は安定性が高く高品質であることが認められ、世界トップクラスのシェアを誇っています。長年の事業経験および高い製造ノウハウの賜物でしょう。
なお、経済産業省は2030年代半ばまでに、軽自動車も含めてすべての新車販売を電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)などの「電動車」にする目標を掲げています(東京都は30年までの前倒しを表明)。
米国、中国、欧州各国をはじめ世界中でも電動車へのシフトは急速に進んでおり、同社へのニーズもますます高まることが期待できます。
環境へ配慮した経営も魅力!
菅総理大臣が初の所信表明演説で「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」旨を示したことや、バイデン米次期大統領がパリ協定への復帰を表明したように、環境保護は世界の喫緊の課題です。
企業の経営においても、欧州を中心に「環境への配慮」を取引や出融資の条件にする商慣行が広がっています。さらに、環境負荷の抑制を疎かにする企業は、資産運用会社の投資対象から排除される傾向にあります。
こうした傾向は、重厚長大な石油化学を展開する総合化学メーカーにとって厳しい課題となっています。しかし同社は、競合他社に比べて温室効果ガスの排出量が突出して低い状況にあります。
それは、宮崎県および熊本県に9ヵ所もの水力発電所を所有するなど、数百億円の投資を行って温室効果ガス排出量の一段の低減を図っているためです。こうした環境へ配慮する同社の経営が、株式市場で評価されていく可能性も考えられます。
2022年3月期は3期ぶりの増益へ
新型コロナウイルス感染拡大を背景に、石油化学製品市況の悪化や自動車関連市場、衣料関連市場における需要が落ち込み、2021年7−9月期決算は減収減益となりました。この影響で、2021年3月期営業利益は1443億円(前期比18.6%減)で着地すると市場では予想されています。
一方で、自動車市場等の環境改善により、LiB用セパレータや電子材料製品の販売数量は同社の想定以上に伸びている状況です。経済活動の復調に伴い、2022年3月期は1529億円(6.0%増)と増益が見込まれています。
世界的な脱炭素化への動きは加速しており、同社のLiB用セパレータの需要拡大にも期待できそうです。中長期的な視点で、同社のさらなる成長を見守っていきたいですね。
時代のニーズを捉えて人々の暮らしに貢献
環境保護に貢献しつつ、生活をより快適にするスマートフォンやパソコンの電子部品等々、人々の暮らしのために創造・供給を続ける「旭化成」。
ガソリン車から電動車へのシフトが追い風となり、LiB用セパレータでトップクラスのシェアを誇る同社の高い技術力は、世界中から注目されています。脱炭素社会の実現に向け活躍する同社を応援していきたいですね。